野球のデータ分析を手がける株式会社DELTAでは、2026年の日本プロ野球での野手の守備による貢献をポジション別に評価し表彰する“デルタ・フィールディング・アワード2026”を発表します。これはデータを用いて各ポジションで優れた守備を見せた選手――いうならば「データ視点での守備のベストナイン」を選出するものです。

“デルタ・フィールディング・アワード”について

“デルタ・フィールディング・アワード”は、米国のデータ分析会社Sports Info Solutionsが実施しているデータを用いた選手の守備評価表彰“THE FIELDING BIBLE AWARDS”に倣ったものです。“THE FIELDING BIBLE AWARDS”は2006年から行われており、この流れを受け米国ではデータ視点で守備を評価する流れが非常に強くなっています。MLBでは近年、ゴールドグラブ賞の選定にデータを考慮するという方針転換が行われました。データの視点で守備を評価することの優先度が高くなっていることは確かなようです。

DELTAでは、日本においてもこうしたデータ分析を通じた守備の評価を定着させるため、2016年よりこうした表彰を行っており、今年が11回目となります。今回は7人のアナリストが参加し、2026年シーズンにおける野手の守備について、それぞれの手法で分析・評価・採点を行いました。

セイバーメトリクスの守備指標というと、UZR(Ultimate Zone Rating)が一般的にも知られるようになってきています。こうした指標がある以上、それぞれのアナリストがまた別に分析をやり直し、投票を行う必要はないのではないかと思われるかもしれません。しかし、UZRは守備による貢献を評価するベーシックな手法の1つに過ぎません。グラウンドでは数多くの出来事が発生しますが、それをどのように拾い上げて守備の評価に用いるか、その手法はいくらでもあります。“デルタ・フィールディング・アワード”では、より多角的な視点による分析を評価に反映させるため、こうした手法をとっています。

過去のフィールディング・アワードの結果はこちらから
2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年

評価の対象選手

  • 2026年に各ポジションで500イニング以上を守った選手
  • ユーティリティ部門は全ポジションの合計で500イニング以上を守り、1つのポジションが占める割合が守備イニング全体の70%未満の選手

選出方式

7人のアナリストがそれぞれの評価に基づき、対象選手に1位=10ポイント、2位=9ポイント……10位=1ポイント、11位以下は0ポイントといったかたちで採点し、合計ポイントがポジション内で最も高かった選手を選出。ポイントが並んだ場合、上位票が多かった選手を上位とする。

参加アナリスト

“デルタ・フィールディング・アワード2026”受賞選手

それでは受賞者を発表していきます。

捕手:坂本誠志郎(阪神)

捕手部門では坂本誠志郎(阪神)がアナリスト7人全員から1位票を獲得し、満票で受賞しました。坂本は2023年以来、3年ぶり2回目の受賞です。

本企画ではフレーミング(ストライクコールを呼び込む捕球)も評価対象としています。ただ近年はこのスキルについて重点的に練習に取り組む選手も多くなっており、昨年の本企画ではフレーミングで捕手の間に差がつきにくくなってきたことを取り上げました。ところが今季はそのフレーミングで坂本が他の捕手を大きく引き離しているようです。アナリスト二階堂智志の評価では、坂本の守備による貢献は+17.9点。そのうち+14.8点をフレーミングが占めました。アナリスト沖原大知も「近年は捕手間のフレーミングの差が縮小していたが、今年は一部の捕手で拡大した」と指摘しています。

2位は若月健矢(オリックス)。フレーミングとブロッキングの両方で高い評価を受けました。アナリスト宮下博志は、対象13人のうち12人が平均から-4点以内に収まった点に注目。守備力の低い捕手は戦力として定着しにくく、NPB全体で捕手に求められる守備の水準が上がっているのではという指摘がありました。

過去の受賞者(捕手)
2016年 若月健矢(オリックス)
2018年 小林誠司(読売)
2019年 梅野隆太郎(阪神)
2020年 木下拓哉(中日)
2021年 大城卓三(読売)
2022年 大城卓三(読売)
2023年 坂本誠志郎(阪神)
2024年 中村悠平(ヤクルト)
2025年 太田光(楽天)
2026年 坂本誠志郎(阪神)

