野球のデータ分析を手がける株式会社DELTAでは、先日、データで選ぶ守備のベストナイン“デルタ・フィールディング・アワード2026”を発表しました。ここでは投票を行ったアナリストが具体的にどのような手法で分析を行ったか、またその分析からの感想を紹介しながら、具体的に分析データを見ていきます。今回は遊撃手編です。受賞選手一覧はこちらから。

対象遊撃手に対するアナリスト7人の採点

遊撃手部門は友杉篤輝(ロッテ)が67ポイントを獲得し、初の受賞となりました。2024年は3位、昨季は2位と、1つずつ順位を上げての受賞です。

2位は65ポイントの源田壮亮(西武)。2017年から2022年まで6年連続でこの部門を受賞した名手です。昨季は5位に沈みましたが、今季は友杉に2ポイント差まで迫る好成績。1位票は友杉が4票、源田が3票。トップ評価は2人の間で割れています。友杉に1位票を投じたアナリスト宮下博志はその守備範囲を圧倒的と評しています。一方で源田を1位としたアナリスト二階堂智志によると、球場補正を加えた評価では源田がわずかに友杉を上回ったとのことです。

源田以降、この部門の受賞者は毎年入れ替わってきました。2023年は長岡秀樹(ヤクルト)、2024年は矢野雅哉(広島)、昨季は泉口友汰(読売)。友杉の受賞で4年続けての交代です。そんな中でもベテランの源田が巻き返してきたのが印象的なランキングになっています。

  • 各アナリストの評価手法
  • 岡田:ベーシックなUZR(守備範囲+併殺+失策回避)をやや改良。守備範囲については、打球の滞空時間別に細分化して分析。送球の安定性も加味
  • 道作:現時点の実力を安定して測れる期間として、直近3年間の守備成績から順位付け
  • 佐藤:UZRをベースにした。球場と左右打者別に処理したゴロのゾーンと捕球までの時間からアウト期待値を求め、評価の補助材料にした
  • 市川:UZRと同様の守備範囲、併殺奪取、失策回避の3項目を考慮。守備範囲は打球の強さとゾーンで区分し、併殺奪取は捕球した守備位置、打球の強さ、打者の左右で区分して得点化
  • 宮下:守備範囲、併殺評価を機械学習によって算出。過去3年と比較しゼロサムになるよう調整
  • 二階堂:UZRに球場補正を加えて評価
  • 沖原:打球処理(併殺や打球を外野に抜けさせない貢献も含む)と、一塁手のスクープが必要になる送球を一般化線形混合モデルで評価。球場や打者の走力などの外部要因を補正し、環境に左右されない守備貢献度を推定

UZRの評価

各アナリストの採点を見たところで、いま一度UZR(Ultimate Zone Rating)で行ったベーシックな守備評価を確認しておきましょう。

UZRのトップは源田の11.5。アナリストの採点では友杉が1位でしたが、UZRで見ると順位が入れ替わっています。こちらも左翼手編同様、アナリストそれぞれが異なる手法で評価する本企画ならではの結果です。ちなみに源田がUZRで2桁を記録したのは2022年以来でした。友杉は7.6で2位、庄子雄大(ソフトバンク)が5.7で続きました。

下位には長岡の-9.8、村林一輝(楽天)の-9.0、小園海斗(広島)の-8.9が並びました。

各選手が具体的にどのような打球を得意・不得意としているのか、処理状況を確認していきましょう。以降の図の値は平均的な遊撃手と比較してそのゾーンの打球処理でどれだけ失点を防いだかを示します。黄色い円に「定」と書かれた印はおおよその定位置を表しています。定位置より左が三遊間、右が二遊間の方向です。

源田壮亮(西武)

源田は801.2イニングを守り、守備範囲評価は8.9。平均的な遊撃手と比べて守備範囲でチームの失点を8.9点防いだという評価です。二遊間に強く三遊間でわずかに失点する形は2024年と昨季の記事でも指摘してきた源田の傾向で、今季も変わっていません。ただ全体的に処理状況は良化しており、昨季は小さくなっていた二遊間のプラスも今季は再び大きな数字に戻っています。

友杉篤輝(ロッテ)

遊撃手部門受賞の友杉は655.2イニングを守り、守備範囲評価は9.3と対象11人で最も高い数字です。友杉が得意なのはとにかく定位置から離れた打球処理。二塁ベースの後方、三遊間と、定位置から遠い打球ほど大きなプラスを作りました。定位置から遠い打球で稼ぐ形は2024年と昨季の記事でも見られたものでした。一方、定位置付近の打球ではわずかにマイナスに。アナリスト市川博久も失策を防ぐという点で源田に及ばなかったと指摘しており、守備範囲内の打球を確実にアウトにすることには課題があるのかもしれません。

庄子雄大(ソフトバンク)

庄子は615.1イニングを守り、守備範囲評価は5.9。今季は二塁ベースの後方を中心に二遊間の打球でプラスを作った一方、三遊間を抜ける打球は少なくなかったようです。

宗山塁(楽天)

