• 1.02 Column


今年度も1.02では野手の守備における貢献をポジション別に評価し表彰する“1.02 FIELDING AWARDS 2017”の発表を行っていきます。

このアワードは、米国の分析会社であるBaseball Info Solutions(BIS)社が実施している“THE FIELDING BIBLE AWARDS”に倣った表彰です。昨シーズンNPBの各ポジションで500イニング以上を守った選手を対象に、1.02を運営する株式会社DELTAで活動する8人のアナリストが、それぞれの分析手法に基づいて守備での貢献を評価し、順位をつけ、良い順位を最も多く獲得した選手を最優秀守備者として選出するものです。賞についての詳細は、イントロダクションとしてこちらにまとめていますので御覧ください。

なお、昨年度は評価を行った捕手ですが、米国にて評価手法が多様化し流動的になっている現状を鑑み、今年度は一旦評価を取りやめています。ただ、DELTAでは取得できるデータから実施可能かつ有効な評価手法を検討しておりますので、来オフ以降の評価の再開をお待ち下さい。

第1回となる今回は、右翼手の評価を行っていきます。参考分析は岡田友輔が担当しました。


守備の評価にあたって


今回の守備評価は、「失点を抑止すること」を守備の最大の目的と定義し、技術的な巧拙について論じたものではないことを事前に述べておく。分析にあたっては、インプレーをどれだけアウトにしたかについて、各ポジションがどれだけ貢献したのかを評価の最大とした。右翼手の評価に関しては守備範囲、進塁抑止および補殺能力について失点抑止への影響をまとめた。


右翼手の守備範囲評価


守備範囲の評価はゾーンデータを使用したが、DELTAで使用しているUZR(Ultimate Zone Rating)とは異なる評価方法を用いている。また、ライトの評価ではゴロを除くエアボールを対象とした。UZRの算出では打球の難度を打球の種類と滞空時間からA~Cの三段階に分類して評価しているが、今回は滞空時間とライトの定位置からどれだけ距離が離れていたかをそれぞれ算出し、そのアウト割合で守備範囲を評価している。打球が飛ぶ前の守備位置をデータとして取れるのが理想だが、現状では難しいためこのような形としている。

ただ、定位置からの距離という一定の基準を設け評価することで、総合的なゾーンカバー能力(打球判断、走力、捕球技術、ポジショニング)の評価につながると考えている。




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図は横軸でライトの定位置からの距離を、縦軸で滞空時間を表したもので、滞空時間と距離別に打球がどれくらいの割合でアウトになっているのかを示している。定位置近くの滞空時間が長い打球は、アウトになる割合が高く、定位置から遠く、滞空時間の短い打球はアウトにするのは難しい様子が見て取れる。定位置から近い(0~10m)ゾーンを除き、3~4秒台の打球をどのように処理するかが守備範囲の評価に大きな影響がある。

このライト全体のアウト割合を表した図版の上に、各守備者が対峙した打球を、アウトを獲れたものはオレンジのプロット、アウトを獲れなかったものは青のプロットで示した。特に打球処理が40~60%あたりの打球を実際にどのように処理していたのか確認しながら、各守備者の傾向を見ていきたいと思う。




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ソフトバンクの上林誠知は定位置から近い、滞空時間の短い打球に対して高い対応力を示している。また、定位置から遠い(長い距離を走る)打球に対してもしっかりアウトを獲れている。守備力に差が出るゾーンでもまずまずアウトを獲れており、レギュラー1年目としては優秀な守備者といえるだろう。




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前年と比べるとUZRの評価を下げた広島の鈴木誠也だが、今回の評価方法ではまずまずの内容となっている。ただ、アウトが見込めるエリアでの取りこぼしがUZRを下げる原因となっていたようだ。一方でかなり難しいゾーンでアウトを獲っており、比較的シフトを大きくとる守備者である可能性をうかがうこともできる。昨年はそのシフトがうまく働き、今季はそれが裏目に出た可能性もありそうだ。ただ、定位置からのカバー割合でみるとかなり良い守備者とみてよいだろう。




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西武の木村文紀は出場機会が限られていたが、出場した際のパフォーマンスは優れていた。特に定位置から15m以上の打球に対しては一定の時間があれば、かなり高い割合でアウトを獲ってくれている。もともと身体能力に定評があり、長い距離の打球に対するカバー割合に特性があるといえそうだ。データを見るとそれほど極端にシフトを敷くようなタイプではないようにも見える。




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日本ハムの松本剛は飛躍を遂げたシーズンとなったが、守備でも優れたパフォーマンスを見せたシーズンだったようである。特に滞空時間が短く、正面付近の打球に強いことが特性といえる。一方でやや距離のある打球に対しては、アウトを獲れていないケースも散見される。比較的アウトを獲っているゾーンとそうでないゾーンがまだらとなっており、安定した内容となっていないのはレギュラー1年目(ライトでの出場も半分程度)であることが影響しているのかもしれない。




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今季は故障で出場機会を半減させた中日の平田良介は、守備のパフォーマンスは平均的だった。アウトをより見込めるエリアのカバーは安定している。ただ、距離のある、滞空時間の短い打球に対してアウトを獲る割合は限られていた。もともと高い守備力を誇っていたが、故障や加齢の影響が出てくる時期に差しかかった可能性もありそうだ。




