現在のNPBにおいて先発投手は中6日の間隔で100球程度を投げるのが基本となっている。しかし、それが日程の都合から中7日になったり、シーズン終盤には中4・5日となることもある。こうした普段と異なる起用法で成績は変化するのだろうか。また、前回登板での投球数が投手のパフォーマンスに与える影響についても、諸説入り乱れている。客観的なデータで見た場合、こういった要素はどれほどの影響力をもっているのだろうか。

MLBでの研究について


まず登板間隔と成績の関係については、すでにMLBでの記録をもとにした研究が行われている。1999年から2002年までに少なくとも800打者と対戦し、そのうち少なくとも600打者とは先発投手として対戦した投手209名を対象にして、登板間隔ごとの被wOBA(weighted On Base Average)を調べたものである(ただし、対戦打者数が18人未満の登板は除いている)。これによると以下のような結果が出ている[1]


・中3日での先発登板は113試合あり、これらの試合の被wOBAは.369。これと同じ投手の中4日での先発登板でのwOBAは.352。
・中5日での先発登板は4456試合あり、これらの試合での被wOBAは.346。これと同じ投手の中4日での被wOBAは.350。
・中6日での先発登板は645試合あり、これらの試合の被wOBAは.355。これと同じ投手の中5日での被wOBAは.346。


このようにMLBでの研究によれば、中4日に比べると中3日の方が投手の能力から想定されるよりも悪い成績に、中4日に比べると中5日の方が良い成績となる傾向があるようだ。逆に中6日にするとむしろ成績は悪化する傾向があるようだ。この研究からすると、登板間隔は中5日が最も良い成績となるということになる[2]。ただし、これは中4日を基本的な登板間隔とし、1登板当たりの投球数もNPBより少なく、1シーズンの試合数はNPBより多いMLBでの結果であるということは、留意する必要がある。



NPBでの先発投手の登板間隔と投球数の傾向


検証に入る前に、NPBでの先発投手の登板間隔と投球数の傾向を確認しておく。ここでは2017年から2020年までの両リーグの全試合の先発投手の登板間隔を整理した(表1)。

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中10日以上の登板間隔は、一度登録抹消を挟んでいるケースがあると考えられることからひとまとめにし、前回の登板が救援登板の場合は別枠(例えば、救援登板の3日後に先発したとしても、「中2日」には含めていない)とした。

シーズン初登板と前回が救援登板だった場合を除くと、全体の60%近くが中6日での登板となっており、中5日や中7日の登板はそれぞれ10%に満たない。また、中4日の登板も2017-20年のNPBではわずか25回。0.5%もない。このため、中4日についてはサンプルサイズが小さすぎると考えるため、今回の検証の結果、出てきた数字をそのまま信じるのは危険だろう。

また、それぞれの登板間隔での、平均投球数、前回登板での平均投球数、平均対戦打者数をまとめてみた(表2)。

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中5日から中9日まではほぼ100球程度が平均投球数となっている。対戦打者数も平均すると25人程度、平均的な被出塁数であれば、だいたい6回を投げきった当たりで交代する計算だ。中10日以上では平均投球数、平均対戦打者数ともにやや減少しているが、これはいったん登録抹消されてから登板するような能力がやや劣る投手の割合が大きいことが原因と思われる。初登板についても同じような傾向が見られるが、これもやや劣るゆえに2度目以降の先発機会が与えられなかった投手が含まれていることが原因と思われる。

また、中4日以下での投球数を見ていくと、概ね中5日以上よりは少なくなっていく傾向が見られるが、中1日と中2日を除くとそこまで大きな変化は見られない。中3日や中4日では、対戦打者数の平均が中5日以上と比べ2人ほど減っており、5回程度での降板が増えている様子もうかがわれる。前回登板時の平均投球数を比べると、中6日から登板間隔が短くなるにつれて、前回登板時の平均投球数が下がっていることがわかる。次回の登板間隔が中6日よりも短い場合には、少ない投球数で交代させる傾向がうかがわれる。中3日や中2日では前回登板時の平均投球数が50球から60球、中1日では20球程度となっているが、これはオープナーやショートスターターでの起用や、極めて早いイニングで降板した場合に、短い登板間隔で先発起用された場合が含まれていると思われる。



先発投手の登板間隔と成績の関係


では、ここから登板間隔と成績の関係を見ていく(表3)。検証にはwOBAを用いることにした。数値が高いほど、より打たれているということになる。赤くなっているほど投手にとってよい結果だ。

