前回に引き続いて無死二塁からのバントについての検証を続けていく。前回はバントの企図率について調べたが、今回はバントを試みた場合の結果について検証する。前回と同様に検証の対象とするのは、無死二塁からの投手以外の打者によるバントだ。走者一塁編はこちらから。

バント結果の検証


以下ではバントの結果を以下のとおりに分類して検証していく。

大成功:安打、失策、野選でアウトとならずに打者走者が出塁した場合
成功:打者走者がアウトになり、二塁走者が進塁した場合
失敗:打者走者がアウトになり、二塁走者が進塁しなかった場合
大失敗:二塁走者がアウトになった場合


こうした定義は走者一塁での検証を行ったときも用いたが、その場合と異なり、走者二塁では併殺打となる可能性はないので、失敗と大失敗の定義を変更している。

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無死二塁からバントを試みると、大成功は11.6%、成功は78.1%であり、89.7%の割合で意図していたとおりか、それ以上の結果になっている(表13)。これは2019年の無死一塁からの投手以外のバント成功率(走者が二塁より先に進んだ割合)が84.2%であることと比べると高い。

さらに、大失敗つまり二塁走者がアウトになる割合は3.6%と極めて低い。打者走者がアウトで二塁走者が進塁できない失敗の割合は6.7%であるが、これらはほぼフライアウトか3バント失敗なので、転がすことさえできれば、かなりの確率で走者を進めることができるという結果になっている。このように、成功率が無死一塁の場合と明らかに違う理由については、今回の記事の後半部分で検証するが、ひとまずは状況の変化によって成功率が変化するかを見ていく。




状況ごとのバント成功率の変化


まずは点差がバント成功率にどのような影響を与えるかから見ていく(表14)。僅差の状況では、守備側が警戒してバントが成功しづらいことはあるのだろうか。

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いずれの点差でも成功率(成功または大成功の確率)は90%前後であり、大きな変化は見られない。2点以上のビハインドでは大成功の割合が30%に達しているが、これは点差のある場面では、アウトカウントを増やして走者を進塁させるというよりは打者も生きようとして仕掛けるバントが多いことが原因と思われる。

では、試合の序盤と終盤とで成功率が変わるという傾向は見られるだろうか(表15)。

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イニング別に見ても大きな差は見られない。これは無死一塁のときとは大きな違いだ。無死一塁のときはバントが試みられやすいケースでは成功率が下がる傾向があったが、無死二塁ではそのような傾向は見られない。

続いて、打者の打力、投手の能力によって、成功率が変わってくるかも見てみる(表16、表17)。ここでは打者をwOBA(weighted On Base Average)が①.350超、②.310超350以下、③.310以下の3グループ、投手をtRA(true Runs Average)がA.3.50未満、B.3.50以上4.80未満、C.4.80以上の3グループに分けて整理をした。tRAは値が低いほど優れた投球をしていることを示す。

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打者の打力が高いほど成功率は高くなっているが、1%程度の差でありほとんど変わらない。また、投手の能力が低い場合(C)には、比較的成功率が高いが、投手の能力が高くなるほど成功率が高くなるという傾向は見られない。

こうしてみると、無死一塁では状況や打者の能力、投手の能力によって成功率が変わっていく傾向があったが、無死二塁の場合は同じような傾向は見られない。成功率自体が90%程度と高いためか、無死二塁の場面では、守備側があまりバントを警戒しないのだろうか。理由は定かではないが、成功率はほとんど変化がないことがわかった。


どのポジションの選手が捕球するかによる違い


ここからは、無死二塁のときバントを試みた場合に、どの程度の打球が飛んでいるか、また打球を処理しているのはどのポジションかを調べてみた(表18)。

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投手が半分以上の割合で処理をしており、次いで一塁手、捕手、三塁手と続いている。セオリーでは三塁側に転がすべきとされる場面であるが、実際に三塁手が処理している割合は6.5%とかなり少ない。三塁側に転がしても投手と捕手が処理しているケースが相当数あるということだと考えられる。

また、3バント失敗で三振となっているのは全体の0.3%ほどである。2019年の無死一塁でのバントでは、3バント失敗となったのが2%ほどであったことと比べるとかなり低い。無死二塁の場面から3バントをさせること自体が稀だったと考えられる。

では、どの守備位置の野手が捕球するかによって、成功率に変化はあるだろうか(表19)。

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基本的には捕手に捕球されさえしなければ、成功率は90%を超えてくる。また、捕手が捕球しているケースも大失敗の割合は4.6%、失敗の割合が20.2%であることからすると、ほとんどはフライを上げてしまったことによる失敗であり、二塁走者がアウトになる割合は高くない。ここからしても、無死二塁の状況では転がしさえすれば、成功する確率が高いと考えて良いだろう。あえて指摘するとすれば投手または捕手が捕球すると、二塁走者がアウトになる可能性は高くなる。意外なことに、一塁手が捕球しても、二塁走者が刺されることはほとんどない。

また、二塁手や三塁手が捕球した場合には、ほかの場合と比べて打者走者も出塁できる割合が高くなっている。これらの中にはバントシフトを破るためにプッシュバントをしたケースやセーフティバントとして行われたケースもそれなりに含まれていると思われる。

