2019年のドラフトでDeNAから3巡目指名を受けた伊勢大夢(明治大)。大学ではチームメイトで日本代表の森下暢仁(広島・1巡目)の影に隠れがちではあったが、今年の全日本大学野球選手権では、13イニングを2失点に抑える活躍でチームを大学日本一に導いた。今回はDELTAアナリストの山崎和音氏が、伊勢について
20-80スケールでのリポートを作成した。
選手プロフィール
名前:伊勢大夢
生年月日:1998年3月7日
投/打:右/右
身長:181cm
体重:86kg
経歴:明治大学-DeNA(2019年ドラフト3巡目)
観戦日:2019年4月28日、10月19日
体格及びメカニクス
実際に伊勢を球場で確認すると、明大野球部のウェブサイトに記載されている体重86kgに比べてやや細身な印象を受ける。身体は完成に近いが、ウェイトをもう少し増やせる余地はありそうだ。
投球は走者がいなくても常に、足をプレートの三塁側に置いたセットポジションから行う。足は基本的には膝をベルトの高さにまで上げるが、タイミングを外すために走者がいなくてもクイックを使う場面も散見される。腕を後方に引く際にひねりを加えるのが特徴的だ。腕の角度はかなり低く、ほぼサイド気味のスリークォーターといえる。体重移動の際に重心を落とす、アメリカでドロップ&ドライブと呼ばれる種類のフォームだが、前足の着地がやや硬く開き気味で、バランスを崩す場面もある。
4シーム
スピードは常時143~147km/h程度。ギアを上げれば149km/hまで上がる。大学4年、現在21歳という年齢を考えると今後大幅に球速が伸びることは想像しにくい。常にセットポジションからの投球であるため、走者を背負った際も球速の低下はそこまで見られない。制球は不安定で、特にグラブサイド(利き腕とは反対側)に大きく外れる場面が目立つ。空振りをそこまで多くとれる球種ではないものの、高めに抜けた際に打者を苦しめることもある。これを意図してできるようになると、プロにおいて効果的なプットアウェイピッチ(決め球)になるかもしれない。
将来のグレード:50
2シーム
137~144km/hほどで、アームサイド(利き腕側)に向かって変化する。変化量は不安定で、プロレベルの打者にとっては動き始めるポイントが早く見えるときもあるだろう。4シームを高めに、2シームを低めに投げ分けて高低を使った配球を身に付ければより効果的になりそうだ。
将来のグレード:50
カーブ
114~118km/h程度で、打者から見て時計の針の11時から5時の方向に曲がる。変化量は不安定で、プロにおいては見せ球としても通用するかどうか不透明だ。また、この球種を投げる際は腕の位置が若干下がる傾向がみられる。
将来のグレード:30
スライダー
球速は124~128km/h程度。時計の針の11時から5時の方向に大きく変化するものの、その変化量は不安定だ。プロレベルの打者であれば早い段階で曲がり始める印象をもち、見極めも容易なのではないだろうか。現状では4シームに次いで質の高い球種だが、プロレベルで平均以上の武器となるかには疑問符が付く。
将来のグレード:50
カットボール
球速は133~137km/hほど。スライダーほどの変化量はないが、ピッチトンネルをつくることができている。チェンジアップや2シームを待っている打者に対するアクセントとしては効果的だろう。投球の幅を広げる球種としては悪くはない。
将来のグレード:45
フォーク
球速は134~139km/hほどで、良いものは真下に平均的な落ち幅で落ちる。ただ、他の球種同様にプロにおいて絶対的なプットアウェイピッチ(決め球)として使うには質、安定感ともに不足している。
将来のグレード:45
チェンジアップ
127~133km/h程度。他の球種と同様にクオリティーの差が激しく、質のいいものは左打者の外角へ逃げながら平均以上の落ち幅をみせる。しかしまったく落ちずにただの棒球になってしまう場面も多い。この球もプロで安定して使える武器になる見込みは高くはない。
将来のグレード:40
総合評価
素材には光るものがあり、また球種も豊富だが、制球や個々の球質の不安定さがポテンシャルに蓋をかけている。特に今後、制球がプロの平均以上にまで成長していくとは考えにくい。ある程度のイニングは投げられる投手にはなるが、ローテーションの中心投手とまではいかないのではないだろうか。ロングリリーバーに落ち着く可能性も十分考えられる。
現実的なシナリオ:45 上位球団の先発5-6番手もしくは下位球団の3番手
OFP(非常にうまくいった場合のシナリオ):55 上位球団の3番手