• 1.02 Column


このシリーズではFA市場に出た選手の移籍先として、どの球団が適しているのかを多角的に分析し探っていきたい。


今季、中堅手のレギュラーとして攻守にチームを牽引し、チームを日本一に導いた陽岱鋼。今オフのFA市場でも目玉の一人とされている。日本ハムは残留に熱心ではなく、他球団による争奪戦は必至となる。




レポート



おそらく今オフFAとなる外野手の中で最もポテンシャルの高い選手である。14年にはWAR 6.6を記録し、ヤクルト・山田哲人に次ぐ野手2位の記録を残した。


15年は故障もありやや低迷したものの、かなり高い確率でリーグ平均以上、うまくいけばリーグでもトップクラスの打撃貢献ができる選手といっていいだろう。



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それだけの打力をもちながら守備力も高い。いわゆる5ツールを備えたNPBでも数少ない選手である。



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しかし、大型選手だけに近年は故障に悩まされることも非常に多い。15年は左手骨折、16年は左足首痛、右脇腹痛と続けて苦しんだ。それらの影響からかこの2年はややパフォーマンスを落としている。特に今季は足首を痛めた影響からかUZRも低迷しており、状態にはやや不安が残る。そのあたりをどう判断するかが獲得のポイントとなるだろう。糸井ほどではないにせよ、できればコンディションを管理しながら運用できる球団が望ましい。


年齢もまだ29歳と若く、うまくいけば長い期間チームのコアプレーヤーとなりうる。これからキャリアハイを記録する可能性も十分にありうる。日本国籍ではないが、日本の高校からドラフト指名を受けているため外国人枠にも入らない。今オフのFA市場のまさしく目玉といっていいだろう。





獲得に適した球団は?



陽の適性球団について個別に分析を行う。以前のコラムで各球団の分析を行い、外野手にニーズがあった、ソフトバンク、ロッテ、楽天、オリックス、巨人、阪神、ヤクルト、中日に加え、所属球団である日本ハムについてそれぞれ検討を行う。





ソフトバンクの場合



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チームの需要を多く満たしてくれる。中堅は現在柳田悠岐が務めているが、守備力に不安を抱えており、右翼での経験もあるため、陽が加入となった場合は中堅・陽、右翼・柳田という布陣を組むことになるだろう。


今季ソフトバンクは得点力不足に苦しんだ。特に長打力が不足しており、外野手として非常に優れた陽の打力は理想的といえる。また、チームは指名打者にも弱点を抱えており、ここ数年故障に苦しんでいる陽にとって、守備につくことができない状態でも打撃で貢献を続けられる望ましい環境だ。


ただ、チームは別で指名打者に据える外国人打者の獲得も検討しているはずで、そうなった場合には陽のコンディションを中心に運用するのは難しくなるだろう。


それでも僅差で敗れた日本ハムとの差を逆転させるだけの能力は十分にあり、非常に効果的な補強となる可能性が高い。





ロッテの場合



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角中勝也以外の外野手の成績が安定せず、チームの弱点となっている。右翼は昨季、清田育宏が活躍したものの、中堅の攻撃力不足は長年の悩みだ。得点換算すると今季はリーグ平均に比べ-27.6点。柳田悠岐を擁するソフトバンクとは攻撃力だけで70点近い差がついている。この差をいかに埋めるかは大きな課題だ。


そんなチームにとって陽は中堅の攻撃力を強みに変えてくれる理想的な人材だ。少なくとも平均、うまくいけば平均をはるかに上回る攻撃力をチームに供給できる。


ただ外野手の戦力が不足している現状、休ませながら起用するというのは難しそうだ。コンディションがよければ大きな見返りが期待できるが、悪ければ回復が難しいという状況になるリスクは心得なければならない。


現実的には高額の契約になることが予想され、資金力に乏しいロッテが加わることは難しそうだ。もし大型契約で獲得できたとしても、来季以降のオフはかなり身動きが取りづらい状況となるだろう。ただ今オフのFA市場に出た選手では最も適切な補強となる可能性が高い選手だ。





楽天の場合



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チームが求める選手としてこれ以上なく合致する。


まず楽天は外野手が弱点で、コアプレーヤーとなりうる存在を求めている。


またチームは日本人選手の長打力が不足しており、中堅手として稀有な長打力をもつ陽の加入は効果的といえる。


楽天は現状、優勝を狙うだけの戦力は整っていないが、陽をうまく運用し、機能させることができればAクラスの目は十分に見えてくる。来季すぐチームとして結果が出なくとも、年齢を考えるとしばらく稼働できる可能性が高そうだ。長期的なビジョンにも合致する。


目玉選手だけにかなりの大型契約になりそうだ。獲得となれば2014年並の過去最高レベルのペイロールになることは間違いなさそうだが、球団はそれを許容できるだろうか。





オリックスの場合



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こちらも戦力的には喉から手が出るほど欲しいだろう。


長年期待を受ける駿太を重用するも攻撃面で大きく伸び悩んでいる。中堅の攻撃力はリーグで最も低く、得点換算すると-37.6点。チーム最大の補強ポイントといっていいだろう。


