広島、ソフトバンクと首位チームが独走態勢を固めたこの2週間。セ・リーグはCS争いが佳境を迎え、読売は主力投手を次々と投入。マイコラスはこの2週間、21イニングで30三振を奪うなどフル回転を見せている。前回は こちらから。(データはすべて9月10日時点)

セ・パ両リーグの順位おさらい


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8月は12勝13敗2分とやや苦戦していた広島が、9月に入ってから猛チャージをかけ、今週中にも2年連続優勝を達成する可能性が出てきました。9月1日からのヤクルト戦で3連勝した広島は、先週始めに2位阪神と3連戦を戦いましたが、安部友裕と會澤翼のサヨナラ打で接戦を取り、7日のカード最終戦は今季初顔合わせとなった秋山拓巳を攻略してこれで6連勝。その後、中日との対戦でも逆転勝利が2度と、リーグ随一の攻撃力が見事に復活しました。鈴木誠也離脱後に4番へと座った松山竜平が9月に入ってから打率.529と打ちまくり9試合で15打点と印象的でしたが、決して調子は良くないものの四球で出塁機会をつくっている田中広輔や丸佳浩の存在も見逃せません。

阪神は、広島との首位攻防戦の時点でゲーム差を6.5にまで縮め、奇跡の逆転優勝に望みを繋げましたがあと一歩及ばず。それでも5日の試合では福留孝介が一時逆転となる2ラン、6日は岩田稔が7回途中まで無失点に抑える好投を見せ、クライマックスシリーズ(CS)で互角の戦いを演じることができそうな試合内容を見せたのはファンの期待を膨らませたでしょう。仕切り直しで臨んだDeNA3連戦では、鳥谷敬が史上50人目の通算2000安打を達成した勢いで二夜続けてのサヨナラ勝ちを収めるなど、広島戦での悪いイメージを完全に拭い去りました。DeNAは9月に入り3勝6敗と失速気味。打線、先発、ブルペンそれぞれが今ひとつの調子で、接戦を落とすことが増えています。今週は敵地での広島、読売戦が控えているため、1つの正念場となりそうです。

待望のAクラス入りまであと一息と迫っている読売は、8日のヤクルト戦で菅野智之が自身初の15勝をマーク。こちらも今週は阪神、DeNAとの対戦が予定され、特に甲子園球場では今季5勝2敗と相性が良いので、一気に3連勝を狙いたいところでしょう。今週は田口麗斗、菅野、マイルズ・マイコラスの三本柱はすべて中5日での先発が予想されています。中日は再建に向けての準備を開始。友利結投手コーチが編成部に配属となり、後任には朝倉健太コーチが二軍から昇格。先発ローテーションを大きく入れ替え、1人でも多くの若手に経験を積ませています。ヤクルトは、この2週間でのチーム防御率が2.92、先発投手のクォリティスタート(QS)は10試合と急激な改善を果たしましたが勝ち星には繋がらず。こちらは打線の立て直しが来季のテーマです。


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セ・リーグの広島と同様、パ・リーグもソフトバンクが優勝に向け大きく前進。10日時点でのマジックは「5」となり、最短では14日に2年ぶりのリーグ制覇が決まります。チームはすでに87勝を記録し、2015年に工藤公康監督が就任したときの90勝を上回るのはほぼ確実。残り16試合で13勝すれば、前人未到のシーズン100勝達成の可能性も残されています。現在の調子なら不可能な記録にも見えません。5日のオリックス戦では、デニス・サファテがプロ野球新記録となる年間47セーブをマーク。ブルペン全体でも、後半戦以降はリードした展開から追いつかれ逆転負けを喫した試合は1つもありません。

