• 1.02 Column


2019年春・夏の甲子園のほか、U-18W杯など高校の舞台で鮮烈な投球を見せ続けた奥川恭伸。昨年のドラフトでは3球団競合の末、ヤクルトに入団することになった。1月の新人合同自主トレで故障し調整が遅れていたが、開幕が延期となったことで早い段階での一軍登板が期待できそうだ。今回はDELTAアナリストの山崎和音氏が、奥川について、MLBのスカウトが評価に用いる20-80スケールでのリポートを作成した。

選手プロフィール


名前:奥川 恭伸(おくがわ やすのぶ)
生年月日:2001年4月16日
投/打:右/右
身長:184cm
体重:82kg
経歴:星稜高校-ヤクルト(2019年ドラフト1巡目)
現地観戦日:2018年11月13日、2019年9月6日

体格及びメカニクス


体格は184cm、82kgと理想的な先発投手に比べると一回り小柄だ。年齢のわりに身体的には完成品に近く、今後大きな身体的な成長は見込めないだろう。ずば抜けた身体能力はマウンド上での重心のブレの少なさやリリースポイントの安定に生かされており、これは特筆に値するレベルにある。

投球は常にセットポジションから行う。膝をベルトよりやや高い位置まで上げ、下半身の重心を落とし体重移動を行う。アメリカでドロップ&ドライブと呼ばれる種類のフォームだ。腕の角度はスリークォーター。アームスピードは平均を大きく上回る。肉眼で見る限り、メカニクスは全体的に非常にスムーズで効果的に見える。


速球


私が観戦した試合では、ストレートは145~148km/hほどで、最速は150km/hを記録していた。伸びは高校生平均を大きく上回っており、アームサイドに2シーム気味に動くこともある。制球はまとまっており、現時点でプロ平均を上回るといっていいだろう。時折高めに浮いた失投を痛打される場面も見受けられたが、その点を考慮にいれたとしても将来的にはプロレベルで投球の軸として問題なく使える球種だ。


将来のグレード:70
 

スライダー


この球種は基本的な球速帯としては124~127km/h程度だが、最速は130km/h、遅いものは120km/hを下回るものもある。遅いものはカーブと呼んでもいいかもしれないが、ここではすべてスライダーとして統一する。

軌道は基本的には、打者から見て時計の針の11時から5時方向に曲がるが、場合によってはもう少し縦に落ちるような変化も見せる。これは軌道が不安定なわけではなく、意図的に変えているように見える。まだ10代の選手としては驚くべき能力だ。変化量はどちらの場合も平均以上で、奥行き(打者が見てどれだけ近くで曲がりはじめるか)も十分。高校レベルでは頭一つどころか二つか三つ抜けた球種だ。U-18W杯のカナダ戦では主に速球とスライダーだけで18三振を奪った。加えて、どのカウントでもストライクをとれるので、スライダーで追い込み、速球で仕留めるという組み立てもできる。一軍レベルにおいても十分に武器となる球種だ。


将来のグレード:70
 

フォーク


上記のように高校ではほぼ速球とスライダーだけで支配的な投球ができていたため、あまり多く投げる場面は見られなかった。しかし、フォークを投げた際はしっかりとスピンを殺して低め、たいていの場合はワンバウンドさせて空振りを奪う能力の片鱗は感じられた。球速は130キロ台中盤。一軍レベルにおいて第3の球種として通用するだろう。評価は控えめに60としたが、将来的に70にまで成長しても不思議ではない。


将来のグレード:60

チェンジアップ


速球、スライダー、フォークの完成度が高いため、投球の組み立てにおいてそこまで重要な球種にはなっていない。ただ第2のオフスピードピッチ(スピードを抜く系の球種)として、打者の脳裏にフォークとは少し違った軌道を植え付けるには十分だ。球速はフォークより2~3kmh/hほど遅い。


将来のグレード:50

総合評価


史上最高に完成度の高い高校生投手の1人であることに疑いの余地はない。速球、スライダー、制球力ともに現時点でプロ平均かあるいはそれ以上のものがある。中6日でシーズンを投げ切る能力があるかどうかはともかく、1試合単位で見れば一軍のローテーション投手と比較しても遜色ないだろう。

ただし、完成度の高さは裏を返せば伸びしろに欠けることを意味する。この点で言えば、通常の高校生投手よりはむしろ即戦力の大学生や社会人に近い。恐らく高確率で一軍ローテーションの上位投手として活躍するだろうが、球史に名を残す圧倒的なエースに成長することは期待しがたい(ただし、その可能性を完全に否定することはできない)。

また、高校時代の酷使による怪我のリスクも忘れてはならない。ただ、20代を通して比較的健康で過ごせれば、NPBどころか将来的にはMLBにおいても上位チームのローテーション2~3番手が務まる才能の持ち主だ。


現実的なシナリオ:60(上位チームのローテーション1~2番手)
OFP(非常にうまくいった場合のシナリオ):70(両リーグでトップ3の先発投手)


山崎 和音@Kazuto_Yamazaki
バイリンガルに活動するライター。1.02以外にもBeyond the Box Score や、 Baseball Prospectus といったウェブサイトに寄稿。 BP Anuall 2018では日本野球に関するチャプターを執筆。セイバーメトリクス的視点からだけではなく、従来のスカウティングを駆使した分析もする。趣味のギターの腕前はリプレイスメント・レベル。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocketに追加
  • LINEにおくる

  • 関連記事

  • 山崎 和音の関連記事

  • ピックアップ

  • アーカイブ

執筆者から探す

月別に探す

もっと見る