各球団、現在は来季に向けて補強を具体的に検討している最中だろう。数ある補強チャンネルの中でも今年はFA市場に注目が集まる。権利行使可能な選手の陣容が例年以上に豪華であるためだ。先日は、それら選手たちにどの程度の価値があるのかを客観的に測る
“FA選手ランキング”を作成した。
ただこれはあくまでフラットな視点での評価。当然ながら球団によって状況は異なる。本企画では各球団の状況を踏まえた上で、どの選手の獲得に動くべきか検討を行っていく。そしてその検討も2パターンを用意した。1つは無制限に資金があることを前提とした「理想的なシナリオ」、もう1つは各球団の予算を踏まえた「現実的なシナリオ」である。今回はロッテ編だ。
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オリックス、ソフトバンク、西武、楽天、ロッテ、日本ハム
野手のニーズを確認
まず総合指標WAR(Wins Above Replacement)をポジション別に見ることで、野手の現状戦力を確認しよう。WARは2.0がリーグ平均という目安で見てほしい。0.0がリプレイスメント・レベル(代替可能選手)だ。
今季のロッテで弱点になっていたポジションは、捕手、遊撃、右翼、そして指名打者だ。
大きな弱点と認識したいのは遊撃手だ。遊撃はドラフトや外国人選手など、球団が数多くの補強を試みてきたポジションだが、いまだ解決には至っていない。FA市場にそうした人材がいるのであれば是非とも獲得を試みたい。好選手が獲得できればチーム力は格段に向上するはずだ。
捕手についても優先度が高い。今季は高卒新人・松川虎生の活躍が注目された。ただ松川の活躍は新人にしては優秀だったかもしれないが、一軍レベルとしてはまだまだだ。松川含むチーム捕手全体のOPSは.489。これは12球団ワーストの値である。田村龍弘の残留が決定したものの依然として選手層は薄く、上積みの余地は大きい。
また外野も大きな弱点と考えられる。今季は、ここ数年右翼で違いを作っていたレオネス・マーティンが不振に陥り、右翼が大きな穴となった。また左翼を強みにたらしめている荻野貴司は既に37歳。このレベルの働きを今後も期待しつづけるのは難しそうだ。外野手の補強は非常に大きな効果をもたらしそうだ。指名打者でも起用できるような打力のある選手であればより望ましい。
他に、今オフは二塁の中村奨吾がFA権を取得していたため退団の危機があった。しかし11月4日に球団は中村の残留を発表。退団となっていれば新たに大きな弱点が生まれていた可能性が高いだけに、この動きは非常に大きい。契約の詳細は不明だが、ひとまず来季二塁が弱点となる見込みは小さくなった。
野手まとめ:補強ポイントは遊撃、捕手、外野。どれも優先順位は高い
今季ロッテの投手WARは19.9。この値はリーグ5位だが、オリックス以外の5球団とは大差ない。それほど優れてもいないが劣ってもいない投手陣と見るべきだろう。ただ先発WARは16.2でオリックスに次ぐリーグ2位。先発の分野ではやや優位に立っている。
2022年パ・リーグ投手WAR
球団 |
先発 |
救援 |
投手全体 |
オリックス |
22.0 |
5.8 |
27.8 |
ソフトバンク |
14.5 |
6.3 |
20.8 |
西武 |
14.5 |
5.6 |
20.2 |
日本ハム |
16.1 |
3.4 |
19.9 |
ロッテ |
16.2 |
3.7 |
19.9 |
楽天 |
12.0 |
6.0 |
18.2 |
しかし投手、特に先発投手についての補強の余地は、WARのみで状況を判断すべきではない。補強効果はいかに上積みを作れるかである。例えば先発1番手から5番手までエース級を揃えた投手力に秀でたチームでも、6番手が貧弱であれば先発の補強効果は大きい。
