• 1.02 Column


球審の判定がボールカウントにより影響を受けることは先行研究からも明らかである。しかし球審はそれ以外の要素にも影響を受けているではないだろうか。このシリーズでは何が球審に影響を与えるのかについて検証を行っている。Part3にあたる今回は打順が球審の判定にどのような影響を与えるかを検証する。

Part1 カウントと内外角の広さの関係編
Part2 得点差・イニング編

打者の打順に判定は影響されるか


今回は打順の影響について見ていく。検証にはPart2と同じように、投球をストライクゾーンの中心からどれだけ離れていたかで分類した図1を使用する。


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この色分けごとのストライク判定率は表1のようになっている。これを打順ごとに見ていくことで、打順がストライク判定率にどのような影響を与えているかを確かめようというわけだ。


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実際に打順ごとに見たストライク判定率が表2である。


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おおむねどの打順でも傾向は変わらないが、ストライクを取られやすい打順とそうでない打順があるようにも見える。この表ではわかりづらいので、全体(表1)との差を表3にまとめた。


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赤くなっているのが平均よりストライクが取られやすかったもの、青が平均より取られにくかったものを示している。これを見ると、3番や4番は他の打順と比べてどの投球ゾーンにおいてもストライクを取られにくいことがわかる。1番はすべてのゾーンでストライク判定率が高いが、その差は小さくほとんど平均と変わらない。これに対して、2番や9番は比較的差が大きくなっており、他の打順よりもストライクを取られやすいようだ。また、大きく外れたボールやど真ん中のストライクに比べ、境界付近のストライク・ボールでより差がつきやすい傾向が表れている。

Part2で検証した点差やイニングによる条件と比べると、打順による変化のほうが生まれる差が大きいという結果だ。

このような打順ごとの違いが生まれた理由は、まだ明らかではないものの、打順ごとの打撃力の違いが影響している可能性がある。優秀な打者が打席に立つことが多い打順ほどストライクを取られにくいとすれば、このような現象を説明できるが、この点は追加で検証が必要であろう。球審は優秀な打者の場合に、ストライク判定率が下がる傾向があるのかもしれない。


球審の判定を左右させる心理は何か


以上の結果をまとめると次のようになる。


  • 3番打者や4番打者はストライクを取られづらく、2番打者や9番打者はストライクを取られやすい
  • 球審は優秀な打者に対してストライク判定率を下げている可能性がある

  • これまでPart1からPart3まで検証してきた要素について、ボールカウントによる変化と比べれば小さいながらも球審の判定に影響を与えていることが確認できた。

    ボールカウントによる球審の判定の変化を見ると、球審はその時点で劣位に立っている側に肩入れした判定をする傾向があるようにも思えた。しかし、今回の検証ではこれとは正反対に、その時点で優位あるいは優秀な側に肩入れした判定をする傾向も見られた。球審は単純に判官贔屓をしているのではないようだ。

    判官贔屓でないとすれば、何を根拠にこうした傾向が表れるのだろうか。あくまで推測に過ぎないが、球審は自身の判定により試合が動く(見逃し三振や四球を宣告する)ことを避けているのではないだろうか。この心理に基づくと考えれば、説明がつくように思う。投手有利なカウントではストライクゾーンを狭め、打者有利なカウントではストライクゾーンを広げれば、見逃し三振や四球を宣告することは減る。球審は自身の判定が試合を動かすことを無意識に避けているのかもしれない。

    また、今回の検証で明らかとなった優位な側に肩入れする傾向は、球審の先入観が影響しているのかもしれない。優秀な打者が見逃したのだからボールに違いない、優秀な投手が投げたのだからストライクに違いないといった、先入観が判定に影響しているとすれば、今回の検証結果と整合する(もっとも、この違いはたかだか1%かそこらの差なので、NPBの球審は公認野球規則に忠実ではないかもしれないが、かなり平等な判定をしているように思う)。このような先入観の存在は0ボール2ストライクのカウントでは、それまでアウトコースに広かったストライクゾーンがインコースと同程度かそれ以上に狭くなる現象からも示唆される。

    いずれにせよ、球審も人間である以上、判定が外部の要素により左右されることは避けられない。ただ球審自身がそのようなバイアスに自覚的になれば、この影響を抑えることは可能になるかもしれない。今回一旦Part1からPart3までの結果についてまとめたが、シリーズはまだ続く。Part4は試合の重要度の高い局面においてホーム・ビジターでストライク判定率の差が生まれるのかを検証する。


    Part1 カウントと内外角の広さの関係編
    Part2 得点差・イニング編

    市川 博久(いちかわ・ひろひさ)/弁護士 @89yodan
    学生時代、知人が書いていた野球の戦術に関する学術論文を読み、分析に興味を持つ。 その後『マネー・ボール』やDELTAアナリストらが執筆したリポートを参考に自らも様々な考察を開始。『デルタ・ベースボール・リポート2』にも寄稿。

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