宗山は582イニングを守り、守備範囲評価は3.3。新人だった昨季は969.1イニングでUZR-2.6でしたが、今季は4.2とプラスに転じています。昨季の記事で課題に挙げたのは三遊間の深い打球でした。その三遊間でのパフォーマンスが今季は改善。小さなマイナスが出る程度に抑えています。また今季は失策のペースも減少しており、昨季は-2.8だった失策抑止評価が今季はプラス。2年目を迎えプロ仕様の遊撃手になったことを感じさせます。

村松開人(中日)

村松は1083.2イニングを守り、守備範囲評価は7.4。守備範囲では友杉や源田に迫る数字を残しました。ここまで紹介した遊撃手には二遊間に強い選手が多い中、村松は三遊間の打球で大きなプラスを作る三遊間型。一方二遊間ではマイナスです。課題は失策の多さ。失策抑止評価は-3.6と対象11人で最も低く、UZRは4.1にとどまりました。広い守備範囲にもかかわらず最上位に食い込めなかったかたちです。

紅林弘太郎(オリックス)

紅林は1158イニングと対象11人で最も多く遊撃を守り、守備範囲評価は1.9でした。UZRは3.7。2021年から5年続いたマイナスを脱しました。

処理傾向としては、二塁アンツーカー周辺の打球でプラスを作った一方、定位置から三遊間寄りの打球では大きなマイナスです。二遊間に強く三遊間で失点する傾向は2024年や昨季も同様。定位置を二塁寄りに取っている可能性もありそうです。

泉口友汰(読売)

昨季の受賞者である泉口は1095.1イニングを守り、守備範囲評価は3.6。今季は三遊間の打球でプラスを作った一方、二遊間ではマイナスでした。昨季は三遊間と二遊間の両方で広い守備範囲を見せ、UZRは11.9。それが今季は2.9にとどまっています。

水野達稀(日本ハム)

水野は1074.2イニングを守り、守備範囲評価は-1.7。今季は二遊間の打球でプラスを作った一方、三遊間ではマイナスでした。二遊間寄りに強みがある点は2024年と昨季の記事とも共通しています。失策抑止評価は3年続けてマイナス。今季も-1.9で、UZRは-2.9でした。ただ平均以下ではありますが、打撃型の遊撃手としては十分すぎる守備力といえるかもしれません。

小園海斗(広島)

小園は586イニングを守り、守備範囲評価は-9.5と対象11人で最も低い数字でした。今季は定位置付近から三遊間にかけての打球で大きく失点しています。遊撃を100イニング以上守ったシーズンでUZRがプラスだったのは2023年の1度だけ。2024年からは三塁も守っていますが、三塁でも3年続けてマイナス。どちらの守備位置でも苦しい数字が続いています。

村林一輝(楽天)

村林は629.1イニングを守り、守備範囲評価は-7.9。今季は二塁アンツーカー周辺の打球処理でマイナスが目立ちました。二遊間のゴロで失点を増やす傾向は2024年の記事でも指摘しています。当時は三遊間の打球で大きなプラスを作っていましたが、今季はその強みも見られませんでした。同じ楽天で遊撃を守った宗山が好成績だったこともあり、チームメイト間ではっきりと差がついています。

長岡秀樹(ヤクルト)

2023年の受賞者である長岡は1022.1イニングを守り、守備範囲評価は-9.0。今季は三遊間でわずかにプラスを作るも、二遊間の打球でそれよりはるかに大きなマイナスを生んでいます。二遊間の打球は2024年の記事でもを明らかな弱点として挙げており、苦手といえそうです。UZRは-9.8で対象11人の最下位。受賞した2023年までは2年続けてプラスでしたが、2024年以降は3年続けてマイナスとなっています。長岡は今季で25歳。身体的な衰えがくる年齢ではないだけに、数字を落とし続けている点は気がかりです。

総評

遊撃手部門では源田の6年連続受賞の後、毎年受賞者が入れ替わってきました。友杉は守備範囲評価で3年続けて大きなプラスを残しており、源田の後を担う名手の有力候補です。課題は出場機会で、遊撃での守備イニングは2024年の949から今季の655.2まで減っています。アナリスト沖原大知も友杉の優秀さを認めたうえで、打力を伸ばせれば守備機会も増えると見ています。

昨季の記事では1000イニング以上を守った遊撃手が1人しかいないことを、入れ替わりの時期の象徴として紹介しました。今季は5人が1000イニングを超えています。アナリスト宮下も宗山や紅林、村松ら打撃と守備を両立する遊撃手がそろったとして、遊撃手黄金時代の到来を予感させると話しています。

対象外の選手にも目を向けると、ユーティリティ部門を受賞した滝澤夏央(西武)が遊撃で487イニングを守り、UZR7.6を記録。友杉とほぼ同じ数字を、より短いイニングで残しました。対象外の選手にも有力候補がおり、出場機会次第で来季誰がトップに立つのかは変わってきそうです。来季の遊撃手部門も目が離せません。


データ視点で選ぶ守備のベストナイン “デルタ・フィールディング・アワード2026”受賞選手発表

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