一塁:佐野恵太(DeNA)

一塁は佐野恵太(DeNA)がアナリスト7人中3人から1位票を獲得し、初受賞となりました。合計60ポイントでタイラー・ネビン(西武)と並びましたが、上位票が多い選手をより上位とするという規定により、佐野が上回りました(1位票の数は佐野3、ネビン2)。

佐野は昨季まで主に左翼を守っていた選手です。本企画の左翼部門では2022年以降の4年間で3度最下位。外野の中でレベルの高くない左翼手部門の中でも下位に沈む選手でした。それが今季は一塁で868.2イニングを守り、UZRは+6.0。対象の一塁手で最も高い値です。アナリスト二階堂によれば、評価の中心は守備範囲。一塁へのコンバートは大成功だったと見てよいかもしれません。

ネビンも守備範囲で高い評価を受けました。3位のミゲル・サノー(中日)にはアナリスト2人が1位票を投じています。アナリスト佐藤文彦は、アウトにするのが難しいゴロを多く処理していた点でサノーを高く評価しました。

一方、2023年の受賞者である大山悠輔(阪神)は10位に沈みました。アナリスト道作によれば、併殺の起点にほとんどなれていないなど、打球に関わる機会そのものが減っているようです。

過去の受賞者(一塁)
2016年 中田翔(日本ハム)
2017年 ホセ・ロペス(DeNA)
2018年 井上晴哉(ロッテ)
2019年 内川聖一(ソフトバンク)
2020年 ダヤン・ビシエド(中日)
2021年 中村晃(ソフトバンク)
2022年 ネフタリ・ソト(DeNA)
2023年 大山悠輔(阪神)
2024年 山川穂高(ソフトバンク)
2025年 増田陸(読売)
2026年 佐野恵太(DeNA)

二塁:小川龍成(ロッテ)

二塁は小川龍成(ロッテ)がアナリスト7人全員から1位票を獲得し、満票で初受賞となりました。

二塁は2023年から3年連続で吉川尚輝(読売)が受賞してきました。しかし今季の吉川は故障で離脱し、対象となる500イニングに届いていません。本命不在となったシーズンでトップとなったのが小川でした。今季は二塁に定着して1022イニングを守り、UZRはなんと+18.4にまで達しました。アナリスト宮下も「ほとんど議論の余地がない」とするほどの独走でした。

2位は田中幹也(中日)。イニングは546.1にとどまりましたが、アナリスト宮下は1000イニングあたり+10点前後という数字を挙げ、故障がなければ小川の有力な対抗馬になっていたかもしれないとしています。

なお菊池涼介(広島)は今回対象12人中12位。かつての名手にも、加齢による衰えが色濃く現れてきているように見えます。

過去の受賞者(二塁)
2016年 菊池涼介(広島)
2017年 菊池涼介(広島)
2018年 菊池涼介(広島)
2019年 阿部寿樹(中日)
2020年 外崎修汰(西武)
2021年 外崎修汰(西武)
2022年 外崎修汰(西武)
2023年 吉川尚輝(読売)
2024年 吉川尚輝(読売)
2025年 吉川尚輝(読売)
2026年 小川龍成(ロッテ)

三塁:佐々木泰(広島)

三塁は佐々木泰(広島)がアナリスト7人中4人から1位票を獲得し、初受賞となりました。2位の渡部聖弥(西武)とは3ポイント差。佐々木と渡部はともに2024年のドラフトで大学から入団した2年目の選手で、若い2人による争いとなりました。

この2人のどちらを上位にするかは評価が割れています。アナリスト沖原は、守備範囲と併殺で渡部が圧倒的だったと指摘。佐々木については守りにくい球場を本拠地にしながら優れた打球処理を見せた一方、守備機会に恵まれた分を割り引いて評価したそうです。

昨季受賞の佐藤輝明(阪神)は10位。アナリスト宮下は選手個人としては三塁より外野のほうが適していると見る一方、チームの控え選手の層を考えると三塁で出場するほうがチーム全体ではプラスを作れる可能性があるとしています。

