2011年オフコラムアーカイブ

2011年シーズンは、基礎的部分として前年に比べ両リーグで大きく得点が落ち込んでいる、ということを前回確認した。そこで、得点減が何によってもたらされたのかを考えなければならないが、既存の視点とは少し違った角度から見ていこう。大苦戦を強いられた打者、そして飛ばないボールで恩恵を受けた投手、それぞれにはどんな事実が隠されているのだろうか。

ホームランとボールインプレーの検証


統一球の導入は攻守両面で様々な影響があったと考えられるが、最初にバットにボールが当たり打撃結果が残る事象について見ていく。バットにボールが当たった事象については大きく2つに分けることができる。1つはフェンスを超えて野手の守備力が限りなく反映されない本塁打。もう1つは、フィールド内に打球が留まり、野手の守備力が反映される打球(安打・凡打の区別なく)だ。


まず本塁打についてだが、統一球の導入でホームランが減っているのは多くのメディアで指摘された通り。セ・リーグは2010年863HRから485HR(378HR減)、パ・リーグも742HRから454HR(288HR減)と大幅に減少しているのが分かる。全打席に対する本塁打の割合は1.5%前後まで低下し、65~70打席に1度の割合でしか本塁打は出現しない。本塁打はボールをフェンスの向こうまで運ぶパワーや技量が必要で、NPBの大部分の打者にとって統一球をフェンスの向こうまで飛ばすのはかなり厳しい状況だったのが分かる。逆に本塁打という失点に直結するイベントが減ることは、ほぼすべての投手にとって有利に働く。その中でも、本塁打や外野へのフライが多い投手にとっては、昨年まで本塁打になっていた打球がアウトになる可能性を高め、高い奪三振率やゴロでアウトを稼ぐ投手よりも多くの恩恵を受けた可能性がある。


統一球はフェンスの向こうまでボールを飛ばす本塁打にのみ影響を与えたわけではない。フィールド内に打たれた打球についてもその影響がどの程度あったのか見ていこう。フィールドに飛んだ打球について考えるには、セイバーメトリクスのBABIP(Batting Average On Balls in Play)=【安打-本塁打】/【打数-本塁打-三振+犠飛】)という指標が基本になる。BABIPというのは、本塁打を除き、フィールド上に飛んだ打球が安打になった割合を示す。リーグ全体の値を比較することでインプレーの打球にどのくらいの影響があったのか推察することができる。


昨年はフィールドに飛んだ打球が安打になるのは、セ・リーグで30.6%、パ・リーグで31.6%だった。今季はその値が、それぞれ28.7%と29.8%まで低下しているのだ。フィールドに飛んだ打球が安打になる割合が2分近く低下し、偶然や運などでこれだけ値が変化すると説明するのは難しい。ここでも統一球が影響を与えていたのが分かるだろう。



安打自体の内容にも大きな変化があった今シーズン


さらに、安打の内容についても前年と変化がある。統一球導入前後で単打と二塁打の割合は大きく変化している。2010年は両リーグともに単打が約79%、二塁打が約20%だったのに対して、2011年は単打が80~81%、二塁打が17%前後に変化している。この変化も単なる偶然として片づけるには大きすぎる。統一球の導入によって、インプレーの打球がヒットになりにくい(出塁しにくい)環境となり、加えて安打になっても長打になる割合が小さく(長打率の低下)なってしまった。統一球は出塁自体を少なくし、さらに出塁の質も落としたのである


これ以外の要素として、四球の減少もかなり大きいものになっている。これが投手有利の環境(統一球の導入)によってもたらされたのか判断は難しい。「震災による節電へのプレッシャーが審判のストライクゾーンを拡げた」などの意見もあり、統一球が四球の減少にどの程度の影響を与えたのかはもう少し検証が必要だろう。


上記、統一球によって本塁打とインプレー打球についてそれぞれ何が起きたのか確認してきた。以下の表を参考に、ここから先を進める。


チーム 平均得点  打率  出塁率  長打率  ISO
2010CL 4.31   .267   .330   .410   .143
2010PL 4.47   .270   .336   .403   .133
2011CL 3.15   .242   .303   .340   .097
2011PL 3.41   .251   .308   .348   .097

得点の減少について改めて攻撃の基本的な成績を見ていくと、2010年に比べ2011年は打率、出塁率、長打率、ISO(長打率-打率)のすべてが低下している。得点をあげる(失点を防ぐ)基本的な要素は、出塁する能力と走者を進める能力(長打力)である。統一球の導入により、出塁面ではBABIPの低下と本塁打割合の減少(加えて統一球の影響が不明な四球減)があげられるだろう。長打面では本塁打割合の減少とヒットにおける長打割合の減少が影響している。打球を本塁打とそれ以外に分類して見ることは、統一球が出塁・長打両面で影響を与え、NPB史上でも稀な得点が入りにくい状況を生み出したことを合理的に説明しているのだ。


出塁&長打の減少は攻守に大きな影響を与えた。次回、検証の最終章はこのような環境下に置かれた監督の作戦選択やNPBの方向性について考えていく。

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