野球のデータ分析を手がける株式会社DELTAでは、先日、データで選ぶ守備のベストナイン“デルタ・フィールディング・アワード2026”を発表しました。ここでは投票を行ったアナリストが具体的にどのような手法で分析を行ったか、またその分析からの感想を紹介しながら、具体的に分析データを見ていきます。今回は左翼手編です。受賞選手一覧はこちらから。

対象左翼手に対するアナリスト7人の採点

左翼手部門は西川史礁(ロッテ)が67ポイントを獲得し、新人だった昨季に続く2年連続の受賞となりました。アナリスト7人中5人から1位票を集め、残る2人も2位、3位票を入れています。ちなみに西川史は右翼手部門でも2位。両翼どちらを守っても上位の評価を受けています。

2位は2023年、2024年の受賞者である近藤健介(ソフトバンク)。昨季は故障で対象外でしたが、今季は61ポイントで西川史に迫りました。3位の度会隆輝(DeNA)は近藤と1ポイント差の60ポイント。近藤と度会は1位票を1票ずつ分け合っています。度会に1位票を投じたアナリスト二階堂智志は、進塁抑止での貢献を高く評価しました。2位票を投じたアナリスト宮下博志もその進塁抑止を圧倒的と評しています。

  • 各アナリストの評価手法
  • 岡田:ベーシックなUZR(守備範囲+進塁抑止+失策回避)をやや改良。守備範囲については、打球の滞空時間別に細分化して分析
  • 道作:現時点の実力を安定して測れる期間として、直近3年間の守備成績から順位付け
  • 佐藤:UZRをベースにした。球場と左右打者別に処理した飛球(フライ・ライナー)の着弾点座標と滞空時間からアウト期待値を求め、評価の補助材料にした。走者二塁・三塁で飛球を捕った場面の進塁期待値も補助的に用いた
  • 市川:UZRと同様の守備範囲、進塁抑止、失策回避の3項目を考慮。ただし守備範囲についてはUZRとは異なる評価法を採用。定位置付近からの打球方向を6分割し、距離と滞空時間で区分し分析
  • 宮下:守備範囲、進塁抑止評価を機械学習によって算出。過去3年と比較しゼロサムになるよう調整
  • 二階堂:UZRに球場補正を加えて評価
  • 沖原:打球処理、進塁抑止(打者走者を含む)を一般化線形混合モデルで評価。球場や走者の走力などの外部要因を補正し、環境に左右されない守備貢献度を推定

UZRの評価

各アナリストの採点を見たところで、いま一度UZR(Ultimate Zone Rating)で行ったベーシックな守備評価を確認しておきましょう。

UZRのトップは度会の6.3。近藤が6.1、西川史が4.8と続き、上位3人が4位以下を大きく引き離しました。西川史はアナリストの採点では1位でしたが、UZRでは度会と近藤に次ぐ3位です。UZRだけで順位を決めていれば、受賞者は変わっていました。アナリストそれぞれが異なる手法で評価する本企画ならではの結果です。

一方で下位の2人は大きなマイナスでした。最も多く左翼を守った細川成也(中日)は-9.9、ドミンゴ・サンタナ(ヤクルト)は-13.4。2人とも昨季に続いてのマイナスです。

各選手が具体的にどのような打球を得意・不得意としているのか、処理状況を確認していきましょう。以降の図の値は平均的な左翼手と比較してそのゾーンの打球処理でどれだけ失点を防いだかを示します。黄色い円に「定」と書かれた印はおおよその定位置を表しています。

度会隆輝(DeNA)

度会は605.2イニングを守り、守備範囲評価は2.3。平均的な左翼手と比べて守備範囲でチームの失点を2.3点防いだという評価です。今季はライン際の後方や左中間の前寄りでプラスを作った一方、左中間の後方ではマイナスでした。UZRでトップに立てたのは、進塁抑止評価ARMの3.6によるところが大きいといえます。

近藤健介(ソフトバンク)

