• 1.02 Column



開幕から深刻な不振に苦しんでいる読売・長野久義。4月の半ばからはスタメン落ちすることも多くなり、いまだ復調の気配は見えてこない。データを分析し、彼の打撃に何が起こっているのか、どのあたりが変わってくれば調子が上向きと判断すべきなのか、ポイントを探った。

長野の状態は、どう判断すべきなのか


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これは、4月30日の時点で50打席に到達した打者の昨季(2016年)と今季(2017年)のwOBA(weighted On-Base Average)を、それぞれ横軸と縦軸にプロットしたものになります。プロットと赤いラインが重なれば昨季と今季のwOBAが同じ、ラインより上にあれば今季は昨季よりwOBAが高い、下にあれば昨季よりwOBAが低いということになります。

一般的に、開幕からしばらくの十分な打席数を重ねていない期間は極端な成績が出るものです。序盤は例年より極端に悪い数字を記録していた選手が、打席を重ねるうちにあっさりと本来の数字に戻していたといったこともよくあります。逆に、いつか戻すだろうと起用され続けながらも数字が改善せず、チームに与えた損失を取り返せないままシーズンを終える選手もいます。この時期、成績の上がってこない選手を起用し続けるかどうかの判断は重要です。

プロットが赤いラインよりはるか下に位置しており、今季のwOBAが昨季よりも低い状況にある長野久義(読売)をサンプルに打撃内容を検証し、彼の打撃に何が起こっているのか、どのあたりが変わってくれば調子が上向きと判断すべきなのか、ポイントを探ってみたいと思います。


「不運」により成績が下がっているわけではない


まず、長野の昨季と今季の打撃成績を比較してみたいと思います。


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目を引くのは、K%(三振/打席)が12.6%から27.9%へと大幅に増加している点です。4打席に1回の三振は見過ごせない数字です。

次に、どういった打球を放っているかを見ると、昨季よりもGB%(ゴロ率:ゴロ/打球)が51.3%から61.4%へと増加し、その分FB%(フライ率:フライ/打球)が減少しています。また、ゴロについては、GBOut%(ゴロアウト率:ゴロアウト/ゴロ)が75.1%から70.4%へと減少しています。

開幕直後など打席数が少ないうちは、打球が続けて野手の正面に飛ぶといった偶発的な現象でアウト率が高くなることは起こりがちです。これがだんだんとリーグ平均並みのアウト率に近づいていき、それにあわせて打撃成績も改善するというパターンは見かけます。しかし長野の場合、ゴロアウト率はむしろ今季の方が低く、ゴロはよくヒットになっています。アウト率の数字が落ち着いて、成績が改善していくということはあまり期待できそうもありません。

フライについては、OFOut%(外野フライアウト率:外野フライアウト/外野フライ)が昨季より今季のほうが高くなっています。IFFB%(内野フライ率:内野フライ/全フライ)も高くなっており、打球が上がったとしても距離が出ていない様子がうかがえます。

図2に昨季と今季のフライとライナーがどのあたりに飛んだか、その分布を示します。


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今季の打球を表すオレンジのプロットは外野後方へ飛んでいるものが少なく、打球の距離が出ていないのがわかります。特に昨季多く見られた長野特有の右中間深くへの当たりが今季はまだ出ておらず、自身のヒットゾーンを失っている状態もしれません。


スイングするべきか、しないべきか。その判断に狂いの兆候


次に打球が生まれる前段階、打席でどういったアプローチを見せているかを遡りたいと思います。


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スイング率(スイング/投球)は昨季と今季で大きく変わっていませんが、内訳が変化しています。ボールゾーンでのスイング率が34.8%から39.1%へ増加し、ストライクゾーンでのスイング率が70.5%から63.1%へ減少しています。当然ながら、ヒットになる可能性は高いのはストライクゾーンへの投球です。つまり、スイング率からは「手を出すべき投球に手を出さず、手を出すべきではない投球に手を出している」ことがうかがわれます。このスイングの問題と関連して、空振り率(空振り/全投球)とボールゾーンのコンタクト率(バットにボールが当たったケース/スイング)も減少しています。

これらのデータからは、投球に対し手を出すべきかどうかの判断に問題がでているのではないかと考えられます。


左投手の落ちる球、右投手は外のボールへの見極めに問題あり


球種に対しどんな対応をしているのかをまとめ、図3と図4に示します。


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左右の投手で傾向が異なり、左投手に対しては低めの落ちる球、また曲がる球に空振りしているのが目立ちます。一方、右投手に対しては、外角へのボール球に対して多くスイングしてしまっていることが確認できます。

先日、テレビの解説で江本孟紀氏が長野に対し「外角のボールの見極めに問題がある」と指摘していました。図4の結果はまさにその指摘どおりの結果になっています。こうしたスイング、見極めの傾向が、打撃不振の原因となっている可能性はあるかもしれません。

阪神と広島にこれ以上引き離されたくはないであろう局面にある読売首脳陣は、長野をどのように使っていくのでしょうか? 5月10日の阪神戦では今季打球を飛ばすことができていなかった右中間に本塁打を放つなど復調の気配も感じさせていますが、本来の打撃を取り戻すことはできるのでしょうか?



Student @Student_murmur
個人サイトにて分析・執筆活動を行うほか、DELTAが配信するメールマガジンで記事を執筆。 BABIP関連、また打球情報を用いた分析などを展開。2017年3月に[プロ野球でわかる!]はじめての統計学 を出版。
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