それを把握するため、具体的に来季の予測をベースにした以下の表で、先発の陣容を確認しよう。こうして見ると、やはり佐々木朗希はチーム内で図抜けたWAR4.5が予測されている。それ以外は平均レベルだが、ローテーション当落線上まで一定のレベルにある投手を配置することができている。6番手以降が特別弱い構成ではないため、先発補強の効果は特別大きくはならないだろう。
救援については今季WAR3.7と苦しんだ。またこのうちタイロン・ゲレーロがWAR1.3、ロベルト・オスナがWAR1.2と外国人投手への依存が大きい。もし来季契約ができなければ大きな弱点となる可能性がある。ただ救援については先発の余剰戦力を回すことによっても補充は可能だ。救援補強のために先発を補強するという手もありかもしれない。
投手まとめ:先発は十分だが、救援戦力強化のための先発強化もあり
ここまでチームのニーズを確認してきたが、それに当てはまる選手が市場にいるかどうかはまた別の話だ。今オフ市場に出る可能性がある中で、ロッテのニーズに応えられる選手はいるだろうか。まずは予算を気にせず考えてみよう。
最優先で取り組みたいのは森友哉(西武)の獲得だ。前述のとおり、ロッテ捕手の打力は12球団ワースト。打力だけで考えた場合、森の移籍による最も大きな上積みが期待できそうなのがロッテだ。また森を獲得したといえど捕手での全試合出場は負担が大きい。時には休養のため指名打者での出場も必要になるだろう。その指名打者についても弱点となっているのがロッテだ。捕手以外で起用する際にもチームに上積みをもたらせそうだ。松川が将来大成する保証はない。獲得に躊躇すべき状況ではないように思える。
森同様、獲得できれば理想的なのが近藤健介(日本ハム)だ。今後荻野が衰えていくことを考えると、外野手は中長期的に計算しづらい。近藤はまだ29歳と若いこともあり、長期的にレギュラークラスの成績を維持することが予想されている。また指名打者としての起用に足る打撃型の選手である点もロッテにとって魅力だ。近藤獲得が難しい場合、同じく外野手の西川遥輝(楽天)獲得も視野に入れたい。
また今オフは弱点の遊撃手に当てはまる、今宮健太(ソフトバンク)も実は市場に出る可能性がある。ロッテにとって上積みが期待できる人材だ。ただ今宮は既に31歳。遊撃レギュラーとして稼働できるのはあと数年だろう。現在の弱点に当てはまるが、中長期的な稼働が期待しづらいという点で優先度はやや低く見るべきかもしれない。
2022年オフにおけるロッテのFA補強優先度(理想)
- 1.森友哉
- 2.近藤健介
- 3.(近藤の獲得が難しいなら)西川遥輝
- 4.今宮健太
現実的なシナリオ
ただこれまで述べたのはあくまでも理想的なシナリオ。予算の都合から全選手の獲得は難しいだろう。今オフのロッテにはどれほど予算の余裕があるだろうか。DELTA独自の年俸予測システムから、ロッテの2023年総年俸がどれほどになるかを推定してみよう。
これで見るとロッテの総年俸予想は28.1億円。ただこれは既に退団濃厚なブランドン・レアード(推定3億2000万円)、マーティン(推定2億円)を含んだ値である。彼らの退団を想定すると、7億円ほどの空きが出そうだ。もし外国人選手補強予算を回すことができるなら、目玉選手の獲得にも動けるはず。そうでなくてもFA選手獲得に一定の予算は確保できそうだ。
7億円級の予算が確保できる場合、森か近藤の獲得に積極的に動くべきだ。2選手は新外国人選手よりも、はるかに高い確度での活躍が期待できる。新外国人獲得の予算を回してでも契約を狙いたい。それほどの予算を回せない場合でも、西川の獲得であれば十分視野に入るのではないだろうか。球団のニーズ、実際市場に出る選手、予算から考慮して、今オフは積極的に動くべきタイミングに思える。
2022年オフにおけるロッテの現実的なFA補強
- 1.森友哉or近藤健介
- 2.(2人との契約が難しい場合)西川遥輝
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- ヤクルト、DeNA、阪神、読売、広島、中日
オリックス、ソフトバンク、西武、楽天、ロッテ、日本ハム