パ・リーグは日本ハムが2012年以来4年ぶりの優勝を果たしました。球団創立から通算7度目、ここ10年間でソフトバンクと並びリーグ有数の強豪球団という評価が定着しています。しかし、4年前にはチームに在籍していなかった選手が中心的役割を果たすなど、新旧交代のサイクルが早い球団の利点を存分に生かした優勝といって良いでしょう。惜しくもリーグ制覇を逃したソフトバンクも、勝率.606と優勝しても可笑しくない成績でした。パ・リーグでは1980年以降、勝率6割以上のチームが複数存在したのは1991年(西武、近鉄)と2005年(ロッテ、ソフトバンク)以来3度目で、10年に一度も見られないデッドヒートでした。
<ペナントレースのおさらい>
開幕10試合を経過して勝率5割以上だったのはロッテ、西武、楽天の3球団。序盤の順位争いはロッテが中心でしたが、4/8の日本ハム戦に勝った楽天、4/9のロッテ戦を制した西武も首位に立つなど、混とんとした状況でした。昨シーズン覇者のソフトバンクは、昨シーズンのMVP柳田悠岐選手が開幕から四球攻めに遭い、同2位の日本ハムはエース大谷翔平投手が4月末までに先発した試合で勝ち星なしとエンジンがかかりませんでした。
いち早く修正に成功したのはソフトバンクで、4/7のロッテ戦に敗れ借金3を抱えましたが、その後4/11、12のオリックス戦はいずれも2ケタ得点で大勝。ここから連勝を「8」まで伸ばし、4/19からのロッテ戦では、日本球界復帰1年目の和田毅投手が完封勝利を飾るなどライバルを制し、今シーズン初の首位に立ちました。5/6には早くも貯金10に達したソフトバンクに対し、ロッテも負けまいと追いかけましたが、5月に行われた2度の直接対決でソフトバンクが5勝1敗と圧倒。交流戦を前にして、独走の足固めが整い始めました。
3年連続日本一を目指すソフトバンクの工藤公康監督は、「勝ちながら育てる」方策を取り、交流戦に入ってから今宮健太選手の1番起用にチャレンジ。また、プロ13年目で昨シーズンまでは代走・守備固めとして働いていた城所龍磨選手をスタメンに抜擢。その城所選手が、交流戦だけで6本塁打と大暴れし、チームも2年連続して交流戦の優勝を飾るなど、この時点でソフトバンクの優勝は濃厚と多くが感じていました。6/19時点でソフトバンクの貯金は「27」。2位ロッテには7.5ゲーム差、日本ハムはこのときまだ3位で、交流戦明け6/24には11.5ゲームの差をつけられていました。
しかし、ここから日本ハムの逆襲が始まります。7/1からのソフトバンク3連戦、このシリーズ前まで9.5ゲーム差をつけられていた日本ハムは、高梨裕稔投手と有原航平投手の好投で2勝した後、カード3戦目に先発予定だった大谷投手を「1番」として起用し、その大谷投手が初回先頭打者アーチを放つなど投打に渡ってソフトバンクを圧倒。日本ハムにとって、このカードが優勝争いに踏みとどまる最後のチャンスだっただけに、栗山英樹監督も戦う前から手を尽くす考えだったようです。これで首位とのゲーム差を縮めた日本ハムは、6/19の中日戦(交流戦)から始まっていた連勝を「15」まで伸ばし、オールスター前にはソフトバンクまで6.0ゲーム差と急接近しました。
ところが、7/10のロッテ戦で大谷投手が右手中指のマメを潰してしまい、その後も調整が捗らない理由から、しばらくの間は打者に専念することになりました。チームの先発事情が苦しくなると予想された中、救世主のように現れたのが増井浩俊投手。今シーズンもチームの守護神として開幕を迎えた増井投手でしたが、救援失敗が相次いだことにより6/20にファーム行きを命じられました。この時点で栗山監督は増井投手に先発転向を勧め、以降はそのための調整を続けました。8/4のロッテ戦で1軍のマウンドに戻って来た増井投手は、守護神時代と変わらぬ球威で相手打線を寄せ付けず、シーズン終了までに7連勝をマーク。8月以降は防御率0.89の快投を演じました。こうしたプラス要素が重なり、日本ハムは8/25には今シーズン初の首位浮上。このときは一日天下に終わりましたが、以降もソフトバンクと激しく優勝を争いました。
