野球のデータ分析を手がける株式会社DELTAでは、先日、データで選ぶ守備のベストナイン“デルタ・フィールディング・アワード2026”を発表しました。ここでは投票を行ったアナリストが具体的にどのような手法で分析を行ったか、またその分析からの感想を紹介しながら、具体的に分析データを見ていきます。今回は中堅手編です。受賞選手一覧はこちらから。

対象中堅手に対するアナリスト7人の採点

中堅手部門は周東佑京(ソフトバンク)が69ポイントを獲得し、2024年・2025年に続く3年連続の受賞となりました。アナリスト7人中6人から1位票を集め、残る1人も2位。中堅手部門での3年連続受賞は、2016年に始まった本企画で周東が初めてです。周東の俊足は走塁だけでなく守備でも大きな武器になっています。

2位は渡部遼人(オリックス)。守備イニングは534と周東の半分ほどでしたが、4人から2位票を獲得しました。アナリスト宮下博志は出場機会あたりの評価では周東に匹敵するとしています。

周東以外で唯一1位票を獲得したのが4位の岩田幸宏(ヤクルト)です。アナリスト二階堂智志は本拠地球場の守りやすさの違いを補正して評価しました。補正をしなければ周東が1位で、岩田との間には差がありました。しかし補正によってその差が10点以上縮まり、順位が入れ替わったとのことです。

過去の受賞者では、2021年受賞の辰己涼介(楽天)が5位、2020年と2023年に受賞した近本光司(阪神)が7位でした。この2人に6位の岡林勇希(中日)を加えた3人はゴールデングラブ賞の常連です。近本と辰己は昨季まで5年連続、岡林は4年連続で受賞しており、今季も有力な候補とみられます。しかし本企画のアナリストの評価では3人とも上位に入りませんでした。

  • 各アナリストの評価手法
  • 岡田:ベーシックなUZR(守備範囲+進塁抑止+失策回避)をやや改良。守備範囲については、打球の滞空時間別に細分化して分析
  • 道作:現時点の実力を安定して測れる期間として、直近3年間の守備成績から順位付け
  • 佐藤:UZRをベースにした。球場と左右打者別に処理した飛球(フライ・ライナー)の着弾点座標と滞空時間からアウト期待値を求め、評価の補助材料にした。走者二塁・三塁で飛球を捕った場面の進塁期待値も補助的に用いた
  • 市川:UZRと同様の守備範囲、進塁抑止、失策回避の3項目を考慮。ただし守備範囲についてはUZRとは異なる評価法を採用。定位置付近からの打球方向を6分割し、距離と滞空時間で区分し分析
  • 宮下:守備範囲、進塁抑止評価を機械学習によって算出。過去3年と比較しゼロサムになるよう調整
  • 二階堂:UZRに球場補正を加えて評価
  • 沖原:打球処理、進塁抑止(打者走者を含む)を一般化線形混合モデルで評価。球場や走者の走力などの外部要因を補正し、環境に左右されない守備貢献度を推定

UZRの評価

各アナリストの採点を見たところで、いま一度UZR(Ultimate Zone Rating)で行ったベーシックな守備評価を確認しておきましょう。

ここでもトップは周東。UZRは14.4と2位以下を10点以上引き離しました。守備範囲評価RngRと進塁抑止評価ARMも対象10人で最も高い数字です。

各選手が具体的にどのような打球を得意・不得意としているのか、処理状況を確認していきましょう。以降の図の値は平均的な中堅手と比較してそのゾーンの打球処理でどれだけ失点を防いだかを示します。黄色い円に「定」と書かれた印はおおよその定位置を表しています。

周東佑京(ソフトバンク)

周東は1067.1イニングを守り、守備範囲評価は9.4。平均的な中堅手と比べて守備範囲でチームの失点を9.4点防いだという評価です。全体的に赤いエリアが広がっており、特に左中間の打球で大きな差をつけました。左中間後方の打球への強さは昨季から一貫しています。

渡部遼人(オリックス)

