• 1.02 Column


このシリーズではFA市場に出た選手の移籍先として、どの球団が適しているのかを多角的に分析し探っていきたい。


今回取り上げるのは目玉選手として注目されている、オリックス・糸井嘉男である。2016年は35歳を迎えるシーズンであるにも関わらず、53盗塁を記録し、盗塁王を獲得した。すでにオリックス、阪神に大型契約オファーの報道も出ており、争奪戦は必至だ。




レポート



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まず注目すべきは打撃の安定感である。リーグ平均を100として打者が生み出した得点力の傑出度を表すwRC+は170、126、152と、常に大きくリーグ平均を上回っている。出塁、長打ともに申し分なく、外野手に打力のないチームにとっては非常に魅力的だ。



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一方、一般的には高いと評される守備力はここ数年低迷しており、UZRでは平均的な右翼手以下の評価となっている。前方へのフライに対してチャージしきれず、待ってから捕球するような場面も多く見られ、日本ハム時代に見られた絶対的な守備力は計算できない。


また減少している守備イニングにも注目しなければならない。野手がフルイニング出場を続けた場合の1200~1300イニングを目安とすると、2014年こそ多くのイニングをこなしているが、その後の2年間は1000イニングに満たない。これは故障の影響が大きいと考えられる。オリックス首脳陣は糸井のコンディションを非常に慎重に扱っており、不安が大きい場合は指名打者として起用した。昨季は後半戦の多くを、今季はオールスター明けから半月ほどを多く指名打者として出場しており、守備につきながらフル稼働するのは難しいだろう。もし無理に出場させ続けるような事態になれば、守備面で大きなマイナスを作ることが予想され、糸井の価値も薄まってしまうことになる。


タイトルを獲得したことで注目されがちな盗塁だが、今季の糸井は盗塁失敗も17と非常に多く、盗塁の収支を得点化したwSBは1.7点。チームの攻撃力に大きな影響力を与えるほどのものではないと考えるべきだ。


そして最後にFA選手としての糸井を評価するのに考えなければならないのが、年齢である。来季には36歳を迎え、すでに衰えがでている守備面だけでなく、攻撃面でもいつ成績低下が始まってもおかしくない。そのため移籍先としては長期的な視野に立ち、再建を目指す球団よりも、ここ一二年で優勝へ勝負をかけるような、短期的に成功を狙うことができ、その目標に資金を割くことができる球団が望ましい。




以上のレポートをまとめると、糸井の移籍先として望ましいのは


①外野手(右翼手)の戦力に不安を抱えている


②DHで休ませながら起用、あるいはDH制がなくてもコンディションに気を配りながらの運用ができる


③短期的な成功を目指すために資金を割くことができる


となる。これら条件を踏まえたうえで、以前のコラムFA選手の最適球団はどこか ~ペイロール・ニーズ確認編~で外野手にニーズがあるとしたソフトバンク、ロッテ、楽天、オリックス、巨人、阪神、ヤクルト、中日の中から適した球団を探っていく。





ソフトバンクの場合



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①外野手(右翼手)の戦力に不安を抱えている…◯

中村晃、柳田悠岐の左中間コンビは固定されていたが、右翼手は日替わり起用が続いた。城所が交流戦時期に大活躍を見せたが、それでもシーズンを通して攻撃力不足は否めない。大きな弱点ではないが補強ポイントではあるだろう。


また狭いヤフオクドームは外野手がカバーしなければならない範囲、処理できる打球も少なくなる。また外野のファウルグラウンドも非常に狭い。他球場を本拠地とするのに比べ、両翼の守備で差がつきにくく、糸井の守備のマイナスを削ることにつながるはずだ。



②DHで休ませながら起用、あるいはDH制がなくてもコンディションに気を配りながらの運用ができる…◯

DHで起用されることの多かった長谷川勇也が絶対的な存在ではなくなっており、右翼、指名打者という糸井の慣れ親しんだポジションにちょうど穴が空いている。コンディションが悪いときは指名打者で、という起用も容易なはずだ。ただ指名打者のポジションを専有する外国人選手を獲得するならば兼ね合いは難しくなる。



③短期的な成功を目指すために資金を割くことができる…◎

わずか2.5ゲーム差で敗れた日本ハムとの差を確実に埋めてくれる補強になるだろう。来季は優勝奪還を目指しあらゆる手を打つはずである。孫正義オーナーはさらなる補強を示唆しており、ペイロールの増加も許容しそうだ。リーグ内で置かれている状況を見ても適している。





ロッテの場合



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①外野手(右翼手)の戦力に不安を抱えている…◎

右翼手の清田育宏だけでなく、外野手は角中勝也以外成績が安定せず計算しづらい状況となっている。糸井が加入した場合は攻撃面で大きな改善が期待できる。非常に効果的だ。



②DHで休ませながら起用、あるいはDH制がなくてもコンディションに気を配りながらの運用ができる…△

今季DHのポジションを専有したアルフレド・デスパイネの去就次第だろう。残留、あるいは指名打者専門の選手を補強となった場合は休ませながら起用するのには障壁ができる。外野手の陣容も十分でないため、無理してでも外野で起用するという場面が増えそうだ。