過去の受賞者(三塁)
2016年 松田宣浩(ソフトバンク)
2017年 宮﨑 敏郎(DeNA)
2018年 松田宣浩(ソフトバンク)
2019年 大山悠輔(阪神)
2020年 岡本和真(読売)
2021年 茂木栄五郎(楽天)
2022年 安田尚憲(ロッテ)
2023年 栗原陵矢(ソフトバンク)
2024年 栗原陵矢(ソフトバンク)
2025年 佐藤輝明(阪神)
2026年 佐々木泰(広島)

遊撃:友杉篤輝(ロッテ)

遊撃は友杉篤輝(ロッテ)がアナリスト7人中4人から1位票を獲得し、初受賞となりました。

友杉は昨季も本部門で2位に入っていた選手です。この受賞により、ロッテは二塁の小川とともに二遊間がそろって受賞しました。同じ球団の二遊間がそろって受賞するのは、2020-22年の西武(外崎・源田)、昨季の読売(吉川・泉口)に続いて3例目。友杉の守備イニングは655.2と多くありませんが、アナリスト宮下は圧倒的な守備範囲評価を挙げています。アナリスト沖原も打力を伸ばして出場機会を増やせば、小川とともに守備でかなりのアドバンテージを得られると見ているようです。来季以降上位復帰を狙うロッテのカギとなるかもしれません。

2位の源田壮亮(西武)は、2017年から2022年まで6年連続で受賞した名手。しかし近年は評価を落とし、昨季は本部門で5位。複数のアナリストから守備範囲が狭くなっているとの指摘を受けていました。このまま衰えていくのかと思われた中で、今季はUZR+11.5と大きく巻き返しています。アナリスト道作は、33歳で再び最良の指標をたたき出したことを「メジャーでもかなり珍しい」とし、歴史的にも上位の名手と評しています。

過去の受賞者(遊撃)
2016年 安達了一(オリックス)
2017年 源田壮亮(西武)
2018年 源田壮亮(西武)
2019年 源田壮亮(西武)
2020年 源田壮亮(西武)
2021年 源田壮亮(西武)
2022年 源田壮亮(西武)
2023年 長岡秀樹(ヤクルト)
2024年 矢野雅哉(広島)
2025年 泉口友汰(読売)
2026年 友杉篤輝(ロッテ)

左翼:西川史礁(ロッテ)

左翼は西川史礁(ロッテ)がアナリスト7人中5人から1位票を獲得し、2年連続2回目の受賞となりました。

2位は2023年、2024年の受賞者である近藤健介(ソフトバンク)、3位は度会隆輝(DeNA)。2人とも1位票を1票ずつ獲得し、西川と最後まで争いました。アナリスト市川の評価でも西川と近藤の差はわずかだったようです。度会は肩の評価で抜けており、アナリスト二階堂は度会を1位にしています。

ちなみに西川は右翼でも2位、ユーティリティ部門でも3位に入りました。左翼と右翼の両方で上位に名を連ねたことになります。

2027年からはセ・リーグにも指名打者が導入される予定です。これまで左翼は指名打者制がないセ・リーグに守備力の低い選手が集中する傾向にありましたが、来季からは変わってくるかもしれません。

過去の受賞者(左翼)
2016年 西川遥輝(日本ハム)
2017年 中村晃(ソフトバンク)
2018年 島内宏明(楽天)
2019年 金子侑司(西武)
2020年 青木宣親(ヤクルト)
2021年 荻野貴司(ロッテ)
2022年 西川遥輝(楽天)
2023年 近藤健介(ソフトバンク)
2024年 近藤健介(ソフトバンク)
2025年 西川史礁(ロッテ)
2026年 西川史礁(ロッテ)

中堅:周東佑京(ソフトバンク)

中堅は周東佑京(ソフトバンク)がアナリスト7人中6人から1位票を獲得し、3年連続3回目の受賞となりました。

70ポイント中69ポイントを獲得し、周東以外への1位票は岩田幸宏(ヤクルト)への1票だけでした。周東のUZRは+14.4。アナリスト市川の分析では15点以上の失点を防いだほか、送球での進塁抑止についても高く評価されていたようです。とはいえ周東も今季で30歳。年齢を重ねるにつれ、これまでの守備範囲を保つのは難しくなっていくかもしれません。来季以降もこの水準を維持できるかに注目です。

