昨季は7勝11敗と負け越し、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表に選出されながら登板機会にあまり恵まれなかった阪神・藤浪晋太郎。入団以来華々しいキャリアを歩み、成長を遂げてきた若きエースは今、“踊り場”に立っているようにも映る。だがデータ上では、昨シーズンの藤浪はこれまでと遜色ない成績を残していた。
イニングにこだわりを見せる藤浪。昨季の減少の理由は?
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【今季初登板を終えての追記】制御の意思はうかがえたものの……
記事では、昨季の藤浪は立ち上がりの制球に大きな問題があり、投球が狙った場所から大きく外れる場面が多いことを紹介した。4月4日のヤクルト戦に登板した藤浪は、5回を2失点に抑えたものの、内容は荒れ模様で117球0奪三振8四球1死球。制球の問題が解決されていないことを証明する形となった。死球を機に発生した乱闘騒ぎも、藤浪の現状を多くのファンに印象づけたことだろう。
図は藤浪が初登板で投じた117球の分布である(投手視点)。分布を見ると左下と右上のボールゾーンに多く投球が集まっていることがわかる。右投げの藤浪にとって左下は「引っかけた」、右上は「抜けた」投球と言えるだろう。ストライクゾーン低めへの投球はほとんど見られない。
右脇のメニューに示した「投球結果」「球種」を選択すると、117球のうちそれぞれにあてはまる投球だけを表示させることができる。各球種を見ていくと、高めに抜けた球の多くはスライダーであったことがはっきりわかる。意外にもストレートは抜けることが少なく、どちらかというと引っかけることが多かったようだ。畠山和洋(ヤクルト)への死球も内角を狙ったシュートであり、低めを狙ったストレートが大きく抜けた場面は少なかった。
こうした傾向を見るに、藤浪自身にもストレートが抜けて高めに浮かないよう、低めに投げようという意思はあったように映る。ただそのストレートを逆に引っかけてしまい、カウントを悪くしていたようだ。また抜けて高めに浮きがちなスライダーは、明確に改善が必要だ。奪三振が0に終わったのもスライダーの制球の悪さが主な原因となっていたと思われる。
制御の意思は感じられた。しかし、思ったとおりには投げられていない――。この登板を受け、周囲から何らかの改善が求められるだろう。だが、制球を重視して力をセーブする投球にシフトすれば、藤浪の持ち味が失われる恐れもある。投手として、非常に難しい局面を迎えていることをうかがわせる初登板となった。