9/21から行われたソフトバンク-日本ハムの2連戦は、両チームにとって最後の直接対決。どちらかが2連勝すれば、優勝はほぼ決まりと見られていました。ここで日本ハムは、カード初戦をレアード選手の2ランと大谷投手の好投で先ずは先手を取り、続く2戦目も有原投手が粘り強い投球を続ける中、中田翔選手の2ランで勝負を決め、ここで優勝マジック「6」が灯りました。日本ハムはマーティン投手、ソフトバンクは柳田選手を故障で欠いていたため、ベストな戦いが出来ない点は同じでしたが、ひと試合に置けるウェートの高さではソフトバンクにやや分が悪いのは確かでした。反対に、日本ハムはブルペンの危機を、大谷投手が長いイニングを投げることでリスク軽減に成功。投打二刀流で今季のパリーグを支配する象徴のようなカードでした。
マジック「1」で9/28の西武戦を迎えた日本ハムは、ここでも大谷投手が好投。21日のソフトバンク戦と全く同じ、レアード選手の一発で得たリードを9回まで守り抜き、自己最多の15奪三振で完封勝利。11.5ゲーム差も離されてからの大逆転優勝。シーズン87勝、チーム勝率.621で球団新記録更新という強さを発揮した日本ハムの戦い振りでした。今から思うと、4年前の10月に行われたドラフト会議で大谷投手を指名しなければ、その大谷投手に投打二刀流を勧めなければ、今回の優勝は起こらなかったと見て良いかもしれません。もちろん、中田選手や田中賢介選手、陽岱鋼選手らチームの先輩たちも優勝に貢献しましたが、大谷投手の投打二刀流が球界に与えた衝撃は、単なる話題性には終わりませんでした。そうした意味でも、今季のパ・リーグはプロ野球史上でも忘れることの出来ない1年となりそうです。
<各球団の戦力値総括>
北海道日本ハム
優勝に相応しい戦力値といえ、チームの弱点が中々見えて来ない成績を残しました。前年と比較して数字を大きく引き上げたのは防御率(3.62→3.06)、犠打(104→178)、UZR(-1.1→52.4)といったところで、特に守備力の向上が目を引きます。選手個人でも、今シーズンは左足首や右脇腹など故障を抱えながらプレーを続けた陽岱鋼選手以外は軒並み数値を上昇させ、中でもARM(外野手の肩)、RngR(打球処理)の面で急激な進歩を見せました。UZRは同一ポジションの他の選手との相対的な比較になるため、他球団の守備力が下がったという見方も出来なくはないのですが、内外野のほぼ全域に渡って優位に立つことが出来たのは、打者ごとのポジショニングなどデータ面でのサポートがあった可能性もあります。
投手成績は、防御率とxFIPの乖離が気になる点で、前年と比較しても防御率だけが大きく変化しました。これもチームの守備力向上とは切り離せない関係と見られ、一概に不安視する内容ではないのかもしれません。しかし、いつまでも守備力が優位に立てるとは限らないので、やはり三振が取れる投手を起用もしくは育てることに越したことはありません。今シーズンの日本ハム投手陣は、チーム全体の4シーム平均球速で145.1kmを記録しており、これは12球団でもトップの数字です。仮に、大谷投手を抜いても平均143.7kmは維持し、この場合ソフトバンクの144.4kmに次いで2位となります。チーム内ではマーティン投手、有原投手、バース投手、増井投手らが平均145km以上を記録していますが、出来れば三振率26%以上(9イニング当たり7個の割合)を計算出来る投手が現れれば、チームはより安定した戦いが可能になるのではと見ています。
攻撃陣は、何といっても大谷投手が打線に入らなかった場合の得点力維持が今後のテーマです。今のところ、投手に専念する情報もなく来シーズンも投打二刀流を見せてくれそうですが、後半戦で大谷投手が打者として出場しなかった10試合では、平均2.56点しか奪えませんでした。これは、今月行われるポストシーズンでもチームの大きな課題です。投打に渡り、あまりにも大谷投手の存在が大きかったため、こうした不安要素が出て来るのも仕方が無いように見えますが、短期決戦の勝敗まで1人の選手に委ねられてしまうようでは考え物です。日本ハム、他球団ともにポストシーズンでは数多くのヒーローが出現することに期待しましょう。