2位は渡部遼人(オリックス)。わずか534イニングの出場にとどまりましたが、アナリスト宮下は出場機会あたりの評価では周東に匹敵するとしています。

過去の受賞者(中堅)
2016年 丸佳浩(広島)
2017年 丸佳浩(広島)
2018年 桑原将志(DeNA)
2019年 神里和毅(DeNA)
2020年 近本光司(阪神)
2021年 辰己涼介(楽天)
2022年 塩見泰隆(ヤクルト)
2023年 近本光司(阪神)
2024年 周東佑京(ソフトバンク)
2025年 周東佑京(ソフトバンク)
2026年 周東佑京(ソフトバンク)

右翼:柳町達(ソフトバンク)

右翼は柳町達(ソフトバンク)がアナリスト7人中6人から1位票を獲得し、初受賞となりました。

右翼は2023年から3年連続で万波中正(日本ハム)が受賞してきましたが、今季は4位に終わりました。UZRは昨季の+9.0から今季は-2.6へ大幅に下落。アナリスト沖原によれば、長打の抑止では優秀だった一方、アウトを取るという面では過去と比べて落ち込んだシーズンだったようです。アナリスト道作も「右翼専業の名手誕生かと思っていただけに今季の数字は残念」と話しています。

受賞した柳町は、昨季の左翼部門で2位に入った選手です。今季は右翼で537.2イニングと機会は多くありませんでしたが、アナリスト市川によれば前方の打球に強く、滞空時間が短い打球から中程度の打球で数字を伸ばしたようです。

2位は左翼部門を受賞した西川史礁(ロッテ)。アナリスト宮下は主力級の右翼手の守備が不安定なシーズンだったとしています。

過去の受賞者(右翼)
2016年 鈴木誠也(広島)
2017年 上林誠知(ソフトバンク)
2018年 上林誠知(ソフトバンク)
2019年 平田良介(中日)
2020年 大田泰示(日本ハム)
2021年 岡島豪郎(楽天)
2022年 岡林勇希(中日)
2023年 万波中正(日本ハム)
2024年 万波中正(日本ハム)
2025年 万波中正(日本ハム)
2026年 柳町達(ソフトバンク)

ユーティリティ:滝澤夏央(西武)

ユーティリティは滝澤夏央(西武)がアナリスト7人中6人から1位票を獲得し、2年連続2回目の受賞となりました。

二塁で503イニング、遊撃で487イニングと、競争力の高い二遊間を両方こなし、どちらでも高いパフォーマンスを見せました。アナリスト市川は、シーズンを通してどちらかに固定されればトップクラスの成績を残せるだろうと見ています。来季以降の起用に注目です。

2位は同じ西武の平沢大河。アナリスト二階堂によれば、内外野5ポジションを守り、三塁を中心に打球処理の能力の高さを発揮しました。

今年もユーティリティ部門については、何を重視して評価するかがアナリストによって分かれました。アナリスト宮下は守ったポジションの組み合わせを重視し、一塁・二塁・三塁・外野を守った赤羽由紘(ヤクルト)を1位にしています。3つ以上の守備グループで一定以上出場した唯一の選手だったためです。

過去の受賞者(ユーティリティ)
2025年 滝澤夏央(西武)
2026年 滝澤夏央(西武)

 

なお、アナリストの採点、各ポジションについての批評は、後日別記事で公開いたします。どうぞ楽しみにお待ちください。

  • “デルタ・フィールディング・アワード2026”受賞者
  • 捕手 坂本誠志郎(阪神)
  • 一塁 佐野恵太(DeNA)
  • 二塁 小川龍成(ロッテ)
  • 三塁 佐々木泰(広島)
  • 遊撃 友杉篤輝(ロッテ)
  • 左翼 西川史礁(ロッテ)
  • 中堅 周東佑京(ソフトバンク)
  • 右翼 柳町達(ソフトバンク)
  • ユーティリティ 滝澤夏央(西武)
過去のフィールディング・アワードの結果はこちらから
2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年
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