以上のように、誰に捕球させるかによって、バントの成功率は変わることがわかった。ただし、走者一塁時のバントと比べると全体的に成功率自体が高めであるため影響は小さい。




投手と打者の左右による違い


続いて、投手の左右あるいは打者の左右でバント成功率が変わってくるかも調べてみた。

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打者の左右で比較した表20を見ると、右打者の方が走者を進めることができる確率がわずかに高い。ただし、左打者は自身も出塁することができる大成功の確率が右打者よりも高い。一塁に数歩近いことに加えて、実質的にセーフティバントを行ったケースが多いことも理由と考えられる。また、理由はわからないが、二塁走者がアウトになる大失敗の確率も左打者の方が少し高くなっている。

次に、投手の左右でバント成功率に変化があるかを見ていく(表21)。

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4%ほど左投手の方で成功率が低くなっている。しかも、二塁走者がアウトになる大失敗の割合も左投手の方が高い。走者二塁の状況では投手が約半数のバントを処理しているが、左投手の方が捕球後三塁に投げやすいことが影響していると考えられる。

続いて、打者と投手の左右の組み合わせでバント成功率が変わってくるかも見てみる(表22)。

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一般的な対戦において左対左や右対右は投手有利と言われているが、バントに関しても同様の傾向が見られる。

バントの機会はそれほどあるわけではないので、プラトーン的な起用までは考えなくてもよいだろうが、バッティングと同様にバントでも投手と打者の左右によって、やりやすさというものはあるようだ。


打球方向による違い


次に、バントの方向についても確認してみた(表23)。よく走者二塁でのバントは三塁側に転がす方が良いと言われるが、実際にはどうなっているのだろうか。

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表23ではセンターラインから三塁寄りの打球をすべて三塁側の打球として分類している。左打者の場合こそ三塁側へのバント割合は50%を超えているが、右打者の場合にはその割合は38.5%と一塁側に多くのバントをしていることがわかる。これは右打者と左打者でバントを転がしやすい方向が異なるということが原因と考えられるが、それにしてもセオリーに反して一塁側のバント打球が多いというのは気になる。

そこで、バント打球の方向別に二塁走者がアウトになってしまった割合(上で述べた「大失敗」に該当。)を調べてみた。二塁走者が進塁できずに、打者走者がアウトになった場合(上で述べた「失敗」に該当。)を含めなかったのは、このようなケースはほとんどフライアウトか3バント失敗によるものだからだ。

ちなみに打球方向は以下の図1のようなアルファベットで区分したものを使っている。アルファベットが先に進むほど、一塁側の打球方向となるとイメージしてもらえばよい。BとYはファウルゾーンだが、今回は邪飛も対象としているため、これらのゾーンへの打球も発生している。

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表24を見ると、正面へのバントは三塁側や一塁側に比べて二塁走者がアウトになる割合が高くなっているが、最もアウトになる割合が高いのはJ~Mのゾーン。これは正面やや三塁側のゾーンである。このゾーンでの二塁走者がアウトになる割合が9.7%。次に高いのはN~Qの正面やや一塁側のゾーンの4.2%。これらに対して、それ以外のゾーンでは2%以下の値になっている。一番危険なのは一塁側のゾーンではなくて、正面のゾーン、それもやや三塁側のゾーンだ。無死二塁であれば、無理に三塁側を狙って中途半端に正面に寄った位置にバントが転がってしまうよりは、比較的安全な一塁側に転がそうという意識が、特に右打者にはあるのではないか。

これは成功率が極めて高く、転がせばほぼ成功する無死二塁の場合に特有な現象で、無死一二塁の場合には当てはまらないかもしれないが、セオリーとは異なる結果になった。




まとめ


以上の検討の結果から、走者二塁からのバントは、成功して走者を三塁に進めることができる割合は90%近い上、状況や打者、投手の能力によっても、その成功率が大きく下がることがないことがわかった。これは無死一塁でのバントとは大きく異なる特徴であり、バントが有効な場面を考える上で、重要な点と考えられる。無死一塁の場合は、バントが有効な場面ほど成功率が低くなる傾向が見られたため、こうした成功率の低下も考慮にいれなければならなかった。一方で、無死二塁の場合はこうした現象はほぼ見られなかったため、比較的単純なモデルでも十分な検証が可能と思われる。

Part3ではWPA(勝利期待値の変化)や得点確率から、無死二塁からのバントの有効性について検証をしていく。


市川 博久/弁護士 @89yodan
DELTAデータアナリストを務める弁護士。学生時代、知人が書いていた野球の戦術に関する学術論文を読み、分析に興味を持つ。 その後『マネー・ボール』やDELTAアナリストらが執筆したリポートを参考に自らも様々な考察を開始。『デルタ・ベースボール・リポート3』などリポートシリーズにも寄稿。動画配信サービスDAZNの「野球ラボ」への出演やパシフィックリーグマーケティング株式会社主催の「パ・リーグ×パーソル ベースボール データハッカソン」などへのゲスト出演歴も。球界の法制度に対しても数多くのコラムで意見を発信している。

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