福岡ソフトバンク
「まさかの2位転落」というのがソフトバンク選手並びに球団関係者、そしてファンの気持ちではないでしょうか。何度も言うように、勝率6割超えで優勝を果たせなかったのは、1980年以降のパ・リーグでは3度目。セ・リーグでも1986年の巨人が記録したのみです。確率にして、89.8%は優勝の望みがあった球団が、自軍を上回る勝率を残したチームが出てきた影響で3年連続リーグ優勝の夢は果たせませんでした。各戦力値も、日本ハムと比較して勝るとも劣らない結果を残しましたが、致命傷にもなりかねない弱点は存在していました。
その一つが被本塁打の多さ。本拠地ヤフオクドームは、2015年から「ホームランテラス」を設置して、以前よりも本塁打の出やすい球場に生まれ変わりました。この影響は、昨シーズンでは77本塁打/67被本塁打と自軍の本数が上回りましたが、今シーズンは66本塁打/75被本塁打と収支が逆転。特に、日本ハム戦では10本塁打/18被本塁打と苦しみ、対戦成績も9勝15敗1分と大きく負け越しました。また、大谷投手との対戦では2015年の得点率が6.58(9イニングあたり)、2014年も同3.91と苦手意識は無かったものの、今シーズンは1.57点と逆に攻略されてしまいました。大谷投手は、打者としても対ソフトバンク戦で打率.411と打ち込み、さらには9本塁打のうち4本をヤフオクドームで放ちました。今シーズンに限れば、ホームランテラスは大谷投手のためにあったと言われても仕方がありませんでした。
他にも、救援失敗率と盗塁阻止率がチームの弱点になったと感じます。先発と並び、ブルペン陣もリーグ随一の陣容を誇りましたが、救援失敗の数は少なかったわけではなく、特にイニング途中から交代した際の失敗や、先発投手の後を受け継いだ直後にリードを追いつかれるケースが多々あり、継投策そのものを疑問視する声も聞かれました。盗塁阻止率は、チーム最多守備イニングを記録した鶴岡慎也選手が12.1%しか走者を刺せず、そのため対戦チームの盗塁企画数は139回。日本ハム捕手陣との比較では、50回以上も多く走られていました。僅かでも劣る箇所があれば、そこを突いてくるのがプロの世界。ポストシーズンでは、そうした些細な弱点をどのように修正していくかも注目が集まります。
千葉ロッテ
「パ・リーグ前半戦の功労者」はロッテといえるでしょう。開幕から7月上旬までチームの勢いが感じられました。しかし、後半戦に入ってから徐々に失速し始め、9月にはCS進出を逃しかねないほどの不調に見舞われました。現在は、チームの立て直しが進み、ポストシーズンでは「下剋上」の再現を期待する声も増えてきました。
開幕前にロッテが健闘するとの評価を集めた理由は、例年以上に充実した先発投手の顔ぶれでした。その評判通り、涌井秀章投手と石川歩投手の二本柱が安定した活躍を見せ、3年目の二木康太投手もローテーションに抜擢された後、4/12の楽天戦ではプロ初勝利を完投で飾りました。ただ、他球団の陣容と比較して際立っていたわけではなく、接戦の末に敗れるという試合も少なくありませんでした。プルペン陣は、ここ数年の集大成のような顔ぶれで、救援防御率は一時リーグトップを突っ走っていました。しかし、7月後半から西野勇士投手を始めとするリリーフの柱が相次いで故障してしまい、一転してブルペンの運用が苦しくなりました。幸いにも、現在は西野投手や内竜也投手らが戦列に戻り、彼らが不在の間救援陣を引っ張った益田直也投手、南昌輝投手らも加え、チームで最も信頼のおけるポジションに戻りつつあります。
