• 1.02 Column



2017年秋バージョンに更新したプロスペクト・ランキング、プロスペクト基準内選手の人数をもとに各球団の育成状況を探っていく。多くの有望株を揃え、育成で成果を上げているのはどの球団なのか。

各球団のプロスペクト保有人数とポジション別統計


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【プロスペクトの基準】

  • ・2017年中で24歳以下
  • ・投手は一軍通算100イニング未満もしくは50試合登板未満
  • ・野手は一軍通算300打席未満
  • ・外国人枠の対象となる選手は除く

今季終了時点で各球団に在籍したプロスペクト(10月1日以降に戦力外通告を受けた選手も含む)は、支配下選手198名、育成選手54名を合わせた計252名。球団別での人数は上図の通りとなりました。40位以内に4名がランクインしたソフトバンクは、選手数で他球団を大きく上回っていますが、半数は育成選手という状況。ただ育成選手の中でも、1年目ながらすでに注目を集める長谷川宙輝のほか、今季ファームで防御率1.02と素晴らしい成績を収めた2年目の野澤佑斗など、複数の有望株が控えています。育成選手にも才能が埋もれていることは、現在一軍で活躍する千賀滉大、甲斐拓也らで証明済み。他球団の一歩、二歩先を進んでいるシステムといって良いでしょう。

支配下選手のプロスペクト人数が最も多かったのは日本ハムの23名、最も少なかったのは中日の10名です。実際には、24歳以下ながらすでに一軍で出場機会を多く得たためプロスペクトの基準をクリアした選手もいますので、図の結果が各球団の育成事情を全て反映しているわけではありません。育成選手を含んだ人数ではヤクルトが最も少ない12名で、次いでロッテの15名。この2球団は、今季のペナントレースでも苦戦しています。できることなら若い力でチームを再建したいところなのでしょうが、質はともかく量が不足している点は否めず、10月26日に予定されているドラフト会議でどこまで良い選手を指名できるかが特に注目されます。

ソフトバンクと並び、育成型チームの手本と見られている日本ハムは、支配下選手内におけるプロスペクトの割合が高く、球団の力の入れ具合はここでも確認することができます。一方で、ファームで育成する選手が多すぎると、一軍の選手層がかえって薄くなってしまうリスクも抱えています。そうしたリスクを感じさせなかったのは大谷翔平の投打両面での圧倒的なパフォーマンスのおかげなのですが、来季からメジャー挑戦の噂が流れ、またFA資格を持つ中田翔、増井浩俊、宮西尚生らがオフに退団するのではないかとの予想もあります。限られた人数と予算内でここまで健闘してきたのは確かですが、世代交代のタイミングを誤るとチームが機能しなくなる恐れも孕んでいます。


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プロスペクト基準内選手のポジションを調べると、投手がほぼ半数の51%。投手と野手の人数バランスは12球団の支配下選手と同等の比率となっています。球団別では、日本ハムは投手の比率がやや少なく、内野手と外野手合わせて12名となっており、若手野手を積極的に起用する一軍の状況を反映していました。オリックスは65%に相当する13名が投手で、山本由伸や吉田凌らが順調に伸びてきたのも、同世代の若手が競い合っていることが要因となっているのかもしれません。ソフトバンクは捕手のプロスペクトだけで5名が在籍しており、ファーム公式戦に出場した若手捕手は、みな好成績を収めています。

ここ数年、球団の育成能力が注目されるようになってきましたが、若い選手を集めたからといってそう簡単に成功するわけではありません。世代交代のタイミングは非常に難しく、ファーム通算打率.314、OPS 1.000を残している山川穂高(西武)でさえ、一軍定着するのには4年かかりました。高卒の野手なら、プロの水準に達するまでさらに長い年月がかかるでしょう。その間球団は選手を抱える金銭的なリスクだけでなく支配下選手枠を圧迫してしまうリスクも抱えることとなります。より完成した素材を獲得するなら、大卒選手や社会人出身の選手を獲る方が無難です。25歳を超えた後に才能が開花する選手も珍しくありません。

