• 1.02 Column


UZR及び参考分析担当者による遊撃手評価


最初に評価の対象とした500イニング以上を守った遊撃手12人を、どのように順位づけをしたかを発表し、評価に用いた各種データを示していきたいと思います。


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1位としたのは、西武の源田壮亮選手です。他の選手と比較してもUZR(Ultimate Zone Rating)が最も高く、特に守備範囲の指標となるRngRが突出しています。彼の強みについては、後程データを見ながら解説していきたいと思います。

続く2位と3位には読売の坂本勇人選手、オリックスの安達了一選手を、4位は中日の京田陽太選手を選出しました。単純にUZRの値を見た場合、坂本選手よりも安達選手の方が高いのですが、安達選手を1つ下げた形です。4位の京田選手と安達選手の順位づけにも悩みましたが、これについてはデータを詳しく紹介していきたいと思います。

以降は、今宮健太選手、中島卓也選手、北條史也選手、田中広輔選手、三木亮選手、茂木栄五郎選手、倉本寿彦選手、大引啓次選手という順でランクをつけています。


守備内容を吟味していく


数値の大小を見れば守備の良し悪しを確認できるのですから、UZRは便利な指標です。一方で、1つの数値に集約していく過程で、どうしてもこぼれ落ちていく情報はあります。今回は、そうしたUZRの算出過程において見えなくなってしまっている生の情報を見ながら、遊撃手の評価をしていきたいと思います。


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最初に確認するのは、各遊撃手が対峙したゴロがどのような結果になっていたかです。上の図に示した三塁から二塁を少し超えた付近まで、また距離3という領域に飛んだ(処理された)ゴロを対象に確認しました。また、遊撃手は一人で守備をするわけではなく、隣には三塁手と二塁手がいます。彼らの対応も併せて確認しています。


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それぞれの野手の処理したゴロを、アウトになった場合と内野安打と野選、失策となった場合、外野に抜けてヒットになった場合で分けて集計しています。図に示す黄色の部分が遊撃手の獲得したアウトになるので、この部分が大きく、逆にヒットとなった赤の部分が狭い遊撃手ほど優れているといえます。

この図の良いところは、遊撃手の守備を一望できるところにありますが、守備機会をそのまま重ねているため、視覚的印象に左右されやすく、また、守備イニングの短い選手の図は少し見づらいという短所があります。

そこで、遊撃手の守備機会の多い〈G〉から〈M〉のゾーンで、ゴロをアウトにした割合(アウト率)のNPB平均との比較を行いました。するとアウト率の傾向から4つのタイプに分けられそうであることが確認できました。


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「三塁方向と二塁方向の両方向に強いタイプ」「三塁方向に強いタイプ」「二塁方向に強いタイプ」「三塁方向と二塁方向のどちらのゾーンもアウト率が低く、守備範囲の狭いタイプ」の4種です。各タイプへの分類は、分析者の一存で決めました。今宮選手と茂木選手の分類には悩みましたが、一番近いと考えられるタイプに分類にしました。

さて、源田選手は「両方向に強いタイプ」に分類しました。NPB平均と比較しても穴はなく、三塁方向の〈H〉のゾーン、二塁方向〈M〉のゾーンでは平均よりも高いアウト率を記録しています。このあたりを見て1位としました。こうした定位置から遠い位置での高いアウト率が、UZRにおけるRngRの高さにつながっているとみられます。

坂本選手も、源田選手と同じく両方向への強さを見せていたので2位としました。3位の安達選手は「三塁方向に強いタイプ」でした。UZRはアウトを獲りにくい打球をアウトにした場合に高く評価されます。そのため、事前に守備位置を偏らせることでそうした打球に対応した結果、高評価が得られやすくなるというケースも起こりえます。そのあたりを考えて、三塁方向に強い安達選手よりも、両方向に強い坂本選手の順位を上にしました。

ただし、この安達選手の三塁方向への強さですが、単なる個性とはいえないようです。より幅広いゾーンについて、安達選手、また安達選手出場時に守っていた三塁手と二塁手が獲得したアウトの割合を求めたものを示します。他の選手は比較用です。