そのソフトバンクを必死に追いかけてきた西武と楽天は、ともに勢いが失せチームの立て直しが必要な状況。期間中なんとか五分以上の星を残した西武ですが、プロ1年目の源田壮亮に疲れが見え始め、浅村栄斗も故障を抱えながらプレーしていると見られ、プレーへの影響が懸念されます。ブルペンも牧田和久の調子が今ひとつなのに加え、ここまでさまざまな場面でチームを救ってきた武隈祥太が左肩の違和感でチームを離脱。挽回へのポイントは、腰痛から復帰した中村剛也のバットでしょう。楽天は23日から3日に掛けて10連敗と完全に失速。ソフトバンクとの3連戦では、岸孝之と則本昂大が完投を記録しながら打線が零封されてしまい、運にも見放されていました。どちらもCS進出は堅いため、残り試合は2位の座を賭けて争うことになりそうです。

オリックスは例年以上に早く来季への準備を始めています。5日にはブランドン・ディクソンとクリス・マレーロの契約延長を発表。すでに契約更新したステフェン・ロメロ、ブルペンで結果を残しているゴンザレス・ヘルメンも残留となればオフの外国人選手探しも苦労せずに済みそうです。日本ハムは、8月以降の得失点差が+10と戦力が安定し始め、松本剛や太田賢吾といった若手も着実に成長しています。ロッテも期間中負け越しはしましたが、先発陣がゲームをつくり粘り強い試合ができるようになってきました。


一・二軍デプスチャート


※9月12日に予告先発が発表されている投手は一軍のデプスチャートに置いています。
画像にマウスをのせる(スマートフォンの場合タップする)と一・二軍が切り替わります。

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ソフトバンクは8日のロッテ戦で東浜巨が今季15勝に到達。ここに13勝の千賀滉大、12勝のリック・バンデンハークに、復帰後3試合で防御率0.90の和田毅を加えた4人がポストシーズンのローテーションを組むことになりそうです。主要ブルペンのフル稼働は気になる点ですが、先週から石川柊太が中継ぎに転向、8日には五十嵐亮太も一軍に復帰し、投手陣に関しては盤石の体制が築けそうです。ファームでは斐紹、栗原隆矢、谷川原健太、九鬼隆平の捕手4人が打撃好調で、特に九鬼は少ない打席数ながらもすでに3本塁打を記録しており、リーグ優勝決定後には一軍昇格を期待する声も上がっています。


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西武は2位争い、ポストシーズンを戦う上で自慢の打線をどこまで機能させるかが大きなポイントです。中村剛也の復帰は嬉しい材料ですが、玉突き状態により森友哉、坂田遼ら好調な打者がスタメンから外れる機会も増えそうで、ここは首脳陣の見極めがとても重要。好機には惜しみなく代打を起用する手も考える必要が出てくるでしょう。ファームでは、2年目の愛斗が月間MVPを獲得。将来の4番候補として急成長を遂げている選手ですが、故障の多い点はマイナス。オフには怪我に強い身体づくりが求められるでしょう。


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楽天は12日に先発が予定されている藤平尚真が再び好投すれば、残りシーズンとCSでの切り札となる可能性が浮上してきます。ファーストステージから勝ち上がるには、先発陣は最低でも6枚確保が必要。そこに高卒1年目のルーキーが加わるのは、育成という目的においても決して悪いことではありません。ただ、前回のレビューでも書いた通りイニング制限は避けて通れない問題。短期決戦のみブルペンに回すことも考えられなくはありませんが、大きな博打に違いはありません。攻撃陣も長丁場の疲れが明らかに見えていますが、茂木栄五郎やゼラス・ウィーラーの復調に期待するほかはありません。


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オリックスはプロ1年目の山岡泰輔が9日の楽天戦で8勝目を挙げ、これで自身4連勝。残り試合から見て登板機会は4試合ほどあり、2ケタ10勝も届く範囲です。入団当初は球威不足が不安視された山岡でしたが、現時点でのwFA(Fastball runs above average)リーグ6位の10.1を記録し、並み居る速球投手たちと肩を並べています。野手ではT-岡田が2010年以来2度目の本塁打王を射程圏内に入れています。トップのブランドン・レアード(日本ハム)とは3本差、8月には8本塁打とシーズンを通して好調を維持していますので、逆転タイトルも決して夢ではないでしょう。