攻撃並びに守備の面では、巨人に移ったクルーズ選手と楽天に移籍した今江敏晃選手の穴をどう埋めるかが課題でしたが、2塁守備ではマイナス分が拡大(UZR-2.8→-6.7)、3塁守備は改善(UZR+4.5→+8.0)、それぞれの守備位置についた選手たちの攻撃力(2015年はクルーズと今江選手、2015年は5選手分)はマイナス面が大きくなりました(Offence-4.5→-9.6)。新外国人のナバーロ選手はやや期待外れ、その他の選手たちもレギュラー定着には至らなかったので、ある程度は予想出来た結果でした。昨シーズン打率3割をマークした清田育宏選手がスランプに喘ぎ、攻守両面で期待に応えられなかったのがチーム最大の誤算でしょう。また、打撃と守備どちらもプラス貢献する選手が少ないのはセ・リーグの巨人と類似しており、運用面が難しいチーム状態になってきています。
なお、ポストシーズンではチームの弱みを見せることなく、歯車さえ噛み合えば善戦以上の結果も期待出来るでしょう。得意の短期決戦では、果たしてどんな戦いを見せますでしょうか。
埼玉西武
強打のチームカラーが今シーズンも変わらなかった西武は、運用面で最も苦労した球団の一つでした。開幕直後のスタートダッシュこそ成功したものの、貯金が直ぐに底を突いたのは守備の乱れから来るものでした。チームUZRは2014年+27.2、2015年の+12.3と比較して今シーズンは-9.7に終わり、一部評論家からは「気の緩み」、「練習不足」といった厳しい意見が寄せられました。
それ以上にチームを苦しくしたのは投手陣の運用で、先発の一角だった牧田和久投手を開幕直前になってリリーフに転向させ、これは一応の成功となりました。しかし、交流戦が終了する頃に牧田投手が故障で1軍を離れ、チームが貴重な勝ちパターンを失うとオールスター前までの18試合で4勝14敗と大きく負け越し、その後も中々立て直すことが出来ませんでした。1979年以来の最下位も現実味を帯びてきましたが、8月後半からなんとかチームが持ち直し、最終的には4位でフィニッシュ。今シーズン限りで辞任した田辺徳雄監督曰く、バントなどの細かい戦法を控え、打ち勝つ野球に戻したところチームが急に勝ち始めたと語っていたようです。それまで中々捕手を守らせてもらえなかった森友哉選手は、9月以降のスタメンマスクを被る機会が増え、3年目の山川穂高選手は7/30以降の37試合で13本塁打を叩き出し、まさに「眠れる獅子」が目覚め、破壊力が蘇りました。
西武が得失点差の割に勝率が低いのは、ここ数年の傾向で、それが理由で細かい戦法を取ろうとしたのかもしれません。ただ、如何せんデプスが弱く、特にブルペン陣は最少失点で乗り切るだけの質量を揃えていません。チームには中村剛也選手、メヒア選手といったリーグを代表する大砲が並び、投手陣では岸孝之投手を始めとして完投するスタミナを持ったメンバーが中心となっています。しかし、控え選手及びファームに人材が乏しい部分があり、主力メンバーの何人かが故障やスランプで本来のパフォーマンスを発揮できなくなると、途端にチームの戦いが苦しくなります。
来シーズンは、辻発彦新監督を迎えチームを本格的に立て直す気風が出てきました。守備に関しては、新監督の意向で厳しいチェックが入ると思われます。それ以外の部分を改善するには、球団総がかりでサポートしなければ上位球団との溝は簡単には埋まらないでしょう。ドラフト然り、オフの補強然り、はたまたデータの活用然り。やるべきことは山ほどあるでしょう。
東北楽天
近鉄、日本ハムの監督時代にチームを優勝に導いた梨田昌孝新監督を迎えて1年目の楽天は、3年連続の最下位こそ免れたものの、今シーズンも勝率5割には遠く及びませんでした。開幕18試合目から借金生活に入り、5/8には最下位に転落。チームの得失点差は前半戦終了時点で-66と、2015年の同時点-52よりも悪化しましたが、後半戦はやや持ち直し4位のポジションからCS進出へのチャンスを伺うまでにチームが改善されました。最終的には勝率.443ながら、前年から借金を10減らし、かつ世代交代の足掛かりも掴みました。