以降は、球団ごとにシーズンの育成状況を振り返り、今後の方向性についても提案を述べていきます。


福岡ソフトバンクホークス

三軍を充実させたことにより、二軍の選手たちが競争意識を高め、それが一軍での活躍につながるという育成面での理想的なシーズンを送りました。今季でプロスペクトを卒業した上林誠知は、後半戦こそ打率を下げましたが、規定打席に到達し2ケタ本塁打と2ケタ盗塁を記録。ボール球に対する見極めが向上すれば、長打力を備えた1番打者に成長する期待もあります。二軍では、栗原隆矢や茶谷健太、笠谷俊介らが出場機会を増やし、成長を見せました。三軍では前述した長谷川宙が活躍したほか、1年目の九鬼隆平がチームトップの7本塁打を記録。チームに欠けていたパワーヒッターのニーズを埋めてくれそうです。

彼らの成長により、昨季ファームで活躍した笠原大芽、真砂勇介らの存在感が若干薄くなってしまいましたが、巻き返しのチャンスはいくらでもあります。こうした競争原理こそが、一軍に昇格してすぐに結果を残す選手を増やし、世代交代のリスクを最小限に留めることにつながります。このリスク軽減は今季最大の収穫でもありました。


東北楽天ゴールデンイーグルス

名目上三軍は置いていませんが、シーズン中に非公式戦を35試合も組み、11名の育成選手を中心に若手の出場機会を確保。遠征もしくは招待費用などで、かなり投資しているものと思われます。運営については、故障者が増えてしまうと非公式戦に出場する選手が足りなくなってしまうこともありましたが、2年目の堀内謙伍や1年目の石原彪ら若手捕手が経験を積むには最適な場であったことも確かでしょう。

二軍では、西田哲朗、中川大志らが安定した成績を残しました。そろそろ一軍定着を果さなければならない時期に来ているのも確かですが、クライマックスシリーズ(CS)で貴重な働きをした枡田慎太郎のように、辛抱強く機会を待つことも大切です。一方で、一軍ですぐに世代交代を必要とされるポジションは見当たらず、「経験」を追い抜くには若さ以上のプラスアルファが要求されます。


読売ジャイアンツ

創設して2年目の三軍は、今季108試合を戦いました。怪我人を出さずよく消化できたという印象です。投手、野手ギリギリ人数の編成で、二軍と三軍の間に明確な仕切りもないため、日程を消化するために行き来していた選手も見られました。しかし、厳しいスケジュールの中で結果を残す選手も現れ、夏場には青山誠や増田大輝らが支配下登録を勝ち取り、二軍でも良好な成績を収めました。

チームは2015年の秋に起きた野球賭博事件の影響もあってか、有望株が一時枯渇しましたが、トップ・プロスペクト・ランキングでは畠世周、岡本和真、宇佐見真吾らがランクインするなど、活気を取り戻しています。若手育成型の球団とは違い、FA市場を視野に入れての編成が行える点はチーム再建のスピードを後押しする大きな材料となりますが、球団の顔を育てるには育成の重要度を考えないわけにはいきません。


北海道日本ハムファイターズ

7月以降にエドウィン・エスコバー、屋宜照悟、ルイス・メンドーサら3人の投手を放出し、いち早く来季への準備をはじめた日本ハムには、世代交代のタイムリミットが迫っているという切実なチーム事情がありました。大谷の退団が現実となるなら、投打の軸を失い苦戦した今季の戦いを再現してしまう恐れも十分あり、また中田や増井、宮西らFA資格を持つ選手たちまでがチームを離れてしまうと、これまでに積み上げてきた育成の成果が一度リセットされることになります。

ドラフトで指名した選手だけでは世代交代前のチーム力には追いつかないと考え、球団はトレードを効果的に活用してきたものと思われます。大谷の退団を予測し、投打二刀流を将棋の飛車角に例えると、投手はヤクルトから杉浦稔大、野手は読売から大田泰示を獲得し駒を埋めようとしました。捕手も、大野奨太がFA退団しても凌げるように、DeNAから黒羽根利規を補強しています。次世代のチームを完成させるため現有戦力のポジション争いだけで不十分なら、FA資格に届かない20代中盤の選手でも容赦なくトレードすることも必要かもしれません。ファームで燻っている選手の存在は球団にとって損失以内の何物でもなく、人材の活性化こそがこのチーム最大の武器であることも忘れてはならないでしょう。