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阪神の福留孝介はライトでのパフォーマンスは平均的なレベルといえる。定位置から距離のあるゾーンでもアウトをしっかり獲っており、守備面で衰えを感じさせる傾向は表れていない。なお、チーム事情からシーズン途中にレフトにコンバートされた。レフトは守備負担が小さいはずだが、慣れないポジションであったからか処理割合を落としている。ここ数年は守備での貢献が減少していたが、慣れたポジション故にその減少幅を小さくできていたのかもしれない。もちろんレフトでの数字が、単純に過労によるパフォーマンス低下の影響であった可能性もある。




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もともと遊撃手を務めるほどの高い身体能力を備え、外野でもそれを生かし一定の守備範囲を誇っていたDeNAの梶谷隆幸だが、今回最もUZR評価と差異が出た。今季の守備傾向としては、アウトが見込めるゾーンに対しては非常に安定していた。特に定位置近くの滞空時間の短い打球の処理割合は非常に高い。一方で、難しいゾーンでのアウトが極端に少なくなっており、定位置から20m以上離れた打球をアウトにする割合が小さいという特性が見られた。一つ考えられるのは、梶谷がポジショニングをほぼ変化させていない可能性である。こちらが想定した定位置周辺にポジションを取った結果、ポジショニング変えることでアウトを稼いだ選手たちに差をつけられた、という見方は仮説としては成立する。




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梶谷とは逆に今回の手法で評価が上がったのが楽天のカルロス・ペゲーロだ。ライトでの出場は全守備イニングの半分程度だが、定位置から遠いゾーン(4.2~4.8秒/20~25m)でアウトをよく獲っている。トップスピードを生かすことでそうしたゾーンの処理割合を高めている、もしくは初期のポジショニングでカバーしている可能性、両方が考えられる。今季の楽天は外野手を定位置よりも前で守らせるケースが多かったが、それがペゲーロの数字を押し上げた可能性もありそうだ。




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読売の長野久義は定位置から長い距離を走っての処理で秀でているが、それ以外はやや低調な内容となっている。滞空時間と定位置からの距離、いずれも中間部分での処理に課題があるように映る結果だ。ライトの守備評価ではここ2年低調で、30を超えた年齢を考えても厳しい状況が続くかもしれない。




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最後にヤクルトの雄平だ。比較的定位置から近く、滞空時間の短い打球に対してアウトを獲れなかったようである。ただ、今季は故障で出場機会を減らしており、状態の悪い期間の割合が高いままシーズンを終えてしまった可能性もある。従来から出場機会は限られるタイプ故に年齢的な衰えが出た可能性も考えられるが、それについては来季以降の数値を観測してから考えるべきか。


10選手の処理状況の比較(PDF)

参考分析担当者による総合評価


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表に、滞空時間と定位置からの距離を考慮した守備範囲評価を用いて、各守備者が同じ守備イニングを守った平均的なライトと比べどれだけ失点を抑えた(増やした)のかを示した。これにUZRの進塁抑止および補殺評価(肩)を加え、総合評価のベースとしたが、この合算値が近接しており、かつ守備イニングに小さくない差が生じていた場合、順位の決定に際し調整を行っている。

トップは守備範囲・走者の進塁抑止で優れた成績だったソフトバンクの上林とした。僅差で広島の鈴木だったが、今回の評価手法で両者の差はほぼないといっていいだろう。それに続くのが西武の木村。若く身体的に優れた世評の選手が高い数値を残しているのは、外野守備で求められることが、飛んできた打球に対して“反応”し”素早く落下地点にたどり着く”ことだと考えると当然なのかもしれない。打撃や投球に比べ、守備は身体的な能力がより反映されると考えられている。今回もその見方に沿った結果といえそうだ(もちろん、打者の傾向などの分析に基づくポジショニングの影響もあるだろう)。

それ以降でも松本、平田、梶谷など若い選手が中位を固めて、30代選手は下位に沈んでいる。ベテランで気を吐いたのは阪神の福留で、チーム事情とはいえライトを1年通して守った場合にどのくらいの貢献を残したのかは気になるところだ。

今回対象となった選手でトップと最下位は10点余りの差しか生じない結果となった。レギュラークラスではそれほど差のつかないポジションとなっている。世代別の傾向がよく出ており、若手とベテランが据え置いたまま長いイニング起用されると、必然的に守備面での差が大きくなる可能性を秘めている。今季ライトを守ったベテラン選手に守備力のこれ以上の改善を求めるのは難しく、打撃でカバーできるかがポイントになるだろう。特にセ・リーグは、広島の鈴木が攻撃で傑出した貢献を2年連続で残した。守備でも利得を伸ばされると、他球団はライトで大きなハンデを背負うことになる。この差をどのように埋めていくか、各チームのフロントは戦略的な対処を求められる。


8人のアナリストによる採点と選出


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参考分析と同様に、ほか7人のアナリストがそれぞれの手法で500イニング以上を守った右翼手10人を評価した結果、全員が上林誠知選手(福岡ソフトバンク)を1位に選出。“1.02 FIELDING AWARDS 2017”の右翼手部門は上林選手を選出します。




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