DELTAをご支援いただいている皆さま、いつもありがとうございます。先月より弊社がお送りしておりますセミナーシリーズ 「リーダーズ・オブ・ベースボール・オペレーションズ 2019」は、6月24日(月)に本年度第3回を開催します。ご登壇いただくのは、金沢星稜大学人間科学部教授で、オリックス・バファローズの球団本部戦略データグループにも所属する島田一志先生です。
お席にはまだ若干の余裕がございます。ご予約はこちらから。
今回も6月10日(月)に北里大学講師でスポーツ科学研究者の永見智行先生をお招きして開催した第2回の様子をお伝えしながら、講演が迫っている島田先生のご紹介をさせていただきます。
投球の物理的な解釈の現状を、平易に解説
普通の研究者ではなかなかできない数の一流野球選手との計測などを通じたコミュニケーションを経験してきた永見先生だけあり、専門用語を最低限に抑えながら、ボールの回転や軌道といった机上ではイメージしにくい事柄を、順序だててわかりやすく説明していく様子が印象的な講演となりました。
前半は歩んできたキャリアについてのお話。大谷智久投手(ロッテ)、青木宣親選手(ヤクルト)、鳥谷敬選手(阪神)など、のちにプロの世界に羽ばたく才能がひしめいていた早稲田大学野球部で学生トレーナーを務めリーグ優勝も経験した永見先生でしたが、歓喜の一方で自分がトレーナーとして課していたトレーニングは本当に意味のあるものだったのか? という思いが頭をもたげ、それを追求するべく大学院進学を決意したとのこと。
研究の道に足を踏み入れた後も、名門野球部には斎藤佑樹投手(日本ハム)や福井優也投手(楽天)、大石達也投手(西武)といった好投手が多く現れ、さらにはOBの小宮山悟さん(現・早稲田大学野球部監督)が、現役生活を続行しつつ大学院に入学し共に研究する機会を得るという、ある意味で最高の研究環境を得た永見先生は、他の人にはなかなかできない野球やトレーニングの探求をすることができたといいます。その中で、投手の投げるボールの回転や軌道の解析といったテーマに出合ったとのこと。また研究者としての道を歩みつつも目指していたというプロのトレーナーになるチャンスの到来と挫折についてのエピソードも包み隠さず話してくださったところにも永見先生の人柄を感じました。
後半はテクニカルな話に。「球速」「回転数」「回転軸」「変化量」といった、投球のトラッキングデータから何かを語ろうとするときによく登場するキーワードが何を意味し、投球の何に影響しているのかを、様々な投手の事例を示しながら解説。またそれらと打たれにくさの関係についても述べられました。
「投球を回転数だけで語っていてはいけない」という警告はよく聞きますが、ではなぜいけないのか。そのあたりを平易な言葉で伝え、またストレートやスライダー、カーブといったなじみのある球種を、回転数や回転軸といった数字で表現するとどういったものになるのかといった既存のイメージと数字での表現の擦り合わせもあり、非常にわかりやすい解説でした。また理想的なボールはあれど、投げ方によっては投げられる投げられないがあること。裏を返せば、自分にあっていれば1球目から曲がるといったことも起きる。そうした点への留意の必要性も述べられました。
終盤は研究で見出した知見を伝えていく際に心がけていることなどについて。現場の人々とコミュニケーションを取る際には、理論とは異なる意見が発されたとしても、そこから何かを汲み取ろうと努めること、何か重なる部分がないかを探ることや、伝えること、伝えないことを峻別すること、見やすくわかりやすい資料をつくることなど、気をつけていることを話されました。
質疑応答では、今現在の研究テーマについて聞かれると“イップス”について研究を進めているという話もありました。多くの投手を苦しめる症状が、どのようなメカニズムで起きているかが解明される日を待ちたいと思います。
永見先生、準備が尽くされたわかりやすいお話、誠にありがとうございました。
次回はスポーツバイオメカニクスの打撃指導の現場での活用に挑む島田一志先生が登壇
さて、6月24日(月)19時より東京・品川で行われる「リーダーズ・オブ・ベースボール・オペレーションズ2019」第3回には、前述の通り金沢星稜大学人間科学部教授でオリックス・バファローズの球団本部戦略データグループにも所属する島田一志先生にご登壇いただきます。
島田先生は、早稲田大学卒業後、筑波大学大学院に進み「野球のピッチング動作における力学的エネルギーの流れ」をテーマとした研究で博士号(体育科学)を取得。その後は筑波大学などの硬式野球部のコーチやスタッフなどを務められました。現在は金沢星稜大学人間科学部スポーツ学科教授として専門のスポーツバイオメカニクス(身体運動学)の分野の研究に取り組むととともに、昨年からはオリックス・バファローズでもお仕事をされています。球団では、昨年は盗塁に関する分析を、今年は一軍を対象にしたバッティングの分析を担当されているとのこと。
「日々のプレーを観て専門のスポーツバイオメカニクスの観点から言えることを、現場のコーチに伝えています。伝える内容によっては選手の成績を左右するので、どう伝えるべきかどうかはかなり考えますし、プレッシャーも感じます。でも接しているコーチの方々は理解があり協力してくださるので、なんとか役に立ちたいと思って取り組んでいます」(島田先生)
研究活動とは異なるスピード感が求められるというプロ野球の世界。だからといって基礎研究の部分をおろそかにした発言は絶対にできない。そうしたジレンマはあるとのことですが、チームを組み日々のチェックと選手へのフィードバックを担う立場と、それとある程度リンクしながら基礎的な研究を進めていく立場を、前衛と後衛のように分けてうまく機能させられないかなど、試行錯誤を重ねておられるようです。
「自分の場合は尊敬できる方々に出会う幸運に恵まれ、ときに常識を超える計測結果を見せてくれるアスリートたちのパフォーマンスに対する感動に突き動かされて、楽しみながら研究を続けてきた結果ここにいるので、皆さんの参考になりますかね?」と気にされていた島田先生でしたが、その貫いてきたスタンスこそが、後に続く方々が道を切り拓く上での大きなヒントになるかと思います。ぜひお話しいただけたらと存じます。
6月24日(月)19時より東京・品川で開催される「リーダーズ・オブ・ベースボール・オペレーションズ2019」第3回、スポーツバイオメカニクス研究の最前線での活用にご興味をお持ちの方はぜひご参加ください。ご来場お待ちしております。