今秋のドラフト会議において、目玉的存在となった早川隆久。抽選の結果、交渉権は楽天が得ることになった。その早川の能力はどれほどのものなのか。DELTAアナリストの山崎和音氏が、MLBのスカウトが評価に用いる20-80スケールでのリポートを作成した。

選手プロフィール


名前:早川隆久 (はやかわ たかひさ)
生年月日:1998年7月6日
投/打:左/左
身長:179cm
体重:72kg
経歴:木更津総合-早稲田大-楽天(2020年ドラフト1巡目)
現地観戦日:2019年10月19日、2020年10月24日

体格及びメカニクス


投手にしては、というよりはプロ野球選手としてはかなり細身の体格をしている。上記のプロフィールの項目では早稲田大学野球部のホームページに記載されている身長と体重を参照した。たださすがに72kgよりはやや重めに見える。今後ウェイトが劇的に増える可能性は低そうだ。

常にセットポジションからの投球を行う。膝をベルトの高さまで上げ、上体はやや前傾気味。アームスロットはかなり高めのスリークォーターで、ボールの出所が打者からよく隠れている。下半身もしっかり使えており、肉眼で見る限りではスムーズで力みのないフォームだ。また、リリースポイントも安定しており、すべての球種で同じ腕の振りができている。





速球


主に4シームで、球速は140km/h台後半。ドラフト直前の試合では神宮球場のスピードガンで最速150km/hを記録した(以降の球速はすべて神宮球場の表示によるもの)。伸びも一軍平均かそれ以上のものを見せる。また、握りは確認できなかったが、2-3 km/h遅い球速で2シーム気味にアームサイドに動かしてくる場面も見受けられる。いずれもプレートの両コーナーに投げ分ける抜群の制球力を見せる。目立った球速の低下も4巡目になるまでは見られず、プロレベルにおいても十分に投球の軸として通用する球種だ。

将来のグレード:60
 

スライダー


メインとなる変化球。球速は主に134-138 km/hほどで、打者から見て時計の針の2時から8時方向に変化する。キレ、奥行きともに一軍平均以上で、コマンド(狙ったスポットに投げる能力)も申し分ない。打者の左右に関係なく空振りを奪える。プロでもプットアウェイピッチ(決め球)として通用するだろう。また、球速を120 km/h台後半まで落としてより多く縦の変化を強めるボールも見られる。こちらはスラーブと呼んでもいいかもしれない。

将来のグレード:60
 

カーブ


118-124 km/hほど。打者から見て時計の針の1時から7時方向に変化する。単なる見せ球以上のものがあり、3巡目以降では浅いカウントからカーブを多投して追い込み、ほかの球種で仕留める組み立ても多く見られる。また、スライダーの項目でも述べたように、120 km/h台中盤から後半の球速帯ではカーブとスライダーの中間のような球種になる。

将来のグレード:55

カッター


140 km/h台中盤。4シームと同じ軌道から、グラブサイド(利き手と反対側)に小さく食い込むように変化する。速球の組み立ての中で打者に違った軌道を植え付けたり、芯を外すには効果的だ。

将来のグレード:55

チェンジアップ


128-133 km/hほど。スライダーと比べて質は落ちるが、特に右打者に対して外に逃げていく軌道を植え付けるには十分。変化球が安定しない日にはこの球種を軸に組み立てることも可能だ。

将来のグレード:50

フォーク


130 km/h台後半で、十分な落ち幅を見せる。ドラフト直前の登板では終盤に割合を増やしていた。こちらも打者の目線をスライダー、カーブから注意を逸らすには効果的な武器だ。

将来のグレード:50



総合評価


大学3年秋からの1年間で劇的な成長を見せ、現時点で投手としての完成度は群を抜いている。豊富な球種のすべてを磨かれた制球力で操る能力があり、即戦力で安定した一軍ローテーションの3番手として通用するだろう。下記のOFP(※1) 60に到達する可能性は比較的高い。今後、さらに大きくステップアップするシナリオは考えづらいが、すべてがうまくいけば70まで成長する可能性も皆無ではない。ただ、高校時代から多くの球数を投げ込んできたことも考慮すると、怪我のリスクもある。現実的にみれば、大学の先輩でもある有原航平(日本ハム)のここまでのキャリアがちょうどいい比較対象になる。

現実的なシナリオ:55(上位球団のローテーション3番手)
OFP:60(上位チームのローテーション2番手)


(※1)OFP(overall future potential):選手のキャリアが非常にうまくいった場合のシナリオにおける成長曲線を指す。
https://1point02.jp/op/gnav/column/bs/column.aspx?cid=53559

山崎 和音@Kazuto_Yamazaki
バイリンガルに活動するライター。1.02以外にもBeyond the Box Score や、 Baseball Prospectus といったウェブサイトに寄稿。 BP Anuall 2018では日本野球に関するチャプターを執筆。セイバーメトリクス的視点からだけではなく、従来のスカウティングを駆使した分析もする。趣味のギターの腕前はリプレイスメント・レベル。
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