広島東洋カープ

一軍がセ・リーグ連覇を果たすと同時に、ファームの充実度も一気に上昇。ウエスタン・リーグでは、チーム打率.286と他球団を寄せ付けないほどの破壊力がありました。トップ・プロスペクト評価2位に入った坂倉将吾はもちろんのこと、サビエル・バティスタやアレハンドロ・メヒアら外国人選手も育成しようとする球団の方針が実を結ぼうとしています。野手に比べ、投手の育成はあまり目立たなかった様子もありましたが、一軍の開幕ローテーションに入った床田寛樹や、150km/h台の速球を持つ辻空といった楽しみな素材もいます。

今後のテーマは、次の世代を育てることですが、現在のレギュラーがあまりにもハイレベルなため、二軍野手のモチベーションを保つことも難しくなっているはずです。年齢価値が高いうちに、不足しているポジションを埋めるためのトレードを画策する必要があるかもしれません。また、来オフあたりから国内FA権を取得する選手が出てくる可能性もあるため、引き留めを図るための資金と交渉力も球団には求められます。


横浜DeNAベイスターズ

セ・リーグでは最も若い野手陣と、育成型チームの評判通り、ファームも非常に若い選手が揃っています。球団が特に育成に力を入れたのが、野手では高卒1年目の細川成也と松尾大河、投手は同じく高卒1年目の京山将弥と同2年目の綾部翔でした。細川と松尾は、今季イースタン・リーグで低打率に苦しみましたが、打席はチームで1、2位と出場機会を多く与えられました。ファーム公式戦終了後に細川は一軍昇格。京山は投球回数チームトップで、綾部も1年目から大幅にイニングを増やしました。

球団は、日本ハムのような高卒選手を育成するチームを目指しているとされており、今季はそれを実践した形でしたが、方針だけで選手が育つわけではありません。日本ハムでさえ、ファームで同じ選手に何年もフル出場の機会を与えているわけではなく、細川や松尾にしても今後入団してくる後輩選手たちと出番をシェアしながら成長していくことが求められるでしょう。計画通りに選手が伸びることで、はじめて育成型の球団と呼べそうです。


オリックス・バファローズ

今季から大阪シティ信用金庫スタジアム(舞洲サブ)をファームの本拠地とするなど、育成環境を整えているオリックスは、施設面では球界指折りの存在となってきました。ウエスタン・リーグ以外の非公式試合も多く、育成選手の力を見るため、また高卒入団投手に先発機会を与えるための貴重な場となっています。昨季まで使用していた神戸サブ球場も、球団が指定管理者となっており、今後の三軍創設も十分可能と見られています。

チームの動きとしては、ウエスタン・リーグトップの防御率3.20を記録したように、投手陣の育成が順調に進み、一軍にも多くの若手を送り込みました。野手では、5年目の武田健吾が97試合に出場し打率.295と健闘。外野守備でもUZR 3.7を残すなど、ファームでの育成がようやく実りつつあります。ドラフトの成果次第では、さらに充実した組織になることも期待できるでしょう。


埼玉西武ライオンズ

故障明けのベテラン・木村昇吾以外に育成選手を保有せず、少数精鋭型のファームを運営。野手育成に定評のある球団らしく、今季は山川や外崎修汰が一軍に定着。ファームでは、愛斗や山田遥楓、永江恭平らが長打力をつけ、世代交代を進めました。ただ、一軍に定着するには怪我に強いことも証明する必要があり、外崎や山川らに続きたいと思っている選手は、まずはこの条件をクリアしないといけません。

一方、投手は37名もの支配下選手を置きながら一軍の試合に登板できなかった投手が10名もおり、戦力が底上げされたとは言い難い状態。野手と合わせて20名の支配下登録選手一軍未出場は、パ・リーグでは最も多い人数です(次点がソフトバンクの14名)。球団によって育成事情は異なるため、少数精鋭が悪いわけではありませんが、ファームの選手に手術などで長期欠場がなかった中でのこの人数は、一軍と二軍の間にかなりの実力差があるものだと推察することもできます。この差を埋める補強は、オフの大きな課題にもなるでしょう。


