• 1.02 Column


はじめに



ストーブリーグが始まってすぐ、早速、日本ハム‐巨人間での吉川光夫投手と石川慎吾外野手、大田泰示外野手と公文克彦投手との2対2の交換トレードが成立したというニュースが飛び込んできました。


この中で特に実績があるのは吉川投手で、2012年には最優秀防御率とパ・リーグMVPを獲得しています。NPBのトレードでこれほど実績のある投手が出てくるのは稀なのですが、日本ハムの場合、糸井嘉男選手をトレードで放出したという前例があるので、「またやったか」と思った人もいるかもしれません。


ところで、日本ハムの場合、実績のある投手を放出したといっても、感情的になって追い出したわけなく、ある程度の見通しを持って放出した可能性が高いと考えられます。それを吉川投手のデータや日本ハムの投手事情から読み取ることはできないだろうか、というのが今回のテーマです。





吉川投手のキャリア



最初に、吉川投手の2016年までのキャリアをまとめたものを以下の表1に示します。



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吉川投手のキャリアハイはタイトルを獲得した2012年になりますが、2011年と2012年は低反発球による投高打低の時代で、2013年以降とは事情が異なります。したがって、吉川投手の現状を判断するには2013年以降の成績を見たほうがよいでしょう。





吉川投手の特徴



次に、吉川投手の特徴を、打者1人あたりに対する三振、四球、HRのデータを表2に示します。



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2013年は平均並みだった三振/打者の値は2014年以降、平均よりも少なくなっています。四球/打者は平均並みの8%台のシーズンと少し多い10%のシーズンが交互に訪れています。HR/打者は平均並みかやや下回る成績となっています。


いずれも、2012年と比較すれば悪い成績といえますが、投高打低の時代が終わってからの現状を表した成績といえるでしょう。


続いて、Batted Ball(ゴロ・フライ・ライナー)の成績を表2-2に示します。



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打者1人あたりのゴロの割合(/打者)を見ると、2016年こそ平均並みですが、2014年と2015年は平均よりも高いことが確認できます。フライとライナーの割合は平均並みなので、このゴロの変化が大きな特徴といえます。


表2-1に示したように、2012年や2013年はどちらかというと三振の多い傾向から、2014年以降、三振が減ってゴロの割合が増えています。これは投球スタイルがゴロを打ち取るタイプへとシフトしてきている可能性が考えられます。





NPBにおける位置づけ



吉川投手の投球内容を確認しましたが、このような内容によってNPB全体で見た場合、どの程度の実力として位置づけられるのかをtRAによって確認しました。




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この指標は値が小さいほど良い成績となるので、吉川投手のtRAは平均よりも悪い成績ということがわかります。また16年は15年に比べ質(tRA)、量(投球回)ともによくなかったようです。





2016年の日本ハム先発投手陣における位置づけ



次に、2016年の日本ハムの先発投手陣における吉川投手の位置づけを以下の図2に示します。



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この図は、先発投手の成績を棒で示したものです。棒の高さがtRAの高さを、棒の幅が投球回数を示しています。棒の高さと幅を見ることで、パフォーマンスの質と量を同時に見ることができます。先発投手は投球回数の多い順に左から並んでいます。


2016年の日本ハムの先発投手陣の場合、tRAは大谷投手が最も低く、パフォーマンスとしては最高ですが、投球回数が最多なのは有原投手です。この先発投手陣の中で吉川投手の位置づけを見ると、投球回数こそ上から4番目ですが、tRAは他の投手よりも悪いことが確認できます。


これが現状としての吉川投手の位置づけです。ただ、2013年以降隔年で成績が良くなったり悪くなったりしていますので、期待を含め2016年よりも成績の良い2015年のtRA 4.53程度は見積もっても良いとは思います。しかし、仮にtRA 4.53程度であっても、2016年の日本ハム投手陣の中ではそれほど良い成績ではないことには変わりありません。


今回のトレードにあたり、こうした吉川投手の特徴は日本ハム首脳陣には把握済みで、その上で図2に示した吉川投手分の投球回数とtRAが抜けた分までカバー可能という計算があるために、放出に踏み切ったのではないでしょうか。





巨人の先発投手事情



ところで、受け入れ先の巨人の先発投手陣はどのような構成となっているのでしょうか?日本ハムと同様の形式でまとめたものを図3に示します。



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菅野智之・田口麗斗投手の2枚看板で内海投手以下100イニング程度の先発投手が続きます。ここに2016年の吉川投手が加わったとしても、大きな戦力増加になるかといわれると微妙なところです。3番手以降のローテションを争うという位置づけとなるでしょうか、ただし、内海哲也・大竹寛投手と比べれば、28歳の吉川投手のほうが若いというメリットはあります。現実的には同じ左腕の今村信貴投手との争いになるのではないかと思われます。






まとめ



以上のデータより、吉川投手の放出は、日本ハムとしてはある程度代替可能であるという見通しのもとで、巨人としては先発投手陣の厚みを加えるという形で行われたといるのではないかと思います。ニュースバリューとしては大きなものがありましたが、現実的な戦力の交換といえる移籍ではないかと思います。それでもNPBでは珍しい主力級のトレードとはいえるでしょう。


いずれにせよ、2016年以上の貢献を期待されているのは確かだと思います。東京ドームが主戦場になるため、HRの被弾リスクは高くなりますが、それに負けずにもう一花咲かせてくれることを期待したいと思います。

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