③短期的な成功を目指すために資金を割くことができる…△

チームのペイロールを考えても糸井の高額になると思われる年俸を払うことは難しいだろう。またリーグ内でのポジション的にも獲得によって優勝争いに食い込むということは難しそうだ。ニーズには合致するものの、実際の運用、ペイロールを考えると難しい。FAでの獲得があるとすればより安価な選手の場合のみだろう。





楽天の場合



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①外野手(右翼手)の戦力に不安を抱えている…◎

外野はいずれのポジションもレギュラーが定まっていない。今季右翼手を務めた岡島豪郎も確固たる地位を築いているとはいえず、上積みの余地は十分にある。代替選手との力の差は大きく、コアプレイヤーとなりうる糸井が加入するとなれば戦力の上昇は間違いない。またチームは日本人選手の長打力に欠点を抱えており、そういった意味でもニーズに合致する。



②DHで休ませながら起用、あるいはDH制がなくてもコンディションに気を配りながらの運用ができる…◯

DHを兼任する外国人外野手を多く抱えており、それらの選手の去就が大いに関わってくることになる。ただロッテのデスパイネと違い、アマダーを除く外国人は両翼で起用されることも多かったため、コンディション管理をしながらの運用は十分に可能だろう。



③短期的な成功を目指すために資金を割くことができる…◯

一時期に比べるとペイロールには空きがあるため、獲得資金の捻出は十分に可能だ。糸井の加入で優勝を狙える位置までいくことは難しいが、Aクラス入りは十分に狙える戦力にはなるだろう。


ただ今オフは、糸井以上に旬の時期が長いと思われる陽岱鋼が市場に出ているため、優勝争いに加わる戦力を徐々に蓄えている現状、糸井の優先度は低くなるかもしれない。





オリックスの場合



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①外野手(右翼手)の戦力に不安を抱えている…◯

糸井がFAとなった現状、一塁での起用も多かったT-岡田を左翼に、左翼、指名打者での起用が多かった吉田正尚が右翼を務めることになるだろう。すると一塁や指名打者が弱点となってしまうため、やはり外野は弱点といっていいだろう。



②DHで休ませながら起用、あるいはDH制がなくてもコンディションに気を配りながらの運用ができる…◎

今季まで指名打者での起用が可能だったのは、指名打者の選手の打撃が振るわなかったためで、もし新加入の外国人が指名打者を専有した場合、そういった起用のハードルは上がるかもしれない。ただ、首脳陣も糸井のコンディションによるパフォーマンス低下は認識しているはずで、柔軟な対応は期待できるだろう。



③短期的な成功を目指すために資金を割くことができる…◯

球団は糸井に4年18億もの大型契約を用意しているとの報道がある。だがAクラスまで15ゲーム差という現在のチーム状況、また糸井の年齢を考えるとこの大型契約はリスクが大きいように見える。もし残留するとなるとペイロールは圧迫され、以降の補強資金はかなり限定的なものとなるだろう。チームが浮上しなかった場合(現状は糸井が来季も今季レベルの活躍を続けたとしてもチームのAクラス進出は遠い)を考えると、あまりにもリスクが大きい。ただFAが噂されていた大島洋平、平田良介が残留となった現在、とれる選択肢は多くないため非常に難しい判断となる。





巨人の場合



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①外野手(右翼手)の戦力に不安を抱えている…△

巨人の外野は非常に判断が難しい。ギャレット、橋本到、長野久義の外野陣はそれぞれ欠点を抱えているものの一定の貢献は果たしている。糸井が加入となった場合、プラスになることは間違いないが、効果的といえるほどの影響が出るかは微妙だ。今季は右翼を長野久義が務めることが多かったが、糸井が加入となった場合は長野が中堅に回ることになるだろう。



②DHで休ませながら起用、あるいはDH制がなくてもコンディションに気を配りながらの運用ができる…×

首脳陣としてはチームの得点能力に不安を抱いているはずで、糸井が加入となった場合、貴重な得点源をメンバーから外すという選択をとることは考えづらい。左翼のギャレットは守備に大きな不安があり、試合終盤に2人を守備固めで代えることは考えづらい。



③短期的な成功を目指すために資金を割くことができる…◯

ペイロールはすでにいっぱいの状況だが、現状の予算を超えて補強の可能性は高そうだ。首位広島との少しでも差を詰めるためある程度コストパフォーマンスを軽視した補強は仕方ないだろう。





