• 1.02 Column


フェンス上部への直撃打球に対する補正を実施


まず前提としてDELTAのUZR(Ultimate Zone Rating)が対象の左翼手にどのような評価を下しているかを押さえておきたい。


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守備範囲を表すRngRで中村晃(福岡ソフトバンク)が圧倒的な評価を得ている。決して走力や守備力で評価の高い選手ではないが、UZRでは昨季もトップクラスの値を記録している隠れたエリートだ。その中村と同一イニング換算で同レベルのUZRを残しているのは大田泰示(北海道日本ハム)である。大田は中村に守備範囲で劣る分、ARMで示した進塁抑止による貢献で補った。

同一イニング換算で最も高い数字を残しているのは今季から左翼にコンバートされた岡島豪郎(東北楽天)。DELTAのUZRではこのあたりの選手が高い評価を得ている。

私は前回のアワードでも外野手の分析を担当したが、その際主にフェンス際のフライ処理に対して改良を加えた。札幌ドームや横浜スタジアムなど一部の球場はフェンスが非常に高く、フェンスの上部に当たるような打球は本塁打と同じように捕球不可能な打球であるといえる。それらの打球を評価から除外することで、球場や運の差を取り除いたより正当な評価ができるのではないかと考えたからだ。

今回も打球処理に関してはこの方法を踏襲した。なお、同じフェンス直撃の打球でも捕球可能な高さと思われるものに関しては除外していない。RngRはDELTAの守備範囲評価、RngR-Fはフェンス上部直撃打球を除外した左翼手の打球処理評価だ。さきほどの評価にどの程度の変化が生まれるだろうか。


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フェンスの高い札幌ドームを本拠地としている大田のRngRが、DELTA算出の2.5から3.2に上昇している。大田はフェンス上部を直撃するような打球に多く対峙していたのだろう。そのほかの目立った変化としてはウラディミール・バレンティン(東京ヤクルト)が1.1上昇、それに対し中村が1.3、角中勝也(千葉ロッテ)が1.1下降している。

この評価法を用いることによる左翼手の数字の変化は小さなものだったが、同じ手法で中堅手の評価を行うと、桑原将志(横浜DeNA)と西川遥輝(北海道日本ハム)の数字に大きな変化が見られた。RngRにおいて桑原は5.1、西川は3.9も上昇していた。ともにフェンスの高い球場を本拠地にしてプレーする選手で、こうした打球が多く発生していた様子がわかる。

だが桑原と同じDeNAの筒香嘉智はこの評価法による上積みはなく、逆に-6.3から-6.4へと下降していた。本拠地のフェンスが高い選手全員がこの評価法で恩恵を受けるわけではないようだ。フェンス上部直撃の打球は年間90本程度と少ないため、どの選手が守っているときに発生するかはバラつきが出る。「フェンスの高い球場で多く守った選手は、こうした打球が多くあっただろう」という推測に基づき機械的に補正を行う手法は、守備評価においてはふさわしくなさそうだ。


ARMを改良。補殺時の評価を内野手と捕手にシェア


これに加え、進塁抑止に関する評価であるARMにも改良を施した。例えば1死二塁の場面でレフト前の単打が発生し、本塁に突入した二塁走者を左翼手から三塁手を中継し捕手に送り、本塁でアウトにした場合、従来のARMでは評価が与えられるのは左翼手のみである。しかし中継に参加した三塁手、また受けてタッチをした捕手にも評価が与えられるべきではないだろうか。今回は一連のカットプレーに参加した選手に貢献をシェアすることとした。

具体的には左翼手→三塁手→捕手という中継で補殺を成功させたのであれば、本来左翼手が得ていたポイント(貢献)を1/3ずつ三塁手と捕手に分け与える。左翼手から直接捕手に送球しアウトにしたのであれば、貢献は1/2ずつとなる。この割合が適正なのかという問題はあるが、今回は実験的にこの配分で行う。少なくとも中継プレーを完全に無視するよりは妥当な数字に近づくのではないだろうか。また今回シェアの対象としたのは補殺が発生した場面だけである。走者が先の塁を狙うことを阻んだプレーでは中継者や送球を受けた者の影響は小さいと考え対象外とした。

対象とした状況は従来のARMと同じで以下の通りである。

①→③ 単打発生時における一塁走者の三塁への進塁抑止
②→④ 単打発生時における二塁走者の本塁への進塁抑止
①→④ 二塁打発生時における一塁走者の本塁への進塁抑止
③→④ 走者三塁時における犠飛抑止

補殺発生時の中継カットプレーを加味した評価(ARM-C)は次のようなものとなった。


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どの選手もDELTAのARM評価より低くなっているのは、中継に参加した内野手や捕手に補殺時の評価をシェアしており、左翼手全体でゼロサムになるような仕組みではないからだ。補殺によって計上される貢献の総量が従来のARMよりも小さくなったため、補殺評価で数字を稼いでいた選手の数字が大きく下がり、補殺よりも進塁抑止が強みとなっていた選手が相対的に良い数字となっている。トップの大田が変わらず高い値を記録しているが、これは大田が補殺だけでなく進塁抑止でも多く利得を生み出していたためだ。

ちなみに外野の他のポジションでは、対象とした4つの状況で6つの補殺を記録していた右翼手・上林誠知(福岡ソフトバンク)の数値が3.7から-0.2まで下がった。6つの補殺はすべて捕手へのダイレクト送球だったため、価値は従来の1/2となる。上林は進塁抑止で優れた数値を残していなかったため、数字を維持できなかったようだ。

このフェンス上部への直撃打球を考慮したRngR-Fと補殺時の中継プレーを加味したARM-Cを足し、イニング換算せず高い順から並べたものを左翼手の最終評価とした。以下が私の左翼手評価だ。前段でも述べたようにARM-Cは左翼手全体でゼロサムになるようなつくりになっていないため、数字は「ポジション平均からどれだけ失点を防いだか」というUZRの思想からはやや外れている。順位づけの参考程度に見てほしい。


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改良を施したからといって劇的に順位が変わるほどの変化はなかった。先ほども述べたがフェンス上部に直撃するような打球は年間90本程度しかなく、またARMにおける補殺の評価は大きいが、UZR全体から見ればほんの一部であるということだろう。

結果的には昨季の左翼部門受賞者である西川が中堅にコンバートされたことで、昨季2位の評価を得ていた中村が繰り上げられるような形で1位になった。それでも身体能力の高い大田の登場や、楽天が岡島を左翼に、より守備力に不安のあるカルロス・ペゲーロを右翼に配置するなど、左翼手を取り巻く状況も変わってきているように感じる。『ビッグデータ・ベースボール』(トラヴィス・ソーチック著/KADOKAWA刊)ではピッツバーグ・パイレーツが本拠地PNCパークの広い左中間に対応するため、左翼に守備力の高いスターリング・マルテを起用した事例も紹介されていた。左翼が外野手で最も守備力のない選手が配置されるポジションであるという認識は、現実とずれたものになり始めているのかもしれない。


8人のアナリストによる採点と選出


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大南氏を含めた8人のアナリストが、それぞれの手法で500イニング以上を守った左翼手9人を評価した結果がこちらになります。ソフトバンク・中村選手が1位票を全て獲得。これに2位票が5票入った楽天・岡島選手、2票入った日本ハム・大田選手が続く形になりました。“1.02 FIELDING AWARDS 2017”の左翼手部門には、中村晃選手(福岡ソフトバンク)を選出します。




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