パ・リーグではソフトバンクがゲーム差では楽天を上回るものの、順位は2位という事態が発生。セ・リーグは広島が絶好調。昨季の同試合終了時点と比べても貯金数は7つも上回る独走状態だ。前回は
こちらから。(データはすべて7月2日時点)
セ・パ両リーグの順位おさらい
交流戦明けリーグ公式戦もほぼ順調に消化し、セ・リーグは6球団全てがシーズンの折り返し地点を回りました。広島は期間内で貯金を5つ増やし、いよいよ独走態勢に入ろうかとしています。全てが順調だったわけではありませんが、打線は丸佳浩を中心に大量点を叩き出し、投手陣の負担を軽減。2日の中日戦では、3点ビハインドの展開から磯村嘉孝のプロ初本塁打、鈴木誠也の3ランで逆転勝利しました。リーグ優勝を果たした昨季同試合消化時点と比較して、貯金数は7つも上回っています。
阪神は交流戦終了時点から貯金を4つ減らし失速。つまずきの原因はなんといっても打線の不振で、期間中の1試合平均得点は1.88と少なく、チーム打率も.212と低迷。27日からの中日戦では3試合を通じて1点しか奪うことが出来ませんでした。そのため、球団は新外国人獲得を急ぎ、2日にジェイソン・ロジャースとの契約を発表。今後巻き返しができるかを左右する戦力となりそうです。
順位は変わらずも躍進中のDeNAは、1日の巨人戦に6-4で勝ち、今季初の貯金を記録。この試合は、8回に3点を失い逆転されたものの、9回2死からチャンスを広げ桑原将志の満塁本塁打で再逆転に成功するなど、打線が活発になってきました。期間中の本塁打は両リーグを通じて最多の17本。中でも主砲・筒香嘉智が5本塁打で完全に復活。アレックス・ラミレス監督の決断により、打順が3番に変更されたあとも好調を維持しています。
23日に4位へと浮上した中日は、ホームの阪神戦では3連勝したものの、ビジターの広島戦では3連敗となりました。投手陣では、交流戦明けから又吉克樹がブルペンに再転向。6月14試合で防御率0.00と復活を遂げた岩瀬仁紀とともに、終盤の守りの大きな戦力となっています。一方では、開幕から4番を務めてきたダヤン・ビシエドが、米国から戻って来られないまま現在に至り、長打力はアレックス・ゲレーロ1人に頼り切った状態。5割復帰には一刻も早い主砲の復帰が必要です。
読売は30日からのDeNA3連戦でスイープされ、現在は今季ワーストタイの借金11を抱えています。6月に入り陽岱鋼、山口俊とFA獲得組が一軍に合流し、巻き返しに出ようとしましたが、菅野智之とマイルズ・マイコラスが先発した試合で1勝も挙げられなかったのは大きな誤算。今週からの9連戦では、その菅野とマイコラスを中4日で起用するプランもあるようですが、オールスター以降のことも考えると起用が裏目に出る恐れもあるでしょう。これ以上借金を抱えられない焦りも感じられます。
故障者に悩まされ続けているヤクルトは、カード全敗は何とか免れたものの期間中は3勝5敗という結果に終わりました。また、30日の阪神戦で9回から登板した秋吉亮が右肩痛を訴え、そのまま一軍登録を抹消。代役として、30日に一軍復帰した小川泰弘を抑えに回す予定ですが、先発陣のコマ不足は依然として深刻です。交流戦明け8試合では、7イニング以上を投げ切った先発はおらず、ブルペン陣へのしわ寄せが大きなダメージになっていくことも心配されます。
パ・リーグは今回も順位変動は起きませんでしたが、ソフトバンクが2日の楽天戦で5-4と勝ち、貯金数では楽天を上回りました。楽天の「マイナス0.5差での首位」は、昨季もソフトバンクと日本ハムの間で起きた現象。消化試合数の少ない楽天が勝率では上に立っていますが、実質的には2球団がほぼ並んだといって良い状態です。両チームともに、オールスターまでに予定されているのは7試合。後半戦は互いに6連戦の日程が続くため、楽天の消化試合数がソフトバンクに追いつくのは9月以降になる見込みです(9月以降の予定試合数は楽天28、ソフトバンク21)。そのため、こうした現象はシーズン終盤まで続く可能性もあるでしょう。
その2チームを追いかけていた西武は、交流戦明け7試合で1勝6敗と足踏みし、首位とは8.5ゲーム差をつけられています。28日に森慎二投手コーチが急逝し、チームとファンは深い悲しみに包まれました。巻き返しを図るには、主砲・中村剛也の復調が不可欠。7月3日の日本ハム戦は、中村の2本塁打もあり11-4で大勝し、再スタートに弾みをつけました。
福良淳一監督が「オールスターまでに勝率5割復帰」の目標を掲げたオリックスは、期間中5勝2敗1分で借金を4つ減らし、3位西武とのゲーム差も3.5差にまで縮めています。30日の西武戦では、プロ1年目の山岡泰輔が自己最多タイの8イニングを投げ無失点の好投。勝ち星には恵まれないものの、粘投が評価され監督推薦でのオールスター出場も決まりました。打線では、ステフェン・ロメロが相変わらず好調。6月は打率.372、8本塁打19打点で月間MVPの有力候補にも上っています。