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先発回数が少ないものの、登板間隔が短い方が打たれづらい傾向があり、中5日から中7日では平均的、中8日以上の登板間隔や初登板、前回登板が救援登板だった場合には打たれやすい傾向があるように見える。しかし、この結果だけから、登板間隔は短い方が良い成績を残せるということはできない。なぜならば、優秀な投手ほどより多くの登板機会を与えられるためだ。登板間隔が短いほど優秀な投手が登板していることが増えるとすれば、登板間隔が短いほど打たれづらい傾向があるとしても、それは単に投げている投手が優秀なことが多いということであり、登板間隔を短くしたことと成績との間に関係はないかもしれない。

そこで、こうした登板した投手の能力の影響を取り除くため、登板した投手の被wOBAの平均とそれぞれの登板間隔での被wOBAの平均とを比較してみた(表4)。投手本来の能力と比較して、登板間隔が短いほど成績が良くなる傾向があるのであれば、登板間隔は短い方が良い成績を残せるということができるだろう。

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登板間隔が中10日以上の投手の平均被wOBAは.336、シーズン初登板の投手の平均被wOBAは.345、前回登板が救援登板だった投手の平均被wOBAは.342といずれもリーグ平均より悪い成績となっている。平均投球数のところでも述べたが、これらの区分では、平均よりやや劣る投手が登板していることが多いと考えられる。中5日から中9日の間では、被wOBAは.320程とわずかながら平均よりも優秀な成績になっている。中4日以下では登板機会自体が少なすぎるため、一貫した傾向は見られないが、中4日で登板する投手は平均よりも優秀であることが多いとはいえそうだ。

このように投手本来の能力と比較すると、表3を登板間隔が短いほど打たれにくいと読み取るのは間違いで、登板回数が少ない一部の場合を除き、登板した投手の能力から想定される結果とほぼ変わらない成績を残しているといえる。

中8日では登板した投手の平均より.020ほど高い被wOBAとなっているが、中9日や中10日ではこのような結果は見られず、登板間隔が空きすぎると成績が悪化するという傾向も特に見いだせない。

中4日では、登板した投手の平均被wOBAより.036ほど低い被wOBAとなっているが、上でも述べたようにこの間では中4日での登板は25回しかないため、この結果から中4日の方が成績が良くなる傾向があると断定はできない。

また、初登板では登板した投手の平均被wOBAより.010ほど低い被wOBAとなっている。この記事のテーマとは外れるが、初対戦時の投手は、本来の投手の能力と比較して打たれづらいという傾向があるようだ。

こうした結果からすると、あまり収穫はなかったようにも思われるが、1つ言えることがある。それは、中5日から中7日の範囲では、成績にはほとんど変化がないということだ。中6日を基本とする登板間隔が1日ほど前後したとしても、投手のパフォーマンスにはほとんど影響はない。現在のNPBでは月曜日が移動日となり、火曜日から日曜日まで3連戦を2回行う日程が基本となっているが、雨天中止や祝祭日に合わせて基本的な日程が崩れた場合に、登板間隔を1日ずらす程度の起用ならば、あまり神経質にならなくても良いように思われる。

また、登板間隔ごとのストレートの平均球速の差についても、同様の手法で比べてみた(表5)。

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登板回数が極端に少ない中3日以下の場合を除くと、ストレートの平均球速は0.5km/hも変わりがない。この結果からも、登板間隔の多少のずれは投手のパフォーマンスにほとんど影響を与えないといえる。


前回登板での投球数と成績の関係


次に前回登板での投球数と成績との関係を見ていく。前回登板での投球数が多いと十分な回復ができずに成績が悪化する傾向があるだろうか。ここでは、前回登板での投球数を10球ごとに区分して被wOBAを比べてみた(表6)。なお、前回登板が存在しないシーズン初登板の場合、性質が異なると思われる前回登板が救援登板の場合、一度登録抹消を経ていることが多数の中10日以上の場合、登板数自体が少ない中4日以下の場合は除いた。