渡部は534イニングを守り、守備範囲評価は7.1。イニングあたりで見れば周東を上回る数字です。周東とは対照的に右中間の打球で圧倒的な強さを見せました。オリックスの中堅手全体のUZRは2014年以降の13シーズンのうち9シーズンでマイナス。合計すると-53.4点に上ります。長年中堅の守備で失点を増やしてきたチームにとって渡部は大きな存在になりそうです。

辰己涼介(楽天)

辰己は1145.1イニングを守り、守備範囲評価は0.8。どの方向においてもプラスとマイナスのエリアが混在しており、方向による得意・不得意ははっきりしません。それでも昨季の大きなマイナスからは持ち直しました。肩の評価は高く、アナリスト宮下の評価では辰己の進塁抑止は全ポジションを通じて1位だったそうです。一方でアナリスト沖原大知は、辰己が長打の抑止で一貫して後れをとっている点を指摘しています。

大盛穂(広島)

大盛は744イニングを守り、守備範囲評価は2.2。定位置前後の打球でプラスを積み上げた一方、フェンス際の打球ではやや失点を増やしたようです。

岩田幸宏(ヤクルト)

岩田は924.2イニングを守り、守備範囲評価は5.5。フェンス際の深い打球に強く、特に左中間からセンター後方にかけて失点を防いでいます。

近本光司(阪神)

近本は807.1イニングを守り、守備範囲評価は2.0。左中間と右中間のフェンス際の打球ではプラスを作った一方、その手前の打球で失点を増やしています。昨季は特定の方向に偏らず多くのエリアで失点を防ぎ守備範囲評価も11.5と高い数字でしたが、今季は昨季ほどの安定感がありませんでした。

岡林勇希(中日)

岡林は660.1イニングを守り、守備範囲評価は1.6。左中間の打球を得意とする一方、中堅後方のフェンス際や右中間後方の打球では失点を増やしました。昨季は左中間と前方の打球で失点を増やしており、一貫した傾向が見えているわけではありません。岡林は右翼を守っていた2022年に、UZR19.7という圧倒的な数字を残し右翼手部門を受賞した選手です。しかしコンバート以降は、レベルの高い中堅手の争いの中で抜け出せていません。

蝦名達夫(DeNA)

蝦名は678イニングを守り、守備範囲評価は-6.2。後方のフェンス際の打球で大きく失点を増やしています。

西川愛也(西武)

西川は719.2イニングを守り、守備範囲評価は-6.4。定位置より前の打球に強い傾向は昨季から変わりません。一方で後方の打球処理が芳しくなく、昨季5.1だった守備範囲評価はマイナスに転じました。

藤原恭大(ロッテ)

藤原は512.2イニングを守り、守備範囲評価は-6.5。右中間のフェンス際の打球で特に失点を増やしています。藤原は右翼では2024年と昨季にUZRで大きなプラスを記録した一方、中堅では2023年、昨季、今季とマイナスでした。中堅よりも右翼のほうが力を発揮しやすい選手なのかもしれません。

総評

周東は中堅手部門初の3年連続受賞者となりました。UZRでも2位以下を大きく引き離しており、今季も議論の余地の少ない受賞だったといえます。ただし周東もすでに30歳。来季は31歳で開幕を迎えます。今後もこの守備範囲を保てるかに注目です。

またソフトバンクは中堅だけでなく外野全体でも突出していました。外野3ポジションのUZRを合計すると+41.0で12球団1位。2位の楽天(+10.5)とは30点の差があります。右翼手部門では柳町達が受賞し、左翼手部門でも近藤健介が2位に入りました。あまり目立ちはしませんが、外野守備能力の高さも圧勝の要因でした。

アナリスト道作は、最高の守備の名手が試合に出られているとは限らないと指摘しています。打撃を伸ばさなければ出場機会が限られ、本企画の対象にも入れません。渡部や髙部瑛斗(ロッテ)、五十幡亮汰(日本ハム)には同じことがいえるとのこと。守備イニングが500に届かず対象外となった五十幡は、367.2イニングでUZR7.8と周東に次ぐ数字を残しています。

来季以降も周東の時代が続くのか。それとも出場機会に恵まれない名手たちが打撃を伸ばし、台頭してくるのか。中堅手部門の行方に注目です。


データ視点で選ぶ守備のベストナイン “デルタ・フィールディング・アワード2026”受賞選手発表

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