日本ハムは、交流戦明け23日に大谷翔平が約2ヶ月半ぶりに一軍復帰。これが反撃ののろしになるかと思われましたが、故障した箇所は完全に治っておらず、2日まで代打2試合での出場のみに留まっています。その代わり、投手としての調整は着実に進み、大谷は1日に行われたファーム公式戦に先発。1イニングを投げ1失点という結果に終わりましたが、オールスター明けにも投手としての復帰見込みが立ちそうです。また、球団は新外国人選手としてヤディエル・ドレイクを獲得。右翼手、または指名打者としての活躍が期待されます。
一・二軍デプスチャート(7月3日時点)
画像にマウスをのせる(スマートフォンの場合タップする)と一・二軍が切り替わります。
日本ハムは、28日に近藤健介が椎間板ヘルニアの手術を受け、今季中の復帰が厳しいものになってきました。先日獲得したドレイクはその穴埋めとしての起用のほか、左ハムストリングスの故障から復帰した大谷翔平に代わって指名打者としての起用も想定されています。後半戦に向けて補強したいのは先発陣で、現在投手として調整中の大谷がローテーションに復帰することが理想。ファームでは、新人の高良一輝が29日のイースタンDeNA戦で初先発するなど先発が薄い状態。デプスの再構築がチームとしての重要課題です。ソフトバンクは、武田翔太と千賀滉大が一軍に復帰。どちらも完全復調とは言い難い投球内容でしたが、実績のある投手だけに試合を重ねて調子を上げる方法がベストでしょう。ファームでは、先週から九鬼隆平、三森大貴、茶谷健太、川瀬晃、黒瀬健太といった高卒1、2年目の若手たちが続々と二軍に昇格。30日から始まった三軍の韓国遠征には参加せず、1つ上のステージで彼らの実力が試され始めました。球団は大きな判断を下したように思います。
ロッテは外国人野手3人が機能し始め、遊撃には4年目の三木亮が定着。開幕時点と比較して、野手オーダーが大きく変化しています。また、20日はベテランの井口資仁が今季限りでの引退を表明。2009年の移籍以来、チームを支えてきた功労者がユニフォームを脱ぐことで、来季以降の編成に大きな変化をもたらすでしょう。西武は、上位2球団を追いかけるためには戦力補充が必須ですが、新外国人のスティーブン・ファイフがファーム2試合で防御率2.45、30日のイースタン日本ハム戦では6イニング1失点と好投。今週中の一軍昇格が期待できそうです。また、今季1度も一軍昇格のない坂田遼、大崎雄太朗、鬼崎裕司らの存在もポイントの1つ。これまでは若手の躍進が目立ちましたが、シーズンを通じてプレーした経験のない選手がチームを引っぱっている状況もあり、ベテランの力を頼りにする時期は必ずやってきます。
楽天は、デプスの面から見れば苦しい立場に立たされています。攻守でチームを引っぱってきた茂木栄五郎が、右肘痛により現在も登録抹消中。1番には島内宏明が入り、遊撃の穴は三好匠が埋めています。現時点でもWAR(weighted Runs Above Average)3.1とチームの野手で最高の貢献を示していた茂木はチームにとって非常に大きな存在。1日も早い復帰が望まれます。ファームでは、17日から戦列に復帰していたオコエ瑠偉が打率.368と好調。ブランク期間が良い発奮材料となっているのかもしれません。オリックスは、15日から一軍復帰していた小島脩平がカンフル剤となり、チームに競争を生んでいます。また、腰痛のため離脱していた吉田正尚が27日から実戦に復帰。ファームの試合では、豪快なフルスイングも披露しているようですが、故障の再発だけは避けたいところ。一軍復帰には慎重な判断が求められます。
広島は、交流戦から先発に転向した薮田和樹が1日の中日戦で今季7勝目(1敗)を挙げ、中継ぎでの勝ち星も合わせリーグ最多勝争いのトップに並びました。一方では、新人の加藤拓也をブルペンの一角として昇格させたものの、制球難により再びファーム降格。チーム唯一といっても良い課題の克服には至っていません。読売は、今週から予定される9連戦で先発の谷間が2試合訪れる見込みで、そこに入り込む候補は宮國椋丞、内海哲也、今村信貴に新人の畠世周。これに現在登録抹消中の大竹寛を含めた5人が、後半戦のローテーション候補にもなります。野手では、長野久義に復調の兆しが見え始めているものの、ケーシー・マギーと坂本勇人にやや疲れが見え始め、役者の揃い踏みがなかなか果たせません。控え野手も含めたチーム全体の底上げが明確な課題として見えてきました。
