• 1.02 Column



今季も圧倒的な強さで広島がセ・リーグを制した。終盤主砲・鈴木誠也を故障で欠いたものの、代わりに4番を務めた松山竜平が活躍し、攻撃力の低下を抑えた。今回は鈴木の穴をどういった形で埋めたか、また本当に鈴木の離脱はそれほどの影響を与えなかったのかを検証する。

広島打線における鈴木誠也の位置づけ


鈴木が広島打線にとってどれだけ重要な選手だったのかを今更語る必要はないのかもしれませんが、損失というものをわかりやすくするために、数値化することには意味があると思います。打撃の質と量を表す指標としてwOBA(weighted On-Base Average)と打席数を図1に示します。各打者の棒の高さがwOBAを、幅が打席数を示しています。打撃面での質と量における貢献を視覚化したものです。


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この図から鈴木の成績を見ると、故障と打順の問題で上位3人に比べると打席が少ないものの、wOBAは広島の中でもトップクラスと離脱の直前まで主軸の活躍をしていたといえます。これほどの打者が抜けるのですからリーグ終盤で優勝が視野に入っていたとはいえ、その影響は小さいものではなかったでしょう。


リーグ終盤の広島の得失点の推移とマジックの減少


私たちは、すでに鈴木離脱の穴は松山をはじめとする他の打者の活躍によって埋められたことを知っています。まずは、これをデータで追いかけてみたいと思います。以下の図2には、8月以降の広島の前後2試合を含む5試合の平均得点と失点、そして優勝マジックの推移を示します。


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図中のグレーの範囲の部分が、鈴木が離脱してから優勝が決まるまでの期間です。さて、鈴木の離脱後チームにどのような変化が起きたかというと、離脱して数試合してからチームの得点が減少しはじめます。あわせて優勝マジックも消えてしまいます。しかし、9月に入ると底を抜け出し、得点は離脱前の水準まで戻します。そしてマジックも再度点灯し、そのまま優勝へと向かいます。


チームの得点と打者の個人成績の変化


こうした広島のチームの得点の推移に同期して、打者個人のwOBAの推移を見ていきたいと思います。最初に見るのは、松山、安部友裕、會澤翼、丸佳浩の4選手です。データを以下の図3に示します。


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松山、安部、會澤の3人は、鈴木離脱後に減少した得点が、底を抜けて再度増加する際にwOBAが上昇していることを確認できます。丸はこの3人からは少し遅れて、落ちたwOBAを元の水準まで戻しています。

以下の図4に示す、田中、新井は一定の水準をキープしていたといえます。


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一方、以下の図5に示す菊池、エルドレッドは調子を落としています。

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以上の打者の成績を見ると、鈴木離脱後には松山の活躍がクローズアップされていますが、他にも安部や會澤、少し遅れて丸の活躍があることが確認できます。こうした選手の活躍が、一度落ちた得点力を再び取り戻し、優勝へとつながる原動力になったといえるのではないでしょうか。


鈴木離脱の影響は本当になかったか


ここまで示したように、鈴木の離脱を期に減少した得点を、松山らの活躍によって穴埋めしています。しかし、離脱の影響は本当に大きくなかったのでしょうか。これを調べるために、2017年広島の試合の得点差を表にしました。データを以下の表1に示します。


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2017年のシーズンを、開幕から交流戦前まで、交流戦、交流戦後から鈴木離脱前まで、鈴木離脱から優勝決定まで、優勝決定後と5つの時期に分けて試合ごとの得点差を求めています。勝った試合は得点差がプラスに、負けた試合の得点差はマイナスとなります。

このデータから、鈴木の離脱期間は、それまであった+5点以上の得点差をつけての勝利、つまり大差での勝利が減少し、得点差が+1の僅差での勝利が増えていることがわかります。これがすべて鈴木の離脱が原因とまでは言えませんが、それでも打撃の主軸が離脱した影響を受けた結果といえると思います。


たらればを少し


鈴木の離脱の穴は、松山らが埋めたと見られてはいますが、違う角度から見れば、やはり離脱の影響が表れていたと見ることができます。こうした離脱の影響があまり取り沙汰されなかったのは、松山らの活躍が目立ちすぎたと考えることができないでしょうか。そのため鈴木離脱の影響が過小評価された可能性もあるのではないかということです。

そして、最終的にこの離脱の影響が露呈したのがCSだったと見ることも可能です。「離脱→補完」の流れが、少々上手くいきすぎた感があり、CSで手痛いしっぺ返しを食らった形のように感じられるわけです。

さて、すでに起こってしまったことに“たられば”をいっても仕方がありませんが、今後同じような状況に陥るチームが出てくる可能性はあります。そうした将来のためと考えると“たられば”にも意味があります。あえて“たられば”を言わせてもらえれば、「もう少し得点減に苦しむ期間が長かったほうが良かったかもしれない」と思いました。貯金を吐き出してでももう少し苦労して、その中で投手を中心に少ない得点で勝ちきるパターンを構築してCSに臨むことができればというものです。

あくまで“たられば”の話で、うまくいく保証もありません。そして当然ながら実際に打った松山らが悪いわけではありません。しかし代替選手の活躍を期待するという策以外に、思い切ってチームの方向性を変えるという策も今後同じような状況になったチームの選択肢としてはあると思います。

いずれにせよ、すでに終わった2017年の結果を変えることはできません。長いBクラストンネルを抜けてからは、初めてのCS出場、昨年のリーグ制覇と、ここ最近はずっと追い風の中を駆け上っていた広島にとっては、久しぶりの敗北感だったのではないでしょうか。今年の結果を、高い授業料ではあったが役には立ったといえるような2018年になることを期待します。





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