2020年のドラフト会議でヤクルトからドラフト1位指名を受けた木澤尚文。2月3日のブルペンでは33球を投じ、その投球を青木宣親に絶賛されたことが報道されるなど幸先のいいスタートを切っている。今回はDELTAアナリストの山崎和音氏が木澤について、
20-80スケールでのリポートを作成した。各グレードにどの程度の選手が該当するかは以下の記事を参考にしてほしい。
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選手評価の20-80スケールをNPB選手に当てはめるとどうなるか)
ランナーがいなくてもセットポジションから投球する。セットポジションでは右ひざを軽く曲げ、重心はやや二塁寄りだ。また、ドラフト直前の試合では、ドジャースのダスティン・メイほどではないもののセットポジションに入る際に軽くスクワットのような動きを見せていた。腕の角度は高めのスリークウォーターで、背筋は投球動作を通じて真っ直ぐに伸びている。ただし、打者方向に体重移動する際には少し前傾気味だ。また、少なくとも肉眼で見る限り投球動作の初動(前足を上げることがこれにあたる)で作り出したエネルギーを、腕の振りの速さに効果的に伝えられている。ただ、やや力みがあるようにも見えた。結果として時折バランスを崩し、リリースポイントが乱れる場面も見られる。
2019年春は133-135km/hほどで、打者から見て時計の針の11時から5時方向への変化を見せていた。しかし、2020年秋には138km/h前後でより縦の変化成分が大きくなっていた。球速・変化量ともにかなり変化しているが、本稿ではこれを同一球種として扱う。球質はいずれも一軍平均以上。ただ、登板ごとで制球や変化の幅にかなりばらつきがある。調子のいい日は甘いコースを外しつつ(ただし精密機械と呼べるような制球力ではない)空振りを奪う武器として有効だが、不調の日にはまったく制球できていない場面も見受けられる。
球速は134-140km/hほど。落ち幅は現時点でもすでに一軍平均以上。奥行き(打者が見てどれだけ近くで落ちはじめるか)もあり、特に左打者に対しては有効な武器になりそうだ。プロレベルにおいても十分に決め球として通用するだろう。しかし、フォークもここまで紹介してきた球種と同様に制球や変化の幅は不安定だ。なお、2巡目以降では投球の大半がこのフォークとスライダー/カッターになるイニングもある。
球速は115km/hほどで大きな弧を描く軌道を見せる。見せ球としては有効だが、一軍レベルで決め球として通用するとは考えにくい。もしプロでブルペンに回るなら完全に捨てるべきだし、先発としても1試合で2~3球以下にとどめておくべきだろう。
個々の球種の質はかなり高い。また、左右双方の打者に対して武器となる球種がある点は大きな強みだ。全体的な不安定さ、特に制球力を改善できるかどうかが今後の成長を左右することになるだろう。ただ、現状木澤が一軍平均以上の制球力を身につける可能性はあまり高くないように思われる。もし先発として起用されるとすれば、キャリアを通じて物足りなさを感じさせる投手になるかもしれない。現実的には両リーグトップ20程度のリリーバーに落ち着きそうだ。また、高校時代に重大な肩と肘の故障を経験している点も気がかりだ。