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100-109球をピークにそれよりも投球数が増えても減っても徐々に登板回数が減っている。平均被wOBAを見ると前回登板時の投球数が多いほど、被wOBAが低くなる傾向が見られるが、登板した投手の平均被wOBAも同様の傾向が見られる。これは、単純に優秀な投手ほど長いイニングになっても、投球数が増えても降板をさせない傾向があるということだ。前回登板時の投球数が100球以上になると投手本来の能力に比べて、打たれやすくなっているようにも思われるが、100球以降は登板した投手との平均被wOBAの差は少しずつ小さくなり、140球以上では逆転していることからすると、前回登板での投球数が増えるほど打たれやすくなるとは断定できない。90-99球まででは、その差が.000なのに対して、100-109球では-.006となっているが、そこまで大きな差ではなく、前回登板での投球数が投手のパフォーマンスに影響を与えているかどうかは判然としない。

登板間隔の違いが影響を与えていることも考えられるため、中6日での登板に限定して同様の比較を行ってみた(表7)。

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概ね中5日から中9日までの成績を合わせた結果と変わらない。前回登板時の投球数が増えるほど、成績が悪化する傾向は見られない。90-99球と比較すると100-109球の方が成績は悪いが、80-89球と90-99球とを比較すると90-99球の方が成績が良い。さらに、100球以上は前回登板時の投球数が増えるにしたがって、徐々に成績が良くなる傾向がある。

念のため、ストレートの平均球速についても同様に比較してみる(表8、9)。

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ストレートの平均球速を見ても、回数自体が極端に少ない場合を除くと、その差は0.1km/h程度で変化は見られない。

以上のような結果からすると、前回登板時の投球数も投手のパフォーマンスにほとんど影響を与えていないと考えられる。


まとめ


以上の結果からすると、登板間隔や前回登板時の投球数は投手のパフォーマンスにほとんど影響を与えないということがわかった。日程が許せば、優秀な先発投手になるべく多くの登板機会を配分するために、登板間隔を中6日よりも短くするという起用はそれなりに合理的といえるだろう。

ただし、これは中6日での起用が約6割(中6日以上とすると9割超)である現在のNPBの起用を前提とした結果であるので、それ以外の環境でも当てはまる保障はない(現にMLBを対象とした先行研究とは結果が異なる)。また、今回の検証はあくまで短期的なパフォーマンスの変化が見られなかったということであり、中長期的に短い登板間隔、多い投球数での起用を繰り返した場合もパフォーマンスに影響がないかどうかは明らかではない[3]

中長期的な影響については、今後も検証を続け、投手が能力を発揮しつつ、酷使による故障やパフォーマンスの低下を防止するための研究を進展させる必要があるだろう。


[1]Tom,M.Tango.,Mitchel,G.Lichtman.,&Andrew,E.Dolphin. The Book:Playing the pecentages in baseball.(TMA Press,2006),192-195

[2]もっとも、同書では、中5日にすると6人でローテーションを組むことになり、中4日と比べると能力の劣る投手の登板が増えるため、中4日が最適な起用法と結論づけている。

[3]今回の検証の結果は、短期的な成績の変化を見ても、酷使の影響があるのかないのか、それがどの程度なのかを把握することは困難だということも示している。投手が発揮するパフォーマンスを最大化させつつ、そのパフォーマンスの高さをできるだけ持続させるために、投球数や登板間隔の管理が行われているが、なかなか明確な根拠を示せない状況は今後もしばらく続くだろう。

投球制限に懐疑的な人たちからは「100球という数字に根拠はない」などとしばしば言われるが、それはある意味正しく、今回の結果は図らずもそうした人たちの後押しにも使い得るものとなった。しかし、これまでに述べたとおり、今回の結果は前回登板からの影響という極短期的な結果を示しているに過ぎない。酷使による故障やパフォーマンスの低下がしばしば不可逆的だということを考えると、短期的にはパフォーマンスの低下がない以上は問題なしと安易に考えるべきでないと考える。


市川 博久/弁護士 @89yodan
DELTAデータアナリストを務める弁護士。学生時代、知人が書いていた野球の戦術に関する学術論文を読み、分析に興味を持つ。 その後『マネー・ボール』やDELTAアナリストらが執筆したリポートを参考に自らも様々な考察を開始。『デルタ・ベースボール・リポート3』などリポートシリーズにも寄稿。動画配信サービスDAZNの「野球ラボ」への出演やパシフィックリーグマーケティング株式会社主催の「パ・リーグ×パーソル ベースボール データハッカソン」などへのゲスト出演歴も。球界の法制度に対しても数多くのコラムで意見を発信している。

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