近藤は754.2イニングを守り、守備範囲評価は5.4と対象9人で最も高い数字です。今季は特に左中間の後方の打球で大きなプラスを作りました。近藤も今季で33歳。受賞した2023年と2024年にはUZRで10点を超えるプラスを記録していました。当時ほどではないものの、年齢を重ねても運動能力は高く、左翼では依然として違いを作れる選手です。

西川史礁(ロッテ)

左翼手部門受賞の西川史は588イニングを守り、守備範囲評価は4.5。大きく崩れたゾーンがなく、どの方向の打球もまんべんなく処理しています。右翼手編で取り上げた右翼での処理状況も同じく偏りのないものでした。アナリスト市川博久も、どの方向にも大きな弱点がなく、自身に近い距離の打球を得意としていたと評価しています。

松本剛(読売)

松本は529イニングを守り、守備範囲評価は0.2と左翼手の平均並みでした。松本は守備に定評のある外野手で、2023年は左翼でUZR11.7、2024年は中堅でUZR11.5を記録。2024年の本企画では中堅手部門で2位に入りました。しかしそんな松本も今季で33歳。年齢を重ねたせいか、守備に課題のある選手が多い左翼でも傑出できていません。

中島大輔(楽天)

中島は543.1イニングを守り、守備範囲評価は2.6。今季は左中間の後方でプラスを作った一方、ライン際の後方ではマイナスでした。中島は昨季、左翼で375.1イニング、右翼で470.1イニングを守り、UZRはそれぞれ10.3と9.0。短いイニングながら両翼で大きなプラスを記録していました。今季も右翼では350.1イニングでUZR6.0と好成績を残しましたが、左翼では昨季ほどの数字を残せていません。

サンドロ・ファビアン(広島)

ファビアンは712イニングを守り、守備範囲評価は-1.8。今季は前方の打球でプラスを作った一方、ライン際と左中間の後方で失点を増やしました。前方でプラス、後方でマイナスという傾向は昨季と同じで、後方の打球を苦手としているのかもしれません。アナリスト沖原大知は、ファビアンは言葉どおりの「守備範囲」では優秀だが、その積極性からか打者走者の進塁を多く許していると指摘しています。

西川龍馬(オリックス)

西川龍は733イニングを守り、守備範囲評価は-5.4。今季はライン際の前方でプラスを作った一方、左中間からライン際まで後方の打球でマイナスでした。左中間で失点を増やす傾向はすでに数年続いており、苦手としているのは間違いなさそうです。

細川成也(中日)

細川は1193.1イニングを守り、守備範囲評価は-14.2。定位置付近を含め、多くのゾーンで失点を増やしています。一方で進塁抑止評価ARMは3.6と対象9人で最も高い数字でした。

ドミンゴ・サンタナ(ヤクルト)

サンタナは731.2イニングを守り、守備範囲評価は-9.7。大きく崩れたゾーンは少ないものの、小さなマイナスが全体に広がっています。それでも左翼を守るようになった2024年以降で比べると、1200イニングあたりに換算したUZRは今季が最も小さなマイナスで済んでいます。

総評

西川史は新人から2年連続の受賞となりました。来季以降もこの部門の中心になっていきそうです。

セ・リーグでは2027年から指名打者制が導入されます。今季下位に沈んだ細川とサンタナはどちらもセ・リーグの選手で、アナリスト沖原は2選手にとって指名打者制の導入は追い風になると見ています。アナリスト宮下も、セの左翼は守備力の低い主力と守備力の高い若手・控えという構図が強いと指摘。指名打者制による起用法の変化にはやはり注目しているようです。

セ・リーグでは金本知憲やアレックス・ラミレスに代表されるように、守備に目をつぶってでも左翼に強打者を置く起用が長らく続いてきました。指名打者制の導入で、セ・リーグ左翼手の打撃偏重も終わりを迎えるのかもしれません。


データ視点で選ぶ守備のベストナイン “デルタ・フィールディング・アワード2026”受賞選手発表

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