陽を加えることができれば、ロッテと同じく中堅の攻撃力を大きく引き上げることができる。現状からの上積みを考えると補強の効果は最大といっていいだろう。


しかし現状、予算は限られており、糸井嘉男の状況と大きく関係してくるだろう。もし、予算の上積みがあれば糸井残留に加えて陽獲得の可能性も増してくるが、他球団の状況と照らし合わせて考えると可能性は低いように見える。





巨人の場合



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広島との17.5ものゲーム差の最大の要因となったのが外野手の差だ。特に中堅は攻撃力を確保できず、レギュラーを固定できなかった。即効性もあり、長期間活躍できる可能性もある陽は魅力的に映っているだろう。


だが、DH制のないセ・リーグの球団であることから、陽が故障した際、守備につかせずに運用するのは難しい。試合途中でもギャレット、長野より先に陽を外すことは考えづらい。コンディションを見極め、陽の貢献が最大化する、最適な起用ができれば広島との差を詰める大きな力になるはずだ。もし無理に起用して陽の身体に大きな負担をかけてしまうようなら、長期的な貢献をもふいにする可能性もある。


そして、高額になると思われる陽の獲得資金を捻出することができるだろうか。獲得に乗り出すとすれば、現状のペイロールを上回るのは確実だ。





阪神の場合



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市場に出ている選手では糸井の獲得に熱心であるとの報道があるが、よりチームのニーズと合致するのは陽ではないだろうか。現状の阪神の戦力を考えると、首位・広島とのゲーム差24.5をすぐさま埋めるのは現実的ではなく、より長期的に活躍が期待できる選手に資金を割くのが得策であるように思う。


陽はリーグ平均中堅手から-23.1ものマイナスを計上した攻撃力をプラスに転じさせることができる可能性が十分にあり、セ・リーグの中堅手としては丸佳浩に匹敵する影響力を放つことができる選手だ。


不安要素を挙げるとすれば、巨人と同じく、陽のコンディションが十分でない場合、うまく休みをとりながら運用することができるかという点である。金本監督は今季も鳥谷敬の運用に苦心した。主力選手をフル出場させる方針をとるなら、陽を獲得できたとしても価値が半減してしまう恐れがある。





ヤクルトの場合



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FAのターゲットとしては同じ右打ちの外野手である平田良介の獲得を目指していたが、宣言とはならなかった。平田をターゲットとしていたのは、おそらく陽以上に年齢が若く、契約の規模が小さいことが予想されるからであろう。


ただ、すでに雄平がFA権を行使せず残留を決めたことで、最悪の自体は免れた。現在交渉を進めているバレンティンを残留させることができればひとまず外野の穴はなくなることになる。だが、バレンティンの残留交渉とFA交渉は重なっており、バレンティンとの交渉に失敗した場合、外野手の獲得に動くのは難しい。球団がどのように判断するだろうか。


仮にバレンティンが退団となった場合は上田剛史や比屋根渉が中堅で出場することになるだろう。2人とも15年の優勝メンバーではあるが、攻撃力に乏しい。この状態に陽を加えることができれば大きな上積みとなる。バレンティンの残留が決まったうえで陽が加入となっても効果はあるが、相対的に影響は小さく、またチームのペイロールを考えても可能性は限りなく低いだろう。





中日の場合



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チームはすでにFA権を取得していた大島洋平、平田の残留を決め、外野手の危機的状況を免れた。昨季並の戦力は維持できそうだが、依然として左翼はチームの弱点だ。


陽は中堅の選手で大島のポジションと重なるが、外野のいずれのポジションにも必要な資質は備えており、大きな問題にはならないだろう。


仮に陽が左翼で出場した場合、今季リーグ平均に比べ-27.8点を記録した左翼攻撃力は大きく改善されるだろう。チーム最大のウィークポイントがひとつ解消されることとなる。


戦力的には当然大きな上積みになる選手に違いないが、チームは先発投手を欲しており、先発より陽を優先して獲得に向かうという可能性は低いのではないだろうか。





日本ハムの場合



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FA宣言となった選手を引き止めない方針を貫いている。陽に関しても大きなオファーが送られることはなさそうだ。


陽の穴は確かに大きいが、この退団によるダメージ軽減のためチームは準備を進めてきている。今季は岡大海が台頭し、終盤から日本シリーズで中堅を守ることも多かった。退団となってもまったく計算できない選手が出場する事態にはならなそうだ。ただもちろん年間を通しての実績はないため、リスクは存在する。


球団が陽の引き止めに熱心でないのは予算面の問題が大きいと思われ、戦力的にダメージがあるのは間違いない。長期的な視野にたってのやむをえない判断だろう。





最適球団は・・・



戦力的に需要が大きいのはロッテ、楽天、オリックス、阪神、中日、バレンティンが退団となった場合のヤクルト、巨人、ソフトバンクといったところだろうか。ここでは現状の攻撃力のマイナス、また指名打者制が使えることを考えてオリックスを最適球団、次点としては楽天、また優勝奪還へ補強を狙うソフトバンクを挙げたい。オリックスは糸井の残留との兼ね合いがあるため難しいが、獲得となった際は大きな上積みとなるはずだ。


糸井と違い長期的なニーズに応えてくれる存在であることを考えても適する球団は多い。多くの球団が獲得を検討していい存在のはずだ。

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