チームの平均得点は、2015年の3.24から3.80へと大幅なアップしました。ただし、2014年は3.81を記録していたので、深刻な打撃不振だった昨シーズンから立ち直ったという見方も出来ます。日本一に輝いた2013年は4.36を記録していましたので、物足りないと感じるかもしれません。一方で、チーム本塁打は2009年以来7年ぶりに100本台を記録。後半戦から外国人打者3人を並べた起用法が、これに貢献したのは間違いありませんが、後半戦から1番に定着した島内宏明選手が8月だけで6本塁打、新人王の有力候補にもなっている茂木栄五郎選手が9月に5本塁打と、長打力を伸ばした選手も出てきました。反対に、盗塁数は2015年の118からほぼ半減。昨シーズンは、前監督の方針により、試合1盗塁が課された影響で数を増やしましたが、こちらも2年前の水準に戻りました。
投手陣は、バックの守備に泣かされ、ブルペンのやり繰りに苦心する1年でした。チーム全体のxFIPが4.01なのに対し、防御率は4.11、平均失点は4.57という数字がこれを半ば証明しています。守備力の高いチームの広島や日本ハムは、投手のポテンシャルを示すxFIPよりも低い防御率を作り出すだけでなく、平均失点においても投手陣を助けた結果が明らかになっています。楽天を含めた3球団のxFIPは3.92から4.01の範囲と、ほぼ横一線の状態。ところが、実際の失点率(平均)は1点以上の開きが出てしまいました。内外野各ポジションの守備力は、茂木選手が中心となった遊撃以外は失策面でのマイナスは見られなかったものの、守備範囲を基調とする打球処理面、外野手の肩では他球団と比較して後れを取りました。
楽天は、印象以上にチームの高齢化が進んでいて、25歳以下でチームの中心として働いたのは茂木選手と松井裕樹投手くらい。オフには主力メンバーがFA権利を行使する噂も流れており、球団がどのように対応するのかも注目されています。
オリックス
2014年にあと一歩のところで優勝を逃がしていたオリックスは、その年のオフに大補強を進めるも2015年はまさかの5位失速。今シーズンはその雪辱を誓い、再び補強に力を入れましたが、開幕から不振を極め、2012年以来の最下位が決定。後半戦に入ると若手起用を前面に出し、シーズン中からチーム再建の動きが見られました。
チーム低迷の原因は前半戦の戦いにほぼ集約され、得失点差-136点のうち-116点はオールスター前までに抱えたものでした。従って、後半戦は借金の増加を何とか食い止め、新人の吉田正尚選手をはじめとする若手の活躍に希望を見出すことも出来ましたが、それだけに戦力の噛み合わなかった点が残念でした。攻撃陣の誤算はなんといっても外国人選手。開幕スタメンに起用されたモレル選手、ボグセビック選手を筆頭に、ブランコ選手、途中加入したクラーク選手のうち1人でも戦力になっていれば、リーグ内でも極めて低かった得点力はある程度改善されていたはずです。また、今シーズンはリーグ2位の犠打数を記録しましたが、これを活かすための長打力と出塁率に乏しく、自ら苦しい戦いを望んでいるようにも見えてしまいました。
投手陣は、先発救援ともに波が大きく、中でも金子千尋投手の不調が尾を引きました。沢村賞を獲得した2014年は、全ての球種が効果的でしたが、今シーズンは4シーム、2シームといった速球系のボールが痛打されるシーンが目立ちました。救援陣は、調子の良い中継ぎを集中して起用する傾向が強く、登板過多の末に打ち込まれる結果を招き、その都度配置転換を余儀なくされました。編成上ではほぼ変わらないのに、チーム全体のxFIPは2年前と比較して0.60も悪化しています。リーグ内でここまで変動があるのはオリックスだけで、チームとしても真剣に対策を立てなければならないでしょう。
オリックス再建は、球団と現場の一体感も課題の一つです。その点で福良淳一監督は、外国人選手が機能しなくなった時点で早々と若手起用の方針に切り替え、来シーズン以降の布石を打ちました。球団は1年を戦えるだけの選手を揃え、現場は与えられた戦力でシーズンに臨む。スカウトはチームにフィットした選手を探し出し、ファームは成長を即すための手助けをする。オリックスに限らず、こうした共同作業が噛み合ったときにチームは成長するものです。ただ、成績そのものは相対的な要因に左右されるため、他球団の成果が上回ればいくら努力しても結果は残りません。チーム再建への道には、並々ならぬ決意が必要となるでしょう。