阪神の場合



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①外野手(右翼手)の戦力に不安を抱えている…△

糸井が加入となった場合、現状右翼手としてチームのコアとなっている福留孝介を一塁にコンバートするとの報道もなされている。福留は右翼守備でも非常に高い貢献を示しているためそのコンバートはあまりにもリスキーだろう。チームの強みを打ち消してしまう可能性がある。現実的には弱点となっている中堅に糸井を回す形になるだろうか。現在の糸井が甲子園の広いセンターを守ることができるだけの守備力を供給できるかは疑問だ。ポジションを動かす前提の補強となるためやや不安が残る。



②DHで休ませながら起用、あるいはDH制がなくてもコンディションに気を配りながらの運用ができる…×

金本監督は今季、鳥谷敬の起用で非常に頭を悩ませた。おそらくコアプレーヤーにはかつての自分のようにフル出場させたい気持ちもあるのだろう。今季の起用を見ていても柔軟に休息を与えながらというのは難しそうだ。



③短期的な成功を目指すために資金を割くことができる…△

チームのペイロールは一時に比べると大きな空きができている。資金的には獲得は十分可能だろう。ただ、今のチーム状況は鳥谷敬が長らく支えた時代を終え、新たなサイクル を作る時期だ。高齢の糸井より若い選手を補強したいところだ。ただ、大島、平田が市場に出てこず、とれる選択肢は多くない。高齢の福留、糸井があとどれくらい働けるかの見極めによって判断は変わってきそうだ。





ヤクルトの場合



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①外野手(右翼手)の戦力に不安を抱えている…◎、バレンティン残留の場合は△

FA権を取得していた右翼の雄平が残留となったため、外野補強の優先度は低くなった。左翼のバレンティンが退団となった場合は控え選手との差が非常に大きくなるため、加入は効果的となる。残留となった場合、相対的に効果は薄いだろう。



②DHで休ませながら起用、あるいはDH制がなくてもコンディションに気を配りながらの運用ができる…△

控え選手との力の差が大きいためスタメンを外しながらという起用は難しそうだ。だがバレンティンの例があることで、終盤に守備固めをする起用法は確立されており、それが糸井にも適用されれば多少ではあるが負荷を抑えながらシーズンを戦うことは可能だろう。だがそれでどれだけ負荷を下げることができるかは疑問で、適しているとはいえない。



③短期的な成功を目指すために資金を割くことができる…×

球団は平田の獲得を目指していたもののFA宣言とならなかったため、撤退を余儀なくされた。平田にターゲットを絞っていた理由としては獲得資金の安さがあっただろう。糸井獲得となると契約は膨れ上がることが予想され、現状のペイロールを大きくはみ出ることになる。大きな予算のチームではないため、高齢の高年俸選手はリスクが大きいと判断するのではないだろうか。





中日の場合



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①外野手(右翼手)の戦力に不安を抱えている…◎

大島、平田がFA宣言をしなかったことで、ひとまず外野の緊急事態は免れた。だが、依然として左翼は大きな弱点だ。もし糸井を獲得することができたなら、両翼を糸井、平田でカバーすることになるだろう。大島、平田以外の外野手は実績がある選手が藤井淳志しかおらず、その藤井もかなりの高齢となり出場を減らしている。控え選手との差は非常に大きく、補強効果は絶大だ。



②DHで休ませながら起用、あるいはDH制がなくてもコンディションに気を配りながらの運用ができる…×

DH制のないセ・リーグだけにパ・リーグの選手に比べると休ませながらの起用は難しい。チーム最高の攻撃力となるであろう選手をメンバーから外すことは試合途中でも難しいだろう。



③短期的な成功を目指すために資金を割くことができる…△

大島、平田を低コストで残留させることに成功した。現状でもペイロールは小さいため、ここ数年溜め込んだ資金を投入することができるならば獲得は可能だろう。現状レベルの予算を維持していくならば難しい。


チームのリーグ内での状況は良くはないものの、Aクラスが絶望的というほど遠くもない。糸井を獲得できれば戦力的にはCS進出を争えるレベルにまで上昇するだろう。ただやはり今は再建期にあり、なるべく長期的な貢献ができる選手に資金を割きたいはずだ。





最適球団は・・・



契約終盤には40歳近くなること、また指名打者制の問題からも、やはりパ・リーグの球団が望ましい。その中で戦力的な需要が大きいのは外野手が弱いロッテ、楽天、オリックスだ。前述した球団に比べると右翼のマイナスは小さいが、DHの弱さや僅差で日本ハムを追いかける状況にあるソフトバンクも多くの面で適した球団といえる。


ただ報道に出ているような契約に見合う活躍を糸井は見せることができるだろうかは疑問だ。球団は過去の実績に対してお金を払うわけではない。これからの契約年数に対してお金を払う。高齢の選手は当然契約中に衰えがはじまることも考慮しなければならない。いつどの程度の衰えがくるのかは誰にもわからない。そこで各球団の判断に差が生まれてくるだろう。現時点で糸井が優れた選手であることは間違いないが、”長期契約の糸井”は非常にリスクが高いと考えなければならない。

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