中日ドラゴンズ

保有プロスペクト17名のうち育成選手は7名で、ファーム公式戦での稼働実績は投手全体で25 2/3回、野手は183打席しかなく、実戦に出るまでのハードルがかなり高くなっています。育成選手の出場機会が少ないこと自体は、球団による方針の違いや、入団した選手のレベルに応じて体力作りなどを優先すべき点もあることから、内部関係者以外に批判する権利はないでしょう。しかし、あまりにも出場機会がないとドラフトに掛かるような選手から敬遠されかねないため、育成選手に出場機会を分け与えることも球団運営全体のポイントになるかと思われます。

今季のファームは、昨季に続きウエスタン・リーグの2位を確保。阿知羅拓馬が防御率1位に輝き、育成枠から昇格した三ツ間卓也や1年目の笠原祥太郎らが一軍での出場機会を伸ばしました。ドラフトでは、大卒、または大学から社会人に進んだ比較的高齢の選手を多く指名してきたため、当サイトのプロスペクト基準にかからない選手もいます。そういった選手が25歳を過ぎて一人前のレギュラーになる可能性もあるため、決してプロスペクトの人数だけで育成を語ることができるわけではありません。


阪神タイガース

今季の秋山拓巳や桑原謙太朗、中谷将大、昨季の岩貞祐太や原口文仁といった選手たちの活躍は、他球団のファーム組織に大きな刺激を与えたものと思われます。いずれも、入団当初から見込んでいたタイミングで才能が開花せず、選手によっては戦力外の危機さえ迎えていましたが、現場首脳陣の交代により原石を見落とさずに済みました。秋山には制球力、桑原はスピード、岩貞は変化球、中谷や原口はパワーとアピールポイントがあったことで一軍定着のきっかけをつかみました。こうした選手は他球団にもいるかもしれません。

球団は、高卒投手の育成にも力を入れています。昨季は望月惇志、今季は才木浩人と全国的には無名ながら高校球界でも指折りの速球投手を獲得し、イニング管理を行った上で育成している最中です。望月は故障が長引いてしまいましたが、今月から始まったフェニックス・リーグでは先発として復帰を果たしています。投手の平均年齢も若くなってきたので、ドラフトでは高校生の野手指名に重点が置かれそうです。


千葉ロッテマリーンズ

井口資仁新監督の下、ファームにも様々な改革がもたらされる期待もありますが、そのためにはドラフトでの実のある補強が欠かせません。10月に入ってから井口監督を含む大量10名もの退団者を出した球団は、今オフ中にほぼ同人数の選手を獲得する必要があり、ドラフト以外に他球団から戦力外となった選手にもアンテナが向けられそうです。

球団は現在、平沢大河と成田翔以外にも、香月一也や岩下大輝といった将来性豊かな若手を保有していますが、チームの高齢化は着実に進んでおり、一軍の出場機会を得るチャンスも経験の差で逃してしまう可能性があります。再建には遠回りしてしまう恐れもありますが、ドラフトでは即戦力にこだわり過ぎず、大卒以下の若い選手を集めたグループを作るのも1つの手でしょう。とはいっても、シーズンを乗り切れるだけの選手を保有していなければチームが機能しなくなる場合もあるだけに、難しいオフになりそうです。


東京ヤクルトスワローズ

ロッテと同様に大勢の戦力外を出した球団は、来季から小川淳司監督が復帰、チームOBの宮本慎也氏がヘッドコーチに就任するなど、最初に首脳陣のテコ入れを行いました。現時点で5人もの投手が退団(外国人選手は除く)しただけに、ドラフトでは投手の大量指名が予想されますが、質を向上させることができるでしょうか。故障者が続出してしまう体質の改善も含め、やるべきことは山ほど残されています。

一方で、プロスペクト・ランキング40位以内に3名がランクインと、質の点では他球団に引けをとっていません。また、今季途中から山崎晃太朗、奥村展征ら若手を一軍に抜擢し、それなりの感触もつかんでいるはずであり、補強ポイントはおのずと絞り込まれてきます。外国人補強などで軸となる選手の獲得に成功すれば、一時的に強さを取り戻すことは可能ですが、何年にもわたり安定した戦いを続けるには、世代交代に備えた選手層の構築は欠かすことができません。



高多 薪吾 @hausmlb
個人サイトにて独自で考案したスタッツなどを紹介するほか、DELTAが配信するメールマガジンで記事を執筆。 投手の運用に関する考察を積極的に行っている。ファンタジーベースボールフリーク。

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