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この図を見ると、安達選手の守備時において三塁手のアウト率はNPB平均以下であることが確認できます。一方、二塁方向に強い京田選手、中島選手などの守備時には、三塁手は平均並みのアウト率であることがわかります。

したがって、安達選手の三塁方向に強い守備成績は、三塁手の守備範囲の狭さのカバーを図った結果である可能性が考えられます。仮に三塁手の守備範囲が平均並みであれば、もう少し二塁方向へ進出して守ることも可能であったとも考えられますが、たらればで評価はできませんので、3位という評価が妥当ではないかと思います。

下位2人ついては、UZRのマイナスが小さいのは大引選手の方なのですが、この差は守備イニングの違いを反映しているところが大きく、1000イニングあたりに換算した場合の2人の差はほとんどなくなります。加えて、先ほどの図で比較すると、二遊間の穴は大引選手のほうが大きく、アウト率が低いことを確認できます。ここから11位を倉本選手、12位を大引選手としました。


打球のスピードに対する反応性


ここまでは各ゾーンへ飛んだゴロがもたらした結果をもとに、遊撃手を評価してきました。ここからは補足的に打球のスピードが反映される経過時間(打球発生から、捕球もしくは捕球が想定される位置に到達するまでの時間)という要素に注目してみたいと思います。

ゴロと言ってもそのスピードはピンキリで、守備をする側から見れば経過時間の短い速いゴロはアウトを獲ることが難しくなります。この関係は、以下の図に示すように、経過時間からアウトを獲ることのできる確率の予測式という形で表すことが可能です。


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経過時間ごとに、アウトのケース〈1〉と、アウトをとれなかったケース〈0〉に分類し、経過時間とアウト率の関数を予測式として求めたものです(2017年のNPBでの〈距離3〉〈H〉」へのゴロを用いて算出)。この予測式をゾーン〈G〉から〈M〉まで求め、経過時間とアウト率の関係をヒートマップで表していきます。


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この図は縦軸が経過時間を表しています。そして、経過時間に対する色がアウト率になります。アウト率による彩色は図の右側に例を示しています。アウト率が高くなるほど赤く、低くなるほど青くなります。左上の図が、NPB全体のもので、それ以外が上位4遊撃手のものです。

NPB全体のものを見ると、遊撃手の定位置といえる〈I〉〈J〉のゾーンは経過時間にかかわらず赤く、アウト率が高いことがわかります。一方、そこから外のゾーンになるにつれ、経過時間が短いとグラフは青くなっており、アウト率が低くなっていることを確認できます。

それに対し、1位の源田選手は定位置から遠い〈G〉〈H〉〈L〉〈M〉のゾーンで、NPB全体と比べて赤い部分が多く、こうしたゾーンへのゴロに対する反応が良さそうなことが確認できます。

安達選手のHのゾーンがオレンジ一色になっていますが、これは経過時間にかかわらずアウト率は80%程度あることを示しており、三塁方向に強い守備成績を裏付けるものといえます。

注目したいのは京田選手です。京田選手は二塁方向に強い様子が見られましたが、三塁方向の〈G〉のゾーンにおいてもアウト率の高い赤い部分が多く、NPB平均以上の反応を見せていたようです。これを評価し、安達選手を上回る3位をつけようか悩みました。ですが、これはあくまで実際の守備成績から求めた理論的な予測値に過ぎないので、現段階では参考資料に留め、京田選手は4位としました。

以上、遊撃手の守備評価を行ってきました。2016年までの遊撃手は、安達選手、坂本選手、中島選手、今宮選手らがトップを争っていましたが、2017年からはルーキーの源田選手、京田選手がこの争いに加わったきたようです。ルーキーの台頭が目立つシーズンではありましたが、安達選手なども老け込むにはまだ早い年齢です。2018年もこの6人が中心となって遊撃手のトップを争うことになるのではないでしょうか。


8人のアナリストによる採点と選出


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Student氏を含めた8人のアナリストが、それぞれの手法で500イニング以上を守った遊撃手12人を評価した結果がこちらになります。西武・源田選手が7人の1位票を獲得しトップになっています。2位と3位は僅差ながらオリックス・安達選手が読売・坂本選手を1ポイント差で上回りました。“1.02 FIELDING AWARDS 2017”の遊撃手部門には、源田壮亮選手(埼玉西武)を選出します。




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