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日本ハムはルイス・メンドーサを放出したことにより現在の投手登録人数は31名。一軍、二軍ともに少数精鋭で臨んでいますが、前半戦では2度しかなかった先発投手の120球超えが、後半戦ではすでに7度、さらにここ12試合では5度を数えています。ファームのデプスも薄くなっており、これが戦力を絞り込んだ結果なのか、あるいは絞り過ぎたせいなのかは明らかではありません。12日に先発を予定している大谷翔平がそのままローテーションに定着するようになれば、投手陣の負担もかなり軽減されるでしょう。


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ロッテは今月に入り涌井秀章がFA資格を取得。報道では、早くも他球団を巻き込んだ争奪戦からメジャー挑戦の噂に発展しています。もし退団が確定すれば来季の戦力ダウンは避けられないところで、そのためにも今から新たな戦力を育てていく必要に迫られています。6日にプロ初昇格を果たした成田翔は、その日の試合1点リードの延長10回に初登板の思わぬ機会が訪れるもプロ初ホールドを記録し、今週以降は再びファームで先発としてのテストを受ける予定。シーズン閉幕前にも再昇格が期待されています。


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広島もポストシーズンに向け、戦力を着々と整備。1日のヤクルト戦に先発したクリス・ジョンソンが44日ぶりに5勝目を挙げると、10の中日戦では大瀬良大地も一軍に復帰。リーグ優勝が早々と決まれば、残り試合は主力選手を休ませながら調整を行うことが可能になります。鈴木誠也不在の穴は現在でこそ松山竜平が埋めていますが、さらにその代役候補としてサビエル・バティスタを再昇格。4番打者としてのポテンシャルを期待し、再ブレイクのきっかけを与えようとしている点は抜かりがありません。


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阪神は1日の中日戦から新人の大山悠輔を起用し始め、現在まで打線が上手く機能しています。大山自身の成績は、9月に入ってから打率.189と芳しくありませんが、金本知憲監督の「勝ちながら育てる」戦いは第2段階に入ったと見て良いでしょう。大山の後ろを打つ中谷将大が9月3本塁打と結果を残しているのも、ライバル心に火を点けていることでしょう。投手陣では、29日のヤクルト戦でプロ初勝利を挙げた小野泰己が9日のDeNA戦でも7回無失点の好投と、1つの山を越えました。残すは藤浪晋太郎の復活といったところでしょうか。


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DeNAはここまでアレックス・ラミレス監督の適切な運用により勝率5割ラインを維持してきましたが、残り試合を考えてここから再浮上するには、今季ここまで達成できなかった大型連勝をするような勢いが必要です。ゲーム差なしで読売が迫ってきた以上、今週は負け越すわけにはいきません。従って、投手陣も多少の負荷は覚悟しなければならないでしょう。最低でも3位さえ確保すれば、CSファーストステージで逆転するチャンスは残されています。


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読売も今週はカド番ともいえる日程。先発陣の踏ん張りを最低条件とし、9月に入ってから打率.161と低調な坂本勇人の復調もチームの命運を左右することになるでしょう。8日には岡本和真も昇格してきましたが、今季はファームでもシーズンを通して好調が続かず、過剰な期待は禁物。昨季まで守っていたサードも、今季は公式戦でまったく守備に就いておらず、村田修一の守備固めとしても起用できそうにもありません。こうした点で一軍と二軍の間で連携が取れていたかどうか気になります。


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中日はこの2週間で山井大介、笠原祥太郎、伊藤準規、三ツ間卓也の4人が一軍で先発。今季初勝利を挙げた山井は、12日に2度目の登板機会が与えられました。シーズン閉幕までに4試合もテストすれば、来季の戦力として見込めるかがかなり見えて来ます。その上でドラフト、FA並びに他球団を戦力外になった選手の補強、外国人選手の獲得によってチーム再建のレールを敷くことが球団の命題。昨季は戦力外通告を受けた選手が少なかった分、今季は厳しい目を持つ必要があるでしょう。