DeNAは完全復調した筒香嘉智に加え、桑原将志、ホセ・ロペスも好調。打撃不振に悩んでいた倉本寿彦も、交流戦明けは打率.464と一気に調子を上げて来ました。投手陣も、石田健大が2試合続けて好投と明るい材料が出始め、スペンサー・パットン不在のブルペンを少しでも助けたいところでしょう。ファームでは、新人の細川成也がプロの水に慣れ始め、佐野恵太もクリーンアップに定着。両選手とも、13日に予定されているフレッシュ・オールスターへの参加が決まっています。阪神は、ファームで調整中の藤浪晋太郎が2日のウエスタン中日戦で危険球退場処分に。制球難に対する悩みは深刻なものと見られ、ひょっとすると今季中の一軍復帰は見込めなくなるかもしれません。
ヤクルトは24日にブルペン捕手の新田玄気と育成契約を交わし、故障者の穴埋めとして対策を立てました。そうした中でも、2年目の山﨑晃太朗が6月ファーム月間打率.325を記録。同じく2年目の廣岡大志、4年目の奥村展征も月間打率は3割を超え、一軍昇格のチャンスを伺っています。また、故障で戦列を離れていた中村悠平が1日から実戦に復帰。今週初めにも一軍合流の見込みです。中日は、ようやく先発陣の頭数が揃い、ブルペンとのバランスが良くなってきました。ただ、米国帰国中のダヤン・ビシエドの代役として起用されていた森野将彦も右ハムストリングス肉離れにより一軍登録を抹消。一塁不在の穴埋めが誰になるかは不明ですが、ファームで打撃好調の遠藤一星、長打力のある高橋周平らを急造コンバートさせるアイデアがあっても良いのではないかという気もします。その辺りは、一軍と二軍の首脳陣が密にコミュニケーションを取っているかどうかにも懸かってくるでしょう。
2週間の個人成績ランキング
OffenceはwRAA(weighted Runs Above Average)+走塁評価、DefenseはUZR(Ultimate Zone Rating)+守備位置補正
セ・リーグの出塁率トップは、期間中高打率を残した倉本(DeNA)。長打率と本塁打は1日の中日戦で1試合3発を記録したブラッド・エルドレッド(広島)がトップに立ちましたが、OffenceとWARでは筒香(DeNA)がトップ。シーズンでの本塁打数は11本と出遅れた筒香ですが、昨季は7月に16本塁打を放ち一気にタイトル獲得へと突っ走りました。今季もそれを再現するようであれば、2年連続のタイトルも決して夢ではありません。Defenseでは山本泰寛(読売)が健闘。二塁手としての守備イニングはリーグ9番目ですが、守備範囲を示すRngR(Range Run)はリーグ4位の+2.4、失策によるマイナスも少ないため、今のところは安定した守備を見せているといって良いでしょう。
パ・リーグの打撃部門は、6月の月間MVP候補にも上っている柳田悠岐(ソフトバンク)が独占。交流戦でもMVPを獲得したあとも、23日の西武戦で3打席連続本塁打も記録するなど、まさに手がつけられない状態です。成績上位には入っていませんが、大田泰示(日本ハム)は2日のロッテ戦で今季10号をマーク。これで、読売時代の通算9本塁打を超え、今季このままフル出場を続ければ自身初の規定打席到達も見えて来ます。オリックスのロメロは打撃、小島は守備で大きく貢献。西川遥輝(日本ハム)は、シーズン通算WARも急上昇し、現在はリーグ野手5位の位置にまでつけています。
交流戦明け数日間のブランクがあり、その間にローテーションがリセット。登板機会の多かった各球団のエース級が軒並みランクイン。小笠原慎之介(中日)は、24日の読売戦で8回まで無失点の好投。プロ初完封を目指し9回もマウンドに上りましたが、2点を失い降板。続く1日の広島戦では、前回134球を投げた影響か6回8失点で敗戦投手に。チームの柱として成長するには、調子が悪くてもゲームを作れる粘り強さが必要です。近藤一樹(ヤクルト)は、30日の阪神戦で右肩を痛めた秋吉亮に代わって登板。わずか1球でセーブを挙げましたが、このときブルペンでは全く準備していなかったそうです。急遽立ったマウンド、立派に仕事を務め上げました。
東浜巨(ソフトバンク)は、交流戦明けの西武戦で今季初完封勝利をマーク。故障者が続出するチーム状況の中で、後半戦もエースの働きが期待されそうです。嘉弥真新也(ソフトバンク)は、28日と29日の日本ハム戦で、2試合続けて満塁のピンチにマウンドへと登り、貴重なホールドを記録しました。失点率トップの有原航平(日本ハム)は、期間中2試合で1勝、いずれも7イニング以上を投げ1失点以下と完全復調したようにも見えますが、3試合を通じての奪三振率は3.09と不安な面も覗かせています。一方で、ゴロ率は58%と高く、外野フライ打球も87%の確率でアウトに仕留めています。登板したのは本塁打の出難い札幌ドーム、ZOZOマリンと、球場との相性も考えられる中、今後も同じような結果が残るかどうかはもう少し様子を見る必要がありそうです。
高多 薪吾 @hausmlb
個人サイトにて独自で考案したスタッツなどを紹介するほか、DELTAが配信するメールマガジンで記事を執筆。
投手の運用に関する考察を積極的に行っている。ファンタジーベースボールフリーク。