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ヤクルトは若手の起用もそれなりに盛んで、今季限りで退任する真中満監督の後任も球団内部からの昇格が有力視されています。もちろん結果を出さないことには一軍に定着はできませんが、経験の少ない選手にとっては、他球団よりも多くチャンスが転がっていることに違いはありません。ファームでの好投が認められ、8日の読売戦で敗戦投手になりながらも自責点0と結果を残した岩橋慶侍、7日のDeNA戦で来日初先発初勝利を挙げたプレストン・ギルメットらは他球団ではもらえなかったであろうチャンスを活かしました。


2週間の個人成績ランキング


OffenceはwRAA(weighted Runs Above Average)+走塁評価、DefenseはUZR(Ultimate Zone Rating)+守備位置補正

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セ・リーグの野手WAR(Wins Above Replacement)のトップは松山竜平(広島)。期間中複数安打を記録したのは6試合、10日の中日戦では1点ビハインドの7回に逆転2ランを放ち、4番の重責を文句なしに果たしました。捕手としてWARで5位に入った坂本誠志郎(阪神)も、8日のDeNA戦で通算2000安打を達成した鳥谷敬を塁上に置いた場面で3ランを放つなど、打撃が一気に開眼したような活躍ぶりでした。Defenseで2位に喰い込んだ柴田竜拓(DeNA)は、二塁手として軽快な動きを見せていましたが、9日の阪神戦では2死満塁のピンチで鳥谷の打球を捕れずチームはサヨナラ負け。バットスイングも鋭さがなくなってきているよう見え、今後は体力面での不安が心配されそうです。


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パ・リーグの野手では、大谷翔平(日本ハム)が8日の西武戦で今季初の1試合2発を記録しましたが、投打二刀流を再開したため打席が減り、WARでは上位にランクインしませんでした。今宮健太(ソフトバンク)は自身最多の13本塁打を記録。今季は打撃の波が少なく、シーズンでのOffence 15.5、OPS.752はキャリアハイを継続中。決して守備だけの選手ではなくなってきました。Defenseで2位の源田壮亮(西武)はこれで3週連続のランクイン。打撃では苦戦しはじめたものの、守備の安定感は高いレベルでキープされています。


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セ・リーグの投手は、期間中3試合に先発したマイコラス(巨人)が投球回、奪三振、FIP、WARでトップを独占。中4日で登板した31日のDeNA戦は、7回無失点の好投も打線の援護なくチームは敗れてしまいましたが、濵口遥大との投げ合いは今季のペナントレースでも屈指の試合でした。失点率0.00の薮田和樹(広島)は、リリーフに回っていた時期の勝ち星と合わせて現在14勝ですが、先発起用となって以降も11勝2敗と抜群の成績で、かつすべての試合で勝ち負けのいずれかが付いています。3年目の今季に一気に成長した投手ですが、勝敗運にも非常に恵まれた年だといえそうです。


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パ・リーグの投手では、2試合連続完投を記録した菊池雄星(西武)が投球回、失点率、WARの三部門でトップ。二段モーションのトラブルに見舞われた後、春先のフォームに戻して完全に復調。この対応力でさらに株が上がりました。登板数では、年間最多セーブ記録を更新したサファテとはじめ、岩嵜翔とリバン・モイネロ(いずれもソフトバンク)らも連投に耐えチームの勝利に貢献。優勝が決まれば骨休みの期間を与えるでしょうが、間隔が空き過ぎても良くないという声もあり、ポストシーズンに向けてどんな調整を行うかが注目されます。



高多 薪吾 @hausmlb
個人サイトにて独自で考案したスタッツなどを紹介するほか、DELTAが配信するメールマガジンで記事を執筆。 投手の運用に関する考察を積極的に行っている